鱗雲って言うのですかね?
海の無い県に住んでいるので、見上げたらそこが海みたい。
長い人生の中で、一回や二回は海に潜ったこともある。
人魚の気分で見上げたら…こんな感じだったような…。
まぁ、傍目には氷鬼のジュゴンにしか見えなかっただろうけど…
今日は自虐スタートかっ!(笑)

今でもよく覚えていますよ。
ヘレンさんに連れて行って貰った海水浴。
海に向かう道すがら、水平線を見つけて
「わぁ~、海の道ぃ~!」
と、車の窓から身を乗り出して叫んだこと。

暫く叫んで、気が済んだ私に、
「あんまり嬉しそうだからね…言いにくかったけど…ごめんね…」
消え入りそうな声が続きます。
「あれね、海じゃないわ。川だわ。長良川…」

えぇーΣ(Д゚;/)/ーーー!!

「川だったのか…大きな川だったね…」

気まずいムードが流れて、二人でひきつりながら笑ったね。

でもさ、でもさ、
水平線が見えたし、漁船がたくさん停まっていたし、大漁旗が風になびいていたじゃない?
でも、川なんだよね?
大きな川ね…。

で、海に着いてもテンション低めで、
多分、防衛本能が働いていた。
「いゃ、安心して!ここは海だから!」
否定語から始まる会話。ぎこちないわ…。

気分を変えてくれたのは、ヘレンさんの水着。
どう見ても昔のオリンピック選手(笑)。
「日本代表だったわけ?」
私の質問に高速で百回は首を振り、
「泳げないの知ってるでしょーーー!」
と叫んで海に駆け出すヘレンさん。
いゃ、姉さん、溺れますから。

「私が悪かったわぁーーー!」
叫んで私は追いかけましたよね(笑)。

すんごい浅い海で、まるでお風呂に入るように海に浸かり、
つまり、水着を隠しながら海を堪能し、
落ち着いて回りを見渡し、
様子の違いに気が付いた。

「誰も居ないね?」
「ここ、入っちゃいけない海と違うん?」
「ううん、そんなこと無いわぁ~」

また、回りをキョロキョロ。

「人。おらんで…」
「夏やんな…それも、まだお昼過ぎたばっかやしな…」
「昼休みなんかな?」
「ん~、きっと、そうやな!昼休みや!」
「うんうん、昼休みや!」

その後、コソコソ海をあとにしましたよね(笑)。

あれは、何だったのでしょう?

それから何回も海には行きましたね。
いろいろな県の、いろいろな海を見せてもらいました。
湿気っぽいあの海の香り、今でもよく覚えています。
ごぅごぅと絶えることの無い海鳴り、
耳の奥で聞こえていますよ。
風に千切れる雲間の光り、
ヘレンさんの笑い声、
素足で踏んだ浜辺の砂、
全部、全部、覚えていますよ。





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