※2022年のときの話です


入院を伴う4〜5ヶ月ほどの抗がん剤治療後、PET検査にて完全には腫瘍が消失していなかったために1ヶ月ほどの放射線治療に通っていたが、その1ヶ月半ほどでまた首にしこりが見つかり再入院。抗がん剤が効かなくなってしまい治療の選択肢が少なくなっていってしまう中、最後の希望の治療「CAR-T」。


しかし、高額な治療でもあるために治療を受けるには多くのハードルがあるこの治療。受けられるとしてもまだまだ先かと悩んでいたところ、主治医が、


「私の出身は千葉大で、同期がCAR-Tを今やっています。本来まだこの治療を受けられるフェーズにないのですが11月にちょうど空きがあることもあり、何とか受けられるよう調整します。」


暁光。最後の砦と思っていたCAR-T。二つもしくは三つほどのフェーズを飛ばしてこの治療を受けられるのは本当に幸運でしかありません。ちなみに今はルールが改正されて当時の私と同じような境遇だと治療を受けられるようです。私は丁度その過渡期に、主治医や様々な方の協力があって、CAR-Tを受けることができるようになったということでした。


ただしCAR-Tも魔法の治療ではありません。CAR-Tとは自分の白血球を取り出し、白血球の一種であるT細胞をがん細胞をやっつけるように遺伝子操作する治療です。そのため、まず数時間かけて十分な白血球を取ることができるか。抗がん剤治療を行ってきた白血球がCAR-T治療に使える品質なのか。輸送先の製薬会社で薬の作成に成功するのか。薬がそもそも自分の身体に効果があるのか。ここにも様々なハードルがあります。


そうは言っても、もうこれにすがるしかない最後に近い希望の治療です。妻と一緒に千葉大に行き、その広大さと綺麗な環境に感動しつつも受付をします。受付番号は「33」。CAR-Tの治療に対して、副作用や期待できる効果、原理などを一通り先生から説明をいただき、治療を受けることに対する合意書に署名をしました。最後に、今回受けることになったブレヤンジという種類のCAR-T治療に関して、先生から質問はありませんか?と聞いてくださいました。


たくさん下調べをした上で訪問しているので調べられる情報に対しては質問はありませんでしたが、一つだけ質問をさせていただきました。「この治療には効果のあるケースとないケースがあるようですがそれはどういった要因で決まるのでしょうか。もしくはどのような傾向があるんでしょうか?」


「CAR-Tは新しい治療のために世界的にもまだ十分なデータは揃っていません。しかし効果には年齢も関係しそうな論文は見たことがあります。効果が無い例としては腫瘍がどれだけ体に多く散らばってしまっているか、そして腫瘍の大きさ。要は薬ががんの増殖に間に合わないような状態の場合です。そして患者さんの体力も重要です。総合して、あなたのケースは治療が失敗するような要因は見当たりません。」とお答えいただきました。


そんな楽観的なことを言っても大丈夫なのでしょうか笑?いつもの主治医は一切楽観的なことは言わず、病気や治療のリスク、上手くいかない可能性についての説明ばかりするのでそのギャップに驚きました。


先生にお礼をし、退室後、希望を持った状態でお会計に進みます。渡された会計番号は「333」。


受付番号といい、このときから私は誰かに背中を押され、祝福されていたのかもしれません。