娘は今、転職4回して、5社目である。

昔と違い、転職にあまり抵抗はないようだ。

それは、本人もだが、世間もそうなっているようだ。

アメリカンナイズされてきているが、賃金はそうなってはいない。

 

時代遅れの私には、何の助言も提言もない

ただただ、見守るだけである。

 

このエッセイは、2013年7月の作品です。

 

**************************************

ドボジョ

 

 帳尻合わせの女が今やドボジョと化した。ドボジョとは、土木関係の仕事に従事している女子のことである。ニュースによれば、何だか急増しているらしい。その一翼を担っているかどうかは定かではないが娘も立派なドボジョである。天神の現場に夜な夜な現れ、朝の六時には引いている。ただ、ゼネコンだから実際の仕事は下請けの人たちが行い、彼女と所長と男性社員は、いわば監視役である。

 このドボジョ、どうやら漫画が発祥らしい。大学出の娘が、作業服を身に付け、土嚢を運んだり、ユンボを動かしたり、男顔負けの働きをするらしい。娘が入った会社の反応は、男並みの頑健な女子が入ってくるものと思っていたらしいが、そこに登場したのは華奢な体つきの娘である。困惑したことだろう。私も勤まるのかどうか心配だ。入社二日目にはもう泣きが入っていた。綺麗な服で通勤したいのに、作業服で通勤するのが嫌だというのである。やはり女の子である。次の泣きは、現場の事務所では一日ほとんど会話がないということだった。所長は無口、一年先輩の男性社員もほとんど口を聞かない。そんなこんなで三ヶ月が過ぎてしまった。今では、何だか作業着が似合っている。夜の仕事にも徐々に慣れてきている。

 その所長の趣味は読書にジャズにワイン。ほとんどのジャンルの本を読み、五年ほど前から少女文学にはまっているらしい。萩原規子、森絵都、香月日輪等々。文庫本を五十冊ほど貸してくれたそうだ。娘が読んだ本もあるし、まだ読んでいない本もある。ジャズもCDをリムーバブルディスクに落としてくれたそうだ。ジャズはワインを片手に聞いているらしい。独身の五十男、嫁が来ないのも分かる気がする。

 所長と気が合うのか合わないのか分からないが、外見には似合わず優しいらしい。しかし、その優しさを伝えるのが苦手のようだ。娘は、所長を好きだが恐いという。この先、どうなるのか、気が気でないが、今は、「ドボジョ頑張れ」と見守るしかない。

************************************** 

 

思い出すなぁ。真夜中にクレーンで釣り上げられて、写真撮影。

開発した現場用トイレを運んだとか。

朝6時ごろに迎えに行った、とか。etc.

 

それも亦、愉しからずや です。