人生50年が、100年となり、

私も半分、その趨勢に飲まれつつある

100年までは生きないと思うが、85歳までぐらいは生きることでしょう。

私の人生、ほとんど人任せ、自分で決断したことはない。

だけど、それが私らしい!嫌な気がしないし、悔いもない。

 

このエッセイは、平成22年の作品です。

今から13年前、2010年7月の頃。

 

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  スパンは20年 ¦¦¦¦ 或る男のひとりごと

 

 これからお話することは、私の恥ずかしいお話ですので、気分が沈んでしまいそうですがお赦しください。シラノ・ド・ベルジュラックのように忍ぶ恋を告白するのならまだしも、己が悪しき歩みを語っても誰の益にもならないのでございます。だから、まずはシラノのことからお話しましょう。その話が終わってからまだ気持ちが残っていたら自分のことをお話し致しましょう。

 シラノは17世紀に生まれたフランスの剣豪であり、詩人であり、哲学者でした。彼のコンプレックスは大きな鼻でした。それゆえ、思いを寄せる従妹のロクサーヌにそれを伝えることが出来ずに、逆に美青年クリスチャンへの恋の橋渡しを頼まれたのです。シラノはクリスチャンに恋の手ほどきを教え、二人は恋仲になってしまうのです。でも、シラノとクリスチャンは戦争に行かなければならなくなりました。その前夜、シラノの計らいで二人は結婚式をあげることができたのです。戦争に行ってからもシラノは一日に二通クリスチャンの代わりに手紙を書き続けました。やがて、クリスチャンは戦死し、ロクサーヌは修道院へ入ってしまうのです。それから、十五年後、シラノはロクサーヌに会いに行くのです。途中、材木が頭を直撃し、瀕死の体でやっとのことでロクサーヌに会うことができました。そして、クリスチャンの手紙をシラノが読むのです。夕暮れになって手紙の文字が見えなくなっても、シラノは読み続けました。その時、ロクサーヌは気づいたのです。「シラノ、手紙を書いたのはあなただったのね」シラノは静かに頷きながらロクサーヌの腕の中で息を引き取るのです。

 私は何の話をしているのでしょう。好きな話しなのですが今お話しすることでもありませんでしたね。私は今59歳で来年は還暦です。暦が還るのです。一回りするというわけです。私の人生では19、39、人生のターニングポイントが起こりました。そして、59の今年も何かが起きそうなのです。つまり、20年ごとに何かが起こってきたのです。19で仕事に就き、39で会社を辞し、59で何が起きるのでしょうか。

 そう言えば、モーセという人は40年のスパンでしたね。生まれてすぐにナイル河に流され、拾ったのがエジプト王の娘の侍女たちでした。それからエジプト宮殿の中で帝王学を自然と学んでいったのです。そして、40の時にある事件をきっかけに出奔し、ミデヤンの地で羊飼いをしていたのです。そこで結婚をし子どもも生まれ、安定した生活を送っていた80の時に神様が現れたのです。イスラエルの民を救えと使命を与えられ、その使命を全っとうして120歳で天国へと召されていったんでしたね。

 それに比べれば、私なんぞはシラノのような一途で熱き思いも無く、モーセのような固い信念も無く、大学に落ちて好きでも無い会社に入り、何かの勘違いで会社を辞め、今又誰かが築いた土俵に上ろうとしているのです、しかし、不思議なんですよね、自分で何にも動いていないのに、相手の方からやってくるんです。 本音を言いますとですね、公務員か何かになって出世もせず、誰とも結婚せず、一人静かに死んでゆきたかったんですよ。今でも時々そう思うことがありますが、全く違った人生になってしまいました。寄り道、遠回りの道、無駄な道、禁断の道、裏街道、いろいろな道を通ってきましたが、今ではそれも良しとしています。だから、動けないのかもしれません。もう、自分の能力以上の道を歩んでいるような気がします。今はただ待っています。自分の時が来るまで。それしかできないから・・・。

 19までを第一スパンと捉えると59からは第四スパン、79から99までの第五スパンは多分訪れることはないでしょう。だから、第四スパンで結としなければなりません。起承転結の人生です。丁度良いではありませんか。自分で道を結論づけるのではなく、自分の時が来るまでただひたすらに待つことに致しましょう。今まで歩んできたように・・・。

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今は、72歳、13年前の59歳の時には何にも起こらなかった。

しかし、令和になって、少し環境が変わってきた。

2019年のコロナ前から、ネット環境に軸足を移してきた。

もっと先に何が見えるのか、考え時ではある。

 

それも、また、愉しからずやです。