時には、童話チックな物語も書いてみたくなりました。

この話は、もともとどこかで聞いた話ですが、

ちょっと自分なりにまとめてみました。

 

14年前の2009年に書いたものです。

 

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   誰が一番偉いの?

 

 真夜中になると、きまってひろし君の顔が騒がしい場所となってしまう。むろん、ひろし君はすっかり寝入ってしまっているので何も気づかないのだが・・・

 

 一番最初に話し出したのはハナだった。彼は顔の中心にいることを鼻にかけ、随分といばっている。

「この中で一番偉いのはやっぱり俺だろう。何と言ったって中心だからな」

 すると、ハナのすぐ上にいたマナコが見下ろしながら言った。

「大したことはないんじゃないの。いつも上から見ているけど役に立っているとは思えないけどね」

 すぐに同調したのはミミだった。

「そうそう、たまに危険な臭いがするときだけだからなぁ」

 そしてマナコが自慢げに言った。

「ハナに比べたら、僕はいつも目配りしているからなぁ。大変だよ」

 すぐさまミミが切り返した。

「マナコも大変だろうけど、僕は起きている時ばかりじゃなくて、寝ている時も聞き耳立ててるからね。何かあったらすぐにみんなを起こさなければならないから、僕の方が大変だと思うよ」

 すると、大きな声でクチが話し始めた。

「みんなそれぞれに役目があってさ、大変だと思うよ。僕だって言いたくないことも言わなければならないし、人によってはお世辞のひとつも言わなければならないし、勝手気ままにしゃべっているようでなかなか気をつかっているんだよ。それにしても、気に入らないのは、僕たちの上にいて、何の役にも立たないのに、僕たちをいつも見下ろしている奴がいるってことさ」

「そうそう」

とこの時だけはみんながうなずいて上を見た。そこには、マユが申し訳なさそうに鎮座していた。そして、マユが言った。

「だって、神様がそこに居なさいって言ったから」

 みんなは不服ながら仕様がないという様子でそれぞれの役目に戻っていった。

 

 ひろし君は、目をこすりながら起きてきました。そして、お母さんに言いました。

「何だか変な夢見ちゃった」

「どんな夢?」

「顔の中で眉毛が一番偉いんだって」

「そう?でも、そうかもしれないわね。目立たないけど、日除けも汗除けも怪我の防止もしてくれるし、それにひろちゃんの心の中も見えちゃうもんね」

「どうして?」

「だって、ひろちゃんの眉、起きてきた時に困ってたもん」

                               2009年5月

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もう、童話を聞かせる小さな子どもはいません。

孫は2歳ですが、遠く離れています。

息子や娘が幼かったときには、寝る前に、読んで聞かせたものです。

遠い記憶の底に沈んでいっています。