2022/06/24()

 

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帳尻合わせの女

 

 娘のことを「帳尻合わせの女」と呼んでいる。

 

 中学生の頃は吹奏楽部に入り、全国大会をめざしていた。だが、オーボエの彼女はフルートなどの他の楽器とピッチが合わずに苦労していた。その音がピタッと合ったのが、九州大会の前日だった。何とか間に合い目標であった全国大会の金賞を手にしたのだった。しかし、練習に明け暮れた三年間だったので、勉強の方はゼロからのスタートであった。やっと受験勉強に本腰を入れ始めたのが十月の下旬だった。勉強している割には、ちっとも成績は上がらず希望高校を受験する資格さえ得られない状況だった。願書を提出する一週間前に塾の先生から、ランクを落とすように引導を渡されていたその時に、最新の成績がもたらされた。その成績を見て、やっと受験のお許しが出たのであった。すべり込みセーフで受験することができ、すべり込みセーフで希望の高校に入学することができた。

 そんな「帳尻合わせの女」が今度は帳尻を合わせることができるのだろうか。大学受験まであと二~三ヶ月なのに、希望の大学の判定は〝E〟、端にも棒にもかからない状態なのだ。いつ見ても〝E〟、何度見ても〝E〟、上がる気配なし。目の色も変わってこない「帳尻合わせの女」。

『大学に入ったらフランスに留学したい』

『大学卒業したら、すぐに結婚して、玉の輿に・・・』

と、入れる大学がないのに浮かれる「帳尻合わせの女」。

 

 親としての本音は、「もう就職して。きついから!」。でも、目の色が変わらないまま私の周りをウロウロしている。本人の希望通りに帳尻を合わせると、大した奴だと褒めるつもりだが、どうなることやら・・・。

この「帳尻合わせの女」、果たしてどこに帳尻を合わせてくれるのだろうか。乞うご期待である。

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200811月の作品です。