ヒマラヤ山系の素顔?~『実歴阿房列車先生』を読んで~ | よっしーのブログ

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最近。平山三郎著『実歴阿房列車先生』を文庫で読んだので、感想みたいなものを内田百閒氏の紹介も交えて書きたいと思います。

 

 

内田百閒という作家をご存知でしょうか?

明治22年岡山市の生まれ、東京大学入学を機に上京。夏目漱石門下となり、同じ門下の芥川龍之介氏とは海軍機関学校に教授として在職中の同僚であり親しい間柄でした。法政大学でドイツ語教授、日本郵船で嘱託。主な著作に『百鬼園随筆』『第一・第二・第三阿房列車』『ノラや』映画や演劇になった『サラサーテの盤』など。

私は約10年前に筑摩書房が文庫版内田百閒全集を発刊したのをきっかけにに百閒先生の作品にはまり、全巻を買いそろえ読み漁ったものでした。その中でも特に好きなのが『阿房列車』シリーズです。

 

 

 

 

 

『阿房列車』は百閒先生の気ままな汽車旅の模様を著した作品ですが、その旅に必ず同行したのが、当時国鉄の職員であった平山三郎氏であり、作品中ではその苗字をもじって「ヒマラヤ山系」と呼ばれていました。

 

『実歴阿房列車先生』の題名からして「お供」の平山氏から見た阿房列車旅の様子がわかるはずと、大いに期待してページを繰ってみたのですが・・・。確かにそのような部分もあるのですが、かなり切れ切れな著しかたで、間に百閒先生の来歴的文章が多く挟まっており、こちらが主体なのか? と感じさせるほどで、これでは百閒作品巻末の解説を長くしたようなものではないか! と思わざるを得ない感があります。

それに、平山氏ご自身を主語にしていた文章が、いつのまにか百閒先生のそれにすり替わっていたりして、純粋に読みやすさという点でも?が付いてしまいます。

 

百閒先生は『阿房列車』中でも書かれている通り、食堂車で平山氏をお相手に延々と呑み続けることを楽しみにしていました。酒は記述からほぼ日本酒であったことがわかります。洋食中心でそれほどメニューが豊富でない中で何を肴にして呑んでいたのか?が少しでもわかればいいなと、淡い期待もあったのですが、それも残念でした。

もしそれがわかれば、食堂車には乗れないとしても、料理と酒で阿房列車の気分を味わえるかなと思ったのです(笑)

 

 

 

 

この作品でもう一つ期待していたのが、平山氏の「素顔」を知ることでした。『阿房列車』では「朦朧とした」言葉少なな人物として描かれていた平山氏は、本作を通し、頭の切れる行動力のある人物であることがわかりました。しかし、平山氏ご自身の来歴が全く書かれていないのは残念でした。百閒先生や周囲の方々への配慮なのかも知れませんが・・・。

 

以上不平ばかり書き連ねましたが、もちろん良い点もあり、百閒先生が著作では語っていない逸話。北海道旅行での珍事など平山氏からでないと知られない話も面白かったし、本作で初めて知ったことも多かったです。百閒作品の舞台裏を知る上ではとても貴重な資料でもありますね。

 

ひねたオヤジになると、色んな思い入れも増えたりして素直に本も読めなくなるのは困ったものです(苦笑)