昨日おこなわれたSMASH 、新宿FACE大会で所属レスラー・KUSHIDA の新日本プロレス への移籍が発表された。
現在も新日本へのゲスト参戦をしているKUSHIDAは前々から将来のアメリカ・WWEマット参戦を夢と語っており、今回の移籍はたいへんに望ましいステップアップだと考える。
何しろ現状のSMASHは試合数がほぼ月イチペースと少ない。
世界一のメジャー団体を目指すKUSHIDAにとって、日本におけるトップ団体であり試合数も多く、地上波テレビで全国レギュラー中継のある新日本プロレス入団は経験を積むと同時に、より多くのお客さんの目に触れる機会を得られる格好の場所だ。
たくさんのお客さんを相手にするというのはプロレスラーにとって、きわめて重要な経験だ。そこにリングがある限り、いついかなるときも集まったお客さんを楽しませなくてはいけない。日本にとどまらず世界一の団体への参戦を志すKUSHIDAにとってその点、全国各地を巡業する新日本プロレスでの闘いはKUSHIAにとってひじょうに重要なものになると思う。
しかし現在のSMASHを見ると、必ずしも所属選手だけの力に頼らず(というか所属選手数じたいが少ない故なのだろうが)、外部の力を上手に活用しながら興行を進めている。したたかなリーダー・TAJIRIもじゅうぶんに考えたうえでの結論だろうから、今後のSMASHへの心配は不要かもしれない。
それにSMASHと新日本とは現在のところきわめて有効的な関係にあるように見受けられる。あるいは今後、『新日本プロレス所属のKUSHIDA』がSMASHに逆殴り込みというシチュエーションもあり得るかもしれない。
かつて、アメリカマット界がWWEによる全米制圧以前は様々な団体があり、レスラーは各州、各地のテリトリーを転々とし、ある時はベビーフェースとして、ある土地ではヒールを務めていた。
日本のように団体数が制限されているほうがめずらしいものだったのだ。当時のガイジン選手から見ると日本マットも数あるテリトリーの中のひとつにすぎなかったのかもしれない。
話を戻そう。
かつて日本のプロレスにおいて、移籍には「イコール引き抜き」という悪い印象の時代があった。
新日本プロレスと全日本プロレス、2大メジャーに勢力が二分されていた頃の話だ。
外国人選手の引き抜き合戦に始まり、長州力率いる維新軍団・ジャパンプロレスが新日本から全日本へ、そして再び新日本へのUターン参戦したのがそのピークだった。
団体当事者はもちろん、ファンも新日派、全日派に二分されていたきわめて緊張感漂う時代だったので団体間の移籍など、それこそ「掟破り」だった。それを思うと今は選手にとって幸せな時代になったものだ。
もちろん、立つ鳥跡を濁すような不義理を勧めているわけではない。この幸福な時代になるまでに道筋を作ってくれた業界の先達の存在があってこその今なのだ。
それにメジャーな団体に移籍したからと言って、それが即、成功が保障されたわけでもない。団体に所属しているからといって、団体の規模が大きいからといって成功が保障されているものでもない。
自分自身をプロデュースし、自ら発信しなければプロレスラーとしてのアイデンティティーが確立しえない時代だ。
KUSHIDAは今回、新日本への移籍という選択によって自らの夢の実現への階段を一歩上がった。
まだまだ道の途中だ。
この才能ある若者がどこまでのし上がれるか、見届けたい。
それもまたプロレスの楽しみのひとつだ。