お葬式関連のおかねのことに私はなるべく口出ししないようにしていたのだけど、納骨に使おうと思っていたお金が消えたとなると黙ってはいられない。

イヤ、消えるわけがない。

短い間にケチな美紀子が大金を浪費するわけないし、自分の財布に入れたに決まってる。


なにより我慢ならないのは夫が我が家の家計からまたお金を出そうとしていることむかっ

夫がお人よしで妹大好きなのは承知しているが、お金を預かった責任を妹にとらせるべきではないかしら。


「美紀子さんに預けたお金はまだ80万円以上残ってる筈よ。」

私は何度も計算して確信して、夫に伝えた。

なのに、夫はうるさいなあー、という顔を私に向ける。

「そんなのワカラへんやろ、美紀ちゃんはレシートやらとってへんねんから。」 少し声が低くなって不機嫌そうだ。  


「お寺はお布施にレシートも領収書も出さないけど、その他の分は本来レシートを受け取って保管すべきよ。」 と言うと、夫は「美紀ちゃんは主婦と違うし、そんな感覚ないねん。」 と、気にもしていないようす。


「子供じゃあるまいし、そんな理屈は通用しないわよ。」  「兎に角、お金は全部美紀子さんに預けたのだから納骨にかかる費用を出してもらいましょうよ。」

家計を預かる身としてはもうこれ以上の負担には応じられないし、少しは夫も現実を見て、美紀子に腹をたててもよいのではないかと思う。


しかし、夫の反応は意外だった。

「あんたなー、その80万円ってどっから出たんや??」

「根拠はあんのんかいな、憶測で言うたらあかんで。」 更には、「僕らの知らんカネも要ったかもしれへんし、葬式終わって残ったカネを美紀ちゃんに渡すとき、ナンボ残ってたか数えてないやないか。」  ときた爆弾


なんだって?それじゃあまるで私がイチャモンつけてるみたいじゃない!!


夫は問答無用の青い顔で私を睨んでいる。  可愛い妹を侮辱されて腹が立っているのだろう。


ふざけるな・・・

毎日欠かさず電卓片手に家計簿をつけ、月ごとの締めと、予算を立ててやりくりしているベテラン主婦の金銭感覚と計算力をなめるんじやないよメラメラ




お葬式は家族のみにて行ったので、親戚や舅と親交のあった方々にはご報告と、挨拶を書面に印刷して郵送することにした。

文章は私が担当したあと、塾の国語教師に手直ししてもらったので我乍らなかなかの出来栄えだと思う。


もちろん、近い親戚は夫婦で直接お伺いしたのだけど、中には 「お焼香も出来ないなんて」 と、不満そうな方もチラホラ・・・。

夫の強い希望と姑の体調を考えて家族のみにてお葬式を執り行ったのに、なんだか嫁の私を責めるような視線を感じるのは気のせいかしら???

あれやこれやのうちに49日の法要が近づいてしまった。

いよいよ納骨の時が来たという事でもある。


葉桜家の墓は大阪の天王寺というお寺にあり、そこに夫の実母や祖父母も眠っている。


舅の納骨は、20万円を納めれば天王寺の方がお経もあげてくれるし、すべて必要なことをしてくれるそうだ。



49日までは毎週、お布施や何かと物入りだし、その後の事も考えてかなりの大金を美紀子に預けてるので20万円は楽勝。・・・・・の筈。

私は美紀子がそのお金でポチの皮膚病の治療代を出したり、派手なブラジャーを買ったり、かなり自由に使ってるのを知ってるけど、嫁の立場上、預けたお金のことには口を出せないのよ。


「ええやんか。それでも、納骨には十分足りるわ。」  と夫は大阪へ打ち合わせに行った。


やれやれ、「お焼香も・・・」と、ご不満の皆さまも納骨にはお声をかけてみんなでお見送りして、終わったらお寺の近くでお食事をご一緒すれば舅も喜んでくれるでしょう。!!

それくらいのお金は十分余裕だから。  これで私の顔もたつかしら??


夫はそれらを美紀子と話して具体的に決めて帰ってくる。

今回は嫁はラクチン のはずだったけど・・・・・・・・!?



ガーン!!!

やっぱり!!!

「あのお金もう無いで」  と、あっさり美紀子に言われたんだって叫び


さすがに「なんでやねん。」  と、問いただしたそうなけど、「ここの電気代かてナンボかかるおもてんねん。そんなん足りひんわ。」   と逆切れされたらしい。


あなた、お目出度いわねショック!

電気代は他の項目と一緒に全部お義母さん名義の通帳から自動引き落としにする手続きをしたじゃない!!


それより、お義父さんのお骨どうするの!!!

我が家の家計からはもうお金は出せませんよむかっ  









  

お葬式の翌日、夫だけ大阪に残して私は夕方からパートの仕事があるので帰ることにした。

暫くお休みをしていたけど、教員免許を持っているおかげで塾の採点という割の良い仕事に就いているので手放したくないもんねひらめき電球


暫く生活していたので、荷物の整理は結構大変だった汗 


二階の部屋を片付けて下に下りて行き、姑に挨拶をした。


「お身体を大切にして下さいね。」 同じ女として夫を亡くし辛いと思う。


気持ちが通じたのか、姑は「貴女と一緒に暮らせたら…。」 などと言う。

こんな優しそうな姑の顔は初めて見た。


不覚にも涙が出てきてしまった。(この人も心ぼそく寂しいのだ)


私たちの横を美紀子がパジャマのまま無表情に通り過ぎ、犬の餌を作り始めた。

「ポチちゃんの好きなおリンゴむいてあげようなー。」


その時、夫が身支度を終えて台所へ顔を出した。


「お父ちゃんのお世話になった病院に二人で挨拶して支払もしてくるわ。」


「えっえ~!!!。」 美紀子が包丁を放り出して大声を出した。

「うちも行く!!山田センセに会いたいねん。」


山田センセとは舅の主治医のことだが、私の目には事務的であまり親切ではない印象・・・。しかし、まー確かに背も高くいい男かな。


「美紀子さん、私、あまり時間がないのよ。」 玄関で靴を履きながら思わず強く言ってしまった。

パジャマのまま、眼にはメヤニまで付いてるのにむかっ


「帽子かぶって口紅つけたらわからへん。」  「服だけ着るのを待ってて。」


プチーン・・・私の中で何かが切れた。

良くできた長男の嫁を演じてきたけど、この女はどこまで私の足を引っ張るんだ爆弾


「待てないっていってるでしょ。」 声が上ずってしまった。


その時  「行きたい言うてるやないの、なんで連れて行ってあげないの!!。」


いつの間にか玄関まで出てきた姑がさっきとは別人の厳しい顔を私に向けている。

「あなた言葉ちょっときついわよ。」 完全にいつもの姑に回復してる。


ヒエー  勘弁してよ、終始無言の夫をつっついて合図をした。


やっと口を開いた夫から出た言葉は 「あのなー山田センセの方は美紀ちゃんに会いたいと思ってないんちゃうか??」

違うでしょ!!もう!!トホホ。