御伽草子 一本菊(ひともとぎく)中-14
(・・・くれなば とく/\ まいらむとて)
なく/\出させ給へば。兵衛のすけ。七才より殿じやうして。生
年三十三になるまで。大かたは殿上に候へども。なひ/\は 此
宮の御なさけに ひかされまいらせて。御みやつかひ申つるに。
我こそ さいごの。御みやつかひの しはてなれとて。はだしにて
ちうもんの くちまで 御送りにまいり給ふ。みや 御車に め
して。にしのかたを 御らんずる。あり明の月。山のはに ちか
くなり行を 御らんじて
あけはなれ 山のはちかく 入ぬとも
めくりてあはん ありあけの月
兵衛のすけ これを承て
月かけは いまこそかきれ 山のはに
(いりなはいつか めくりあふへき)
ひかされまいらせて=引かされまいらせて、情などにひきつけられて
ちうもんの くち=中門の口
宮と兵衛のすけの贈答哥。
再び逢えることを、願っています。
コロリン師匠