雀報恩の事-1 | コロリンの御伽草子-2

コロリンの御伽草子-2

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宇治拾遺物語 巻三 
雀報恩の事-1

近江には、ご存知「舌切り雀」の民話があります。
その元になった御伽草子があります。「すゝめの夕かほ」です。
更に、その元になったのは、「宇治拾遺物語・雀報恩の事」です。
「舌切り雀」の元になったお話を、お楽しみください。

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今はむかし 春つかた 日うらゝかなりけるに 六十計の女のありけるか 虫
うちとりてゐたりけるに 庭に雀のしありきけるを 童部(わらんべ)石を取
て 打ちたれは あたりて腰をうちおられにけり 羽をふためかして
まとふ程に 烏のかけりありきけれは あな心う からす取りてん と
て 此女いそき取りて いき(息)しかけなとして 物くはす 小桶に入て よ
るは をさむ 明くれは こめくはせ 銅 薬に こそけて くはせなとすれは
子とも孫なと あはれ、女やとし(刀自)は 老て雀かはるゝとて にくみわらふ
かくて月比 よくつくろへは やう/\おと(踊)りありく 雀の心にも かくやし
なひ いけたるを いみしく うれし/\と思ひけり あからさまに物へいくとて
も 人に 此すゝめ見よ 物くはせよ なと いひ置きけれは 子まこなと
あはれ なんてふ 雀かはるゝとて にくみわらへとも さはれ いとほし
けれはとて 飼ふほとに 飛ほとに成にけり 今はよも烏にとられしと
て 外にいてゝ 手にすへて 飛びやする みんとて さゝけたれは ふら/\
と とひていぬ 女 おほくの月比日比 くるれは おさめ 明くれは 物くはせ
ならひて あはれや飛ひていぬるよ 又来やするとみん なと つれ/\に
思ていひけれは 人にわらはれけり さて廿日計ありて 此女の ゐたる
方に 雀のいたく なくこゑしけれは 雀こそ いたくなくなれ あ

六十計=「60ばかり」と読みます。
虫うちとりてゐたりける=衣類の虫取り、虫干しをしていた
童部=わらわべ・わらんべ、此処では「わらんべ」かな?
羽をふためかして=羽をバタバタと動かして
あな心う=まあ心憂、あれまあ可哀想
物くはす=食べ物を喰わす
銅=あかがね
こそけて=刮げる、物の表面を削る
とし=刀自、女性に対する古風な尊称。
なんてふ=なんでふ、なんじょう、どうして?
いとほしけれは=愛(いと)おしければ

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