小 町 草 帋
(・・・いつのときをか まつべ)きと なげきかなしみけれども。さすがに おしきは いのちなり。いとへども いとはざるをば おいのさか。ねがへども かなはぬは わかのうたのたづのこゑかなと としをへてけふは みちのくの たまつくりの をのといふ。くさはらに やどりして。あさなゆふなを くらしけり。いは木にもあらざれば。つゐに かはなく露と きえにけり。あたりをみれば。草ふかく しけりあ
ひたる いとずゝき。よる/\かぜのふきにけり。をうの●(こ)ころ あるやうに 聞にけりたづぬる人も なきまゝにとふらふ かたらひ さらになし。ふしきやな。ありはらのなりひらは。うたの めい所みちとかや。けふのこほり。をる ほそぬのゝ むねうちさはぎ。かのこまちは。くちはてしあとを とふらはゞやとおもひしが。しばし こゝろにうかゞはせたまふことあり
わかのうたの たづのこゑ=若の浦に潮満ちくれば潟をなみ葦辺をさして鶴鳴き渡る
万葉集 巻6-919 山部赤人
たまつくりの をの=宮城県玉造郡の小野
いとずゝき=糸ススキ
をうの●(こ)ころ=をうなの心。「な」の脱字か?女の心
けふ=狭布、古代、奥州から調・庸の代物として貢納された幅の狭い白色の麻布。
ほそぬの=細布、奈良・平安時代、細い麻糸などで織った上質の布。
お待たせ。
さすがに、
しんみりするところで、
残念と言うか、
あっけない。
業平さん、
小町を「ふと」、
思い浮かべたんだね。