御伽草子・よこ笛艸帋
(・・・かくこそ ゑいじ給ひける)
ひとりねて こよひもあけぬ 今こんとたのまばこそはまちもうらみん
と ゑいじて。かねうちならしやゝありて。ほけきやうの。だいばほんを。かうしやうに 讀給へばたき口と 聞からに。やがて 消入計(ばかり)に思ひしかど。しばし心を とりなをし。よろ/\と あゆみより。しはの とぼそを ほと/\とたゝきければ。うちより。しもの僧をいだし。いづくよりと。とひ
ひとりね・・・=僧となった滝口殿の哥。
独り寝て今宵も明けてしまった。
今夜は来てくれると頼みに思っているなら、待たせている自分を恨んでいるでしょう。
ほけきやうの。だいばほん=法華経の提婆品、提婆達多品、
法華経二十八品中の第一二品。悪人成仏・女人成仏などを説く。
かうしやう=高声
とぼそ=枢、ここでは戸、扉
ほと/\=戸などをたたく音や、斧で木を切る音などを表す語
滝口殿、こんな哥を詠っていたなら、
修行は大変ですね~
外で聞いている横笛、
よろよろと・・・
かわいそうに。
コロリン師匠