御伽草子・よこ笛艸帋
(・・・重て申されけるやうは)さのみ きかれ給はすは 恨申へしとて。ふけうのつかひ 有ければたき口 此よし聞よりも。つく/\物をあんずるに。此世は かりの夢ぞかし。かゝる思ひをする事よ。とうはうさくが 九せんざい。せいわうほうが 一まんざいも。なのみ残りて あともなし。うき世を 物に たとうれば きしのひたいの ねなしぐさ。入えの 水に すて をぶね。波にひかれて 行ゑなく。花のうへなる露よりも。あやうき 人間の しらですむこそ 拙
けれ。たいほんわうの たのしみも思へば 夢のうちぞかし。か程 かりなる あだし世に。思ふ。ひとに なぐさみてこそ。思ひでとは 成べけれ。又いかにせん。おやの めいをそむかんも つみふかゝるべし。女の心を やぶれば。一ねん五百しやうけんねんむやうごうの つみたるべし。これを ほだいの心と思ひつゝ。殊更 そのよは静に 横笛に打むかひ。いつよりも むつましげなる ふぜいにて。なごりおし
ふけうのつかひ=不孝の使い、勘当の使い
とうはうさくが 九せんざい=東方朔が九千歳
せいわうほうが 一まんざい=西王母が一万歳
たいほんわう=大梵天王
一ねん五百しやう=一念五百生、ただ一度妄想を心に抱いただけで、
五百回も生死を重ねる輪廻の報いを受けること
けんねんむやうごう=懸念無量劫、もし執念をおこすときは、はかり知れない歳月にわたって
その苦果を受けるということ
あ~~あ、勘当された!
な、なんだ!菩提心って。
変な心を起こしていないか?
この時代、親の権威はすごいなー。
侍が扶持から離れたら、
只の用無し、恐ろしいね。
コロリン師匠