(2021.1.25 文中最下段に注釈追加。現状Apple SiliconやBig Surについての動作検証出来ていないため)
(2021.1.27 ASIO関連の解説大幅改訂)※更に改訂が予定されています。
質問箱にこんな質問が届きました。
う~ん、これっておそらくダイレクト感が足りて無いのだと思います。
5000はなんやかやその辺本当によく出来てるので乗り換えで余計にそう感じるのかと思います。
ここは相当深い部分まで掘り下げる必要があり、「吹奏感的」な問題と、設定的な問題と、パソコンのスペック的な問題とが複雑にからみあう部分なので、順を追って解説していきます。
ARIAを起動してEWI USBメニューからPreferences...を選択します。
ウィンドゥが出たところでまず質問です。
ARIAが入っているのはMacですか? Windowsですか?
Macの場合は迷わず【Audio Device】へ。
Windowsの場合は以下「Audio Device API」から読んでください。
【Audio Device API】(※Windowsにしか無い設定欄です)
ここをクリックしても「MME」とか「DirectSound」ってのしか選択出来ない場合はその時点で論外です。
ここは「ASIO」じゃないとダメです。
ここを「ASIO」にするためにはASIO対応のオーディオ・インターフェイスを導入します。
(但し「ASIO対応」と謳っている製品であっても、後述の「ASIO4ALL」をドライバとして使用するものがあるので注意しなければなりません。よく調べましょう)
無ければASIO4ALL
を入れますが、正直焼け石に水です。
素直にASIO対応のオーディオ・インターフェイスを買いましょう。
外に音を出したい人はオーディオ・インターフェイスに繋ぐスピーカーも一緒に購入すると良いでしょう。
(深く知りたい人向け)
パソコン内部では音を出すための計算を「サウンドチップ」が行います。
Macはもともとサウンドチップまで直に命令を出せるのですが、通常WindowsはOSというワンクッションを通ってからサウンドチップに命令を出します(WDMという仕組み)。ワンクッション置くので遅延が酷いです。
これを回避するためにWindows Vistaの頃に「WASAPI」という仕組みが作られましたが、OSメーカーの縛りからかWDMとの互換を保つために結局遅延が発生します。
ちなみに「WASAPI」は「共有モード」と「排他モード」があり、「共有モード」では他のアプリも一緒に使う事が出来ます。カラオケ鳴らしながらARIAも鳴らしたいなどの場合ですね。但し処理を分散するために遅延が大きく発生します。
「排他モード」は指定したアプリからしか音が出ませんがその分遅延が少ないです。但しこれも「共有モードよりは速い」程度ですし、オケをバックで鳴らしながら演奏できません。
これらを考えるとWASAPIも選択肢から除外した方が良いでしょう。
「じゃあ遅延無しになんとかならんのか」という事で関係各社が知恵を絞って考えた仕組みが「ASIO」です(こう書いていますが歴史的にはWASAPIより先)。
これならMacのようにサウンドチップまで直接命令を出せますが、OSの標準機能では無いため、仕組みに対してアプリやオーディオ・インターフェイスが対応する必要があります。
但し大抵のASIOは排他式・・・つまりひとつのソフトからしか音を出せません。youtubeやMP3再生ソフトからカラオケを鳴らしながらARIAの音も出すなんてのは夢と思ってください。あくまで楽器として遅延を最大限に小さくするのが必要なんですから。
どうしてもやりたいという人はスタンドアロン版のARIAは使用せず、DAWのホストアプリからプラグイン版のARIAを呼び出し、別トラックにカラオケデータを貼り付けて再生しながらEWIを吹きます。やり方はソフトによっても違うのでここでは説明しません。教えてくれという事であれば個別のレッスン対象となります。それぐらい面倒くさいです。
また、排他式では無い独自のASIOドライバを持つオーディオ・インターフェイスもあるようなので、それを探しても良いでしょう。
ASIO4ALLはASIO対応機器では無い物・・・例えば内蔵スピーカーなどを「ASIO対応機器」として認識させるある種の裏技的な仕組みです。
そんな「裏技」を通すためにアレコレ計算させるため、結局「WDMやWASAPIよりは速いけど焼け石に水」という事になります。
今回はあくまで「5000のようなダイレクト感」という事なので「ASIO4ALLだとダメ」としていますが、実際のところASIO4ALLで充分満足という人もいます。その辺の感覚は導入する方次第になりますが、EWIのスキルが高ければ高いほど「ダメ度」は増します。
なお、ASIO4ALLはインストールする際にドライバである「ASIO4ALL」と一緒に「Off-Line Settings」というアプリもインストールしておきましょう(インストール時にチェックボックスがあります)。
内蔵スピーカー(ASIO非対応)を使用したい場合は「Off-Line Settings」をインストールして音の出力先を設定しておかないと音を鳴らす事が出来ません。
この辺、パソコンのオーディオ設定、ARIAの設定、ASIO4ALLの設定とめちゃくちゃ大変な思いをするので、分からない・設定が面倒臭い・調査能力に自信が無いという方は手を出さないほうが無難です。
【Audio Device】
Macでは音の出力先として好きなの選び放題です。
外部ヘッドホンや内蔵スピーカー等、好きなやつで大丈夫です。
しかもバックでyoutubeやらiTunesやらでカラオケを鳴らしながらARIAで音も出ます。良かったですね〜。
Windowsの人はオーディオ・インターフェイスの名前かさっき入れた「ASIO4ALL」を選びます。
【Sample Rate】
「44100 Hz」とか「48000 Hz」を選びます。
何故ならパソコンに負担がかからないからです(後述)。
オーディオ・インターフェイスの場合は「96000 Hz」しか対応してないとかって場合もあるのでなんとも言えませんが、多分この手の質問をしてくる人が購入するような物じゃないと思うので、とりあえず「44100 Hz」か「48000 Hz」で良いでしょう。
【Buffer Size】
ここまで【Audio Device API】、【Audio Device】、【Sample Rate】と3つほど辿ってきた集大成として、この「Buffer Size」に効いてきます。
ここを出来るだけ低い数値にします。前述した3つの設定をもとにしたベストだと多分「32」って表示があると思います。
無ければ最小のを選びます。
これは何かというと、息が入った瞬間から音が出るまでの間の遅延(レイテンシって言います)の設定です。
より短い時間により高速な計算が出来れば遅延は短くなり、ダイレクト感が増します。
逆に高速な計算を短時間で処理できない場合・・・ノイズが乗ります。
音を出すための計算時間という事は当然パソコンのスペックにも関わってきます。
より高速なCPUを積んだパソコンの方が有利です。
吹いてみてノイズが乗るようならひとつ上の数値にする。
また吹いてみてノイズが乗るようなら更にひとつ上の数値へ・・・これを繰り返します。
さぁ、ここまでの設定とパソコンの能力でどの数値ならノイズが乗らなくなりましたか?
逆に言えばそこが「あなたの環境で出せる最大のダイレクト感」が決まります。
ちなみに自分の感覚的に言えば5000のダイレクト感と同等であると感じるのは最低の「32」でも足りない感じがしますが、まぁ許容範囲でしょう。
つまり、5000と同等の吹奏感を得るのであれば、あらゆる限りの手を尽くしてでもここの数値を下げる必要があります。
【最後に】
Buffer Sizeを下げるだけ下げた後にEWI Configurationメニューの「Breath Gain」を調整して好みの抵抗感とします。
音が出るまでに遅延があると人間力みます。逆にダイレクトに吹けると力みません。なので、Bffer Sizeの設定後にやった方が良いでしょう。
また、Windowsの人はASIOの出力設定もちゃんとしましょう。
これは使用するオーディオ・インターフェイスによって設定方法は違うので、自分で調査しましょう。
ちなみにここの設定を失敗すると「音が出ない〜」とかって事になるので注意です。
もしお使いのパソコンの仕様上どうしてもBuffer Sizeを512や256ぐらいにしか出来ず、さりとて5000のような吹奏感が欲しいという場合はもっと性能の良いパソコンを購入しましょう。
もしくは大人しく最新のMacを買いましょうw
現在出てるMacminiの最安モデルであってもBuffer Size「32」で余裕で動きますので。
2021.1.25注:現在Apple SiliconやBig Surといった最新のMacやMac OSについての検証結果はまだ出ておりません。よしめめは発送待ちの状態なので、追って検証結果をブログに上げたいと思います。
それまでの間はMacと言えど最新のは購入しないようにしてください!