胡蝶しのぶ誕生日前日のタイムライン賑やかしです。

長くなったのでこちら更に2記事に分けて上中下にしようとしていたんですが、どこで分けるかで悩んだので一つ記事[後編]ということにしました。

すみません、短編ですが長いです。

金魚金魚金魚金魚金魚金魚
今回は二次創作でテーマが【○○しないと出られない部屋】
【カップルが成立しないと出られない部屋】にしてますので、カップル要素あります。

何でも許せる人のみ閲覧お願いします。

・男性キャラ同士で[刺激する]表現がちょっとあります。
・[口吸い]という表現がありますが、キスシーンはありません。
・鼻血が垂れますので、血が苦手な方は見ないで下さい(本気)

・要解説なところがあるんですが、図解してる時間がありませんでした。書いておいた方が親切だと思いますので後に追記したいという希望があります。

金魚金魚金魚金魚金魚金魚


サムネイル

鬼滅の刃:テレビ放送をやっていない[最終決戦結果]のネタバレあります。

※そういや写真のカルメナエさん、授粉作業したので種つかないかな



桜桜桜桜桜桜



「R18という表記があるなら、出るためにはカップル成立だけでなくR18規制がかかるような行為が必要なんでしょうね。」

だだっ広い殺風景な【カップルが成立しないと出られない部屋】。
折りたたみ会議机を囲んでこれまた素っ気ないパイプ椅子に座った4人は頭を抱えていた。

特に予定のない一名を除いて、出ないと色々生活に支障が出てしまう。特に予定のない人外一名も出られないとなると出たくなる。


「うううん、俺が童磨さんとカップルになれば良いと思うんです。」
炭治郎が口を開いた。

「は?」
皆が炭治郎に注目した。

「竈門君、君、カップルでR18って意味わかってる?」
炭治郎の発言は童磨をも動揺させたようだった。

童磨の問いに炭治郎は答えた。
「はい、俺は遊郭に潜入していましたのでR18的な事は概ね把握しています。」
「それで、このお題の書き方だと祝言を上げる必要はないと思いますので、クリアは可能なのではないかと思うんです。」

「祝言!」しのぶは思わず声に出してしまった。
「祝言?そこまで重い要求をしてくるのですか?こんな部屋が?」

「結婚しないと出られない部屋というのもあったようです。俺は当たった記憶がありませんが。」
と炭治郎は答えた。

「炭治郎は俺と。」
義勇が立ち上がろうとした。

「冨岡さん?」
しのぶが眉間にシワを寄せて手で義勇を制した。

「義勇さんと俺はダメです。」
「それに、童磨さんに御目付役がいないと、何を置いてもしのぶさんを口説きに行くじゃないですか。」

「それはそうだが。」
義勇は納得していないようだった。

「そんなあ。せっかく一緒に一つ部屋にいるんだから、時間が許す限りしのぶちゃんを口説かせておくれよ。俺の年齢は18どころじゃないからね、R30でもR100でもどんと来いだよ。」
童磨は文句を言いつつクセの強い自己主張をした。

「童磨さんは茶々を入れないで下さい。俺を誰だと思ってるんですか。」
炭治郎は大きな声を出した。

その問いに対して三人は
「炭治郎だろう。」
「炭治郎君ですよね。」
「竈門炭治郎って鬼狩り。妓夫太郎を倒した鬼狩りのうちの一人だろ。」
などと口々に言い合った。

炭治郎は腕を組み、うーんとうなった。
「皆さんそういう認識なんですね。」
「俺は遊郭潜入ばかりじゃありません。R18二次創作でのさまざまなシチュエーションで、煉獄さんや義勇さんをたらし込んでカップリングし、閨に持ち込んで励んでいる俺ですよ。」

「は!」義勇が顔を上げた。

「原作では炭治郎君とは接点がないので俺はそんな事まで知らなかったよ。ましてや二次創作などねえ。そもそもずっと地獄にいたし。」
童磨は興味無さそうに言った。

「俺は炭治郎に誑し込まれていたのか?」
義勇が独りごちるように呟いた。

童磨はそういう義勇や炭治郎に構わず話し続けた。
「というか、そもそもね、それってしのぶちゃんとここにいる男子の誰かがカップルにならないと出られないって事じゃないの?」

そう言う童磨に対してしのぶが心底不愉快な表情をしたのに炭治郎は見逃さなかった。
ピリピリとした匂いが炭治郎の鼻孔を刺激した。

童磨はしのぶさん、カナヲ、伊之助に倒されている。
童磨は恨んでいないと言っていたし、しのぶさんに好意を持っているようだ。
しのぶさんは童磨を許していない。
恐らく童磨はしのぶさんのお姉さんの仇なんだろう。
もう人を食う事がなくても、もし仇でなくても、大人数を食い殺した鬼の童磨をしのぶさんが許す筈がない。

童磨は何故しのぶさんに執着するのか。
何があったんだろう?
でも、当事者が揃っているこの場で大っぴらには聞けないな。

と炭治郎は3秒くらい考えたが、自分の考えを話すべきだと思い直して童磨に向き直った。

「それは違いますね、童磨さん。」
炭治郎は人差し指を立て、ちっちっと左右に振った。
「先ずですね、この【出られない部屋】ですが、張り紙に主語はありませんよね。」

「そしてカップルは男女だけではありません。」

「このような仕掛け部屋としては萌ゑがあれば誰でもいいのです。この部屋はそういう類の仕掛けです。」

「随分な自信だな炭治郎。」
義勇がぼそぼそと意見した。

「ええと、俺以外の皆さんはこの手の部屋に閉じ込められた経験がありますか?」
「義勇さんは何度かあると思いますが。」
「そして、この手の部屋に関しては俺は百戦錬磨です。部屋のやり口は熟知しています。」

「それは炭治郎、胸を張って言う事じゃない。」
義勇がぶっきらぼうに言った。
「俺は言いたくない。」

「カップルになるならやっぱり女の子との方が良いなあ。」
童磨はつまらなそうに、持っていた扇で会議室机にのの字を書いた。

「R18でどういう事をするのかわかってるのか。」
義勇は再び聞いた。

「わかっています。」
炭治郎はきっぱり言い切った。

しのぶは、炭治郎とあとの二人のやり取りを聞いている時に何か大事な事を忘れているような気がしていた。
炭治郎の先走りが過ぎた提案を黙って聞いていたのは、忘れた事について胸がつかえていたからだった。

それで炭治郎の
「しのぶさんはドアのところで待機していて貰えませんか?鍵が開いたらすぐに対応して欲しいんです。あと、女性に聞かせられる話ではないと思いますので。」
という発言に促されるように

「あ、ええ。」

と言って素直に席を立った。

さくらんぼさくらんぼさくらんぼさくらんぼさくらんぼさくらんぼさくらんぼ

会議室テーブルを囲んでいるのは三人になった。
「俺の提案する作戦はこうです。」
炭治郎は再び話し始めた。
「童磨さん、壁ドンはご存知ですか?」

「ああ、知っているよ。」

「鬼は嘘つきですので演技や嘘八百は得意でしょう?『竈門炭治郎好きだ』とかそういう事を言って俺に壁ドンした後俺の口を吸おうとして下さい。」

名指しされた童磨はちょっとむくれて眉毛を更にハの字にして炭治郎に意見した。
「いきなり鬼は嘘つきって、傷つくなあ。」
「勿論嘘はつくよ、そりゃあ。でも人間も嘘をつくだろう?」
論点がまたズレていく。

義勇は童磨を見ずに炭治郎に聞いた。
「それで確実に出られるのか?」

「恐らく。」

「恐らく?そんな不確定な事で炭治郎は鬼に口を吸わせるのか?」
義勇が炭治郎に詰め寄った。

「いいえ、吸おうとするだけです。吸って良いとは言っていません。」
全くの詭弁である。
鬼は約束を守らない。
危機感がないにも程がある、と義勇はため息をついた。

そんな義勇の気持ちを知ってか知らずか、炭治郎は話しを続けた。
「義勇さん、この部屋を見てどう思いました?殺風景だと思いませんか?この部屋のドアを開けるのにそれ以上の事が必要なら、この部屋の真ん中にベッドが設置してあるか布団が敷いてある筈です。」
「椅子もこんなパイプ椅子ではなく、ふかふかのソファなんじゃないですか。」

童磨は手を打った。
「なるほど、カップルがイチャイチャするのには、このパイプ椅子と会議机は確かに不適切だな。」
「人を4人閉じ込めてる割にやる気のない部屋って事なんだね。」

「灯りの色も普通に電球色なので、規約に触れるようなところまでは要求されていない筈です!」
炭治郎は続けた。

「灯りの色?」

「はい、灯りの色が赤や怪しい桃色になるとヤバいです。」

「ああ、緩いR18だなあ。まあ鬼が血を滴らせながら人をバリバリ食ってもPG12だったし。」
「俺は今は人は食わないし、血肉に対する渇望感もない。」
童磨は手に持った扇子で扇ぎながらフフンと鼻で笑った。

炭治郎は続けた。
「それでもし扉が開かなかったら、次は童磨さんは俺の尻を。」
炭治郎は椅子から立ち上がって自分の片方の尻を掴んでみせた。
「片尻をこう、鷲掴みにして腰を引きよ・・・」

と炭治郎が身振りを交えて熱弁し始めたところで、辛抱出来なくなった義勇が炭治郎の腕を掴んで遮った。
「そんな、尻でなく背中で良いだろう炭治郎、そういう事ならやはり俺と炭治郎が!」

「義勇さん?」

「いやあ、炭治郎君は俺にそうにするようにと言ってるんだよ。」
童磨は首を横に振って割って入り、気色ばむ義勇をたしなめた。
明らかに童磨の虹色の瞳はニヤついている。

「この男は鬼だぞ?」
義勇は炭治郎を説得するように続けた。

「大丈夫です義勇さん。俺は二次創作では吸われ噛まれ突かれまくっていますから鍛えに鍛えられています。人を食わない二次創作の上弦に尻を鷲掴みにされたくらいでは俺は壊れません。」

「ほう。」
童磨は身を乗り出した。


「二次創作、そういう事か。理解し始めたよ。」
「冨岡君と炭治郎君は既に、だから、と。そういう事だな。」

童磨は
炭治郎が「義勇さんと俺はダメ」と言っている理由は、義勇と炭治郎は二次創作でデキている設定が既に広まっている、つまりここでカップルになったとしてもドアが開かない可能性があるという事からのようだ。
実際は炭治郎の説明が下手で理解されていないだけだが、冨岡義勇はそれに気づいていないのだ。
ということに思い至ったのだった。

青いな水柱。

童磨はフフンと笑みを浮かべ、義勇を見た。
そして義勇を煽るように炭治郎の方へ身を寄せた。

「面白い。俺はその炭治郎の作戦に乗るよ。」
童磨は手に持っていた扇子を腰のベルトに挿した。


「では早速始めましょうか。」
炭治郎は襟元のボタンを幾つか外して首筋と鎖骨を露わにした。

童磨は立ち上がって目を細め、上から竈門炭治郎を頭の先からつま先までを品定めするように眺めた。
「ふふふっ、炭治郎君は大胆かつ潔いね。では頂くとしようか。」

壁を背にして立った炭治郎の顔の横の壁に童磨は右手をつき、左手は炭治郎のアゴにやりクイっと持ち上げた。
「さあ、もう逃げられないよ。」
と言い炭治郎の顔に顔を近づけた。

「ああっ!まだ駄目です!」

炭治郎は「まだ」と言った時だけ変顔になっていたが、童磨は細かい事は気にしなかった。

「炭治郎、恥じらう君もいいね。」

童磨の低い、人心をとろかすような声が炭治郎の耳から入って頭蓋骨を振動させ、頚椎脊椎を伝って下っていった。
声は炭治郎の尾骶骨に流れこみ、バイブレーションが骨盤内に広がる。そして濃密な香り。
突きや吸引には慣れていたが、流れ込んでくるものへの耐性は無いも同然だったと炭治郎は気付いたが、後の祭りだった。

炭治郎は吹き込まれた蜜のような甘やかなバイブレーションに飲み込まれまいと抵抗したが、それは無遠慮に炭治郎の中に浸透していき、身体の奥で渦巻いて熱を発散させた。
炭治郎は童磨の眼差しに顔の火照りを感じ、身体を巡り器官に絡まる甘い熱とどんどん速くなる動悸から逃れようと顔をそむけた。

「可愛いよ。」
再び甘いバイブレーションが炭治郎の背骨を伝わっておりていき、炭治郎の理性に従わない別の生き物を目覚めさせていた。

童磨は炭治郎のはだけた首筋にふっと息を吹きかけた。

「童磨さん、冷たいです。」
吹きかけられた童磨の息の冷たさに、炭治郎は思わず顔を上げて肩をすくめた。
炭治郎の両目はしっとり潤んでいた。

「おや失礼、俺の息は冷たいんだったな。」

「あの、顔が熱いので冷たいのはいいんです。」
炭治郎は下を向いてもじもじした。

その様子を見た童磨は炭治郎の耳飾りを指先でカランと弾いて、炭治郎の耳元に口を寄せ
「炭治郎、そこ。童炭爆誕だね。」
と囁いた。

「あっ、はあ。」
と、炭治郎が吐息のような返事にならない返事をしたその時、カチャと音がした。
ドアのロックが外れたようだ。

「あ、開い?」

と炭治郎が言い終わらない内に胡蝶しのぶが動いた。
しのぶは目にも止まらぬ速さで少しだけ開いた扉の隙間にパイプ椅子をねじ込んだ。

「炭治郎君早くこっちへ!」

「ヒュー!しのぶちゃん相変わらず凄いスピードだねえ!」
童磨はニコニコしてパチパチと拍手をした。

「あ、はい。義勇さんも。」
と、まだトロンとした目をした炭治郎が言った横から冨岡義勇は無言でドアをドカッと蹴った。
ドアの下の蝶番がガタンと音を立てて外れた。

「ふう」
冨岡義勇は腕で額の汗を拭った。
ドアの外は、見覚えのある郊外の空き地だった。

「冨岡さん、ドアを壊しちゃダメじゃないですか。」
しのぶの声が義勇の背中に刺さった。

義勇は、演技であったとしても炭治郎が目の前で童磨に壁ドンされていたこと、童磨は炭治郎に大して触れていないのに炭治郎が弄ばれてとろけさせられている事に対して言いようのない不快感と焦燥感を抱いたため思わずドアを蹴ったのだが、ドアを蹴破るのは良策だという理屈はあったつもりだった。

それなのに[出られない部屋]のドアを壊したらまさかしのぶに注意されるとは。
不意を突かれた義勇はしのぶの方を向いて
「あ、すまない。」
と反射的に謝ってしまっていた。

義勇は謝ってから、『いややはりここでドアを壊しておかないと全員脱出できない事もあるんじゃないか、むしろ感謝されるべきなのでは?』と思ったが、注意を受けた事があまりにも意外だったので咄嗟に言い返す言葉が出て来なかった。

「あー、案外チョロかったな。」
童磨は物足りなさそうに殺風景な部屋の中を見回していたが、思い切った様子で
「これで一件落着かな、俺も出ることにするか。」
とよっこらしょと足を踏み出そうとしたその時

「は?童磨、お前はない!」

しのぶはそう言い放って、義勇が壊したドアをバタンと閉めた。
壊れていたにも関わらず、ドアはすんなり閉まり、ガチャリと錠の落ちる音がした。

童磨は内からドアノブをガチャガチャと回してドアを開けようとしたが、ドアは中からは開かない仕様のようだった。
このドア、童磨の鬼の力でも開ける事が出来ないのは、先ほど確認済だ。

「ええー、しのぶちゃんがやっと俺の名前を呼んでくれたのに、どうしてそんな意地悪するのーーー?」
「また閉じ込められたみたいだよーーしのぶちゃん?そっちからは開かないのー?」
「俺、すごく頑張ったのに酷くないー?このドア壊れてるのに開かないっておかしくない?」

しのぶは童磨がドアの向こう側でやんや騒いでいるのをガン無視した。
「さっきね、思い出したんです。」
「これを託されていたんですよ。」

しのぶはラベルに[魔法のインキMagic]と書いてある油性ペンを取りだし、ドアに
【獄門疆】

と書き殴った。

すると部屋は、みるみる内に縮まって一辺が7cm程度の大きさの立方体になった。
しのぶが片手で持てる大きさだ。
しのぶはその六つの面に油性ペンでサイコロ配置になるよう数を数えながら慎重に目を書き入れた。


「これで良し。」

「腐れ外道が。光も時間もない、何もないところに一人っきりで閉じこもっていればいい!」
「永遠にね。」
しのぶは手に持った四角い物体に向かって吐き捨てるように声を掛けてからにっこり微笑んだ。
「これは日本海溝に捨てるのがお作法でしたっけ?」

一連のバタバタの中ですっかり平静さを取り戻した炭治郎はしのぶの手元をのぞきこみ
「何ですかその技は?」
と訊いたが、しのぶは
「ふふふ、別世界から伝わった呪いの技ですよ。危険なので詳細は秘密です。」
と言って炭治郎には教えなかった。

「それより炭治郎君は十八歳未満でしたよね?」
炭治郎に向き直ったしのぶの顔は笑っていたが、額に怒りの血管が浮いていた。
こういう時のしのぶは非常に恐ろしい。

しかし、炭治郎は何を今更?といった風で、事の重大さをわかっていないようだった。
「あ、はい。それが何か?」

「炭治郎君は、この手の○○しないと出られない部屋に慣れているって言ってましたが、それはどういう事ですか?」

「それと!十八歳未満の炭治郎君にあのようないかがわしい誘い方を教えたのは何処の誰なんです?さっきあの手の部屋がどうとか言ってましたよね、成人している冨岡さん?」

しのぶの矛先が自分に向いて、義勇は慌てた
「胡蝶は薄い本ワールドを知らないのか?そこには『義炭』や『れんぎゆ』などというジャンルがあって・・・」

「『ぎたん』ですか。勿論存じております。」
しのぶはきっぱりと言った。

「その薄い本ワールドに、その、胡蝶はR18出演召喚・・・は・・・」
義勇は耳まで真っ赤になりながら下を向いてしどろもどろで続けた。

しのぶはまるで汚物を見るような目で義勇を睨めつけると

「あれは私ではありません。あのR18世界で私の顔をしていかがわしい事をしているものは全て『しのコラ』という作り事でつくりものです。」

と言い放った。

「しのコラ。パワーワードだなあ。」
炭治郎は非常に感心したという風に、キラキラした瞳でしのぶを称賛した。

「アイコラはアイドルコラージュ、しのコラはしのぶさんコラージュですね?」

ワクワク感がだだ漏れの炭治郎にしのぶは語気強くして言った。
「炭治郎君?『ですね?』じゃありません。いつからそんなにスレたんですか。」

「炭治郎君という存在は二次創作のストーリーに律儀に顔を出すのですか。あの世界には炭治郎君の見聞に耐えないものもあるのではないですか。」

炭治郎は厳しく問い詰めるしのぶを曇りのない眼差しで見つめながら言った。
「俺は父を亡くしたので、父からは閨の事について教わった訳ではありませんが、以前は夜這いなども行われていたそうで、そういう事は若衆宿などで年上の男の先輩から手ほどきを受けるものだと聞いていました。鬼狩りをしていてはそういう場所にも寄れませんので、先輩方が薄い本の中で俺に色々教えてくれている仕様だと思っています。」

炭治郎はしのぶの苦言を全く意に介さない様子だった。

深い山育ちの子だからか、あけすけである。

その炭治郎の堂々とした態度に、流石のしのぶも怯んでしまった。
「炭治郎君、あなたはもっと恥じらいを知るべき・・・いえ、妄想で劣情を煽るようなものではない資料からの知識と、紳士の選ぶ話題について学ぶ必要がありますね。」

しのぶは深いため息をついた。

「誰が炭治郎君をこんな風にしたんだか。」

「はい、ええとあのしのぶさん、俺の教養が足りないのは認めます。で、すみません義勇さんが何だか茹でダコのようになっているんですが・・・義勇さん、大丈夫ですか。」

義勇は下を向いて赤くなっているばかりでなく、肩、いや全身が小刻みにふるふる震えていた。
頭から蒸気が出ているようにも見えた。
先ほど童磨に炭治郎が籠絡されそうになった時の様子が義勇の脳内でフラッシュバックしてしていたのだ。

「やれやれです。炭治郎君のせいですよ!」

「え、どうして俺?」
「あっ!義勇さん鼻血!」
赤いものが一筋、義勇の鼻から顎を伝って落ちた。

「俺に構うな。」
義勇は絞り出すように一言そう言い、炭治郎の差し出した手を払い除けた。

「二次創作では・・・皆が、いや俺も炭治郎を好いているのだ。」
義勇は袖口で鼻血を拭ったが、拭いきれなかった血が地面にぱたぱたと落ちた。

「好いていれば据え膳は食うだろう・・・みなまで言わすな。」
そう言って義勇はくるりと回れ右をして、二人を残して足早に去って行った。

「義勇さん!」
「すみませんしのぶさん、義勇さんが心配なので失礼します!」
炭治郎はしのぶへに挨拶もそこそこに、義勇を追い掛けて走り出した。

「炭治郎君、気を付けて!」

しのぶは、義勇を追い掛けて飛ぶように走っていく炭治郎の後ろ姿に声を掛けたが、もう声は届かないだろうなと思って、振るために上げかけた手をそのまま下ろした。

「やれやれ、炭治郎君のあの天然さが先輩達だけでなく鬼をも、いや冨岡さんをも誑かすんですね。」


「さて、思いもかけず最大の懸案が片付いたし、いつもは無表情な冨岡さんが真っ赤になって大いに慌てる大変珍しい様子も見れたし。」

しのぶはクスクスと思い出し笑いをした。

「そういえば、こいつはいつ沈めに行こうかしら。」

しのぶは部屋が変化した四角い物体を取り出し眺めた。


「海溝というと、蝶屋敷のみんなで小笠原クルージングを洒落込むのも素敵ね。」


小笠原・・・

南の空の果て波の花咲く島に♪

と、昔姉に聞いた小笠原の歌がしのぶの口をついて出てきた。


とひとしきり歌って空を見ると、満月より少し若い月が東の空に上り始めていた。


ザボン色の月があの椰子の葉に上る頃♪


続きはどうだっけ?

現地で教えて貰えばいいわ。


帰途についたしのぶの足取りは軽かった。

帰ろう、皆が待ってくれている。


[完]

クローバークローバークローバークローバークローバー

 Magicとは、寺西化学工業のこちら。

 

獄門疆についてはこちら。

 

 

 


胡蝶しのぶが最後に歌っている歌