おはようございます。
近くの山が黄砂で見えにくい朝です。
サプライズドライブデート続いてます。
不死川実弥さん推しの皆さんにおかれましては「ちょっとやり過ぎじゃな〜い」って展開になっておりますが、
自分に置き換えてみてクダサイ。
昭和インターを下りた。
ここで高速を下りるなら、伊香保温泉かしら?とみりんは思った。
ところが実弥は、利根川を越えるととりたてて特徴のない、どこにでもあるような田舎道を山の方へ向かった。
本当にどこにでもある、沿道に倉庫があったり舗装が割れていたりの全く飾りっ気のない田舎の道だった。
高速のドライブ中は実弥さんが素敵という気持ちで保っていただけで、身体は疲れていたようだった。
みりんは少しウトウトしていた。
しばらく山の中の道を走ると、道沿いに平成初期のバブル時に建てられたオシャレカフェといった風情の石造りの建物があった。
建物には蔦が絡まっており、それがまたバブル時代の雰囲気を増し増しにしていた。
建物の前は駐車場になっていて、車道に面したところに看板が立っていた。
実弥は、看板の横から駐車場に車を入れた。
「着いたぞゥ。」
実弥の声でハッと我に返ったみりんだった。
石造りの建物を見て、これはオーガニックなパン屋やその他ちょっと凝った雑貨などを売っているショップが入っている類の田舎施設だわとみりんは思った。
「ロックハート城だァ。十八世紀の城を移築してある。」
え、実弥さん何て言った?六鳩?
十八世紀って江戸時代よね。
ロングドライブで少々疲れていたのと、日本の田舎の山道風景による眠気と、実弥の活舌のせいで、なぜかみりんの脳内では白馬に乗った暴れん坊将軍がハイヤー!パカラッパカラッしていた。
「はあ。」
みりんは溜息をついた。
実弥さんと来れたのは嬉しいけれど、山の中のお城だったんだ。
さっきの見晴らしのいい赤城高原SAにもう少し居たかったな。
「疲れてるのか。」
「高速を下りてから飛ばし過ぎたかァ?」
実弥は心配して声を掛けた。
「大丈夫。」
駐車場に面した四角いけれどちょっと凝った意匠の蔦の絡まる石造りの建物が入口らしかった。
みりんは実弥について行った。
建物の中にはストーンショップがあった。
いわゆる天然石、パワーストーンだ。
ここはまだ場外らしい。
更に進み入場料を払って中に入ると、カフェや土産物のショップが何軒か続いていた。
プリンセス体験という看板もあり、女の子が貸衣装で写真を撮るとかそういうアトラクションかしら?とみりんは思った。
ショップでは色々と可愛いものを売っていた。
テディベアの展示もあった。
ショップの前を歩いているうちに、いつの間にかみりんの脳内から将軍様は退場して、代わりにクマが歩いていた。
テディベアってアメリカの故事でメーカーはドイツだし。
雰囲気はあるしワクワク感はあるけれど、まあ、田舎の施設だしこんなものよね。
そうね、ハウステンボスとかスペイン村の小さい版みたいな。
テディベア・・・勿論、テディベアは良いんだけど。
わざわざここまで遠出する事もなかったわよねえ。
赤城榛名が見えたところで、サプライズって凄く景色のいい展望台とか伊香保温泉かなあと思っていたみりんは、コテコテの西洋風展開と至る所にあるハートを見て、少し実弥の趣味は違うなと思い始めていた。
一方、実弥は
「ここまで恋人の聖地的演出をされると小っ恥ずかしいな。ロックハートのハートってところで気付かなかったんだなァ。」
などとブツブツ言っていた。
なるほど、ハート絵馬のような恋人の誓い的な小道具がどこを向いても目についた。
ショップ街を抜けるとイングリッシュガーデンがあった。
庭の草木は美しく整えられていた。
みりんは何枚か写真を撮影した。
せっかくだから実弥さん、ここでポーズ取ってくれないかしら。
と思ったが、実弥は先を歩いていく。
殿方ってそうよねえ、目的地一直線だわ。
などと思いながら先を歩く実弥についていくみりんだった。
しばらく歩くと視界が開けた。
広場に出てきたようだ。
広場の先には階段があり、その上に重厚な石造りの建物が建っていた。
「あれってお城!ねえ、実弥さん?」
実弥が駐車場で「十八世紀の城」と言った時に、みりんは道中の日本の日常的な風景から連想してお城で石垣と天守を思い浮かべていたため、外国の石造りの城をまるごと日本に持って来たというところには全く考えが及んでいなかった。
しかし、ロックハート城を見て、移築という実弥の言葉が目の前の石造りのお城とリンクした時何かが反応し、みりんのちょっと下がり気味だったテンションはいきなりロケット噴射で成層圏を突き抜けて行った。
そうすると、先に通り過ぎたお土産モノ屋もキラキラ輝いて見えてくる・・・
「あれがスコットランドから運んで来たお城だァ。」
「えっ、全部これ、どうやって運んだの?船?」
みりんは目をキラキラさせて実弥に尋ねた。
その様子を見て、実弥は目を細めた。
「眠気が吹っ飛んだみたいだな。」
「お城はバラしてコンテナに乗せてシベリア鉄道で運んだらしいぞぅ。ここの施設の経営は石材屋で、名誉館長が津川雅彦氏。何でも津川雅彦氏のサンタクロースコレクションがあるらしい。」
パンフレットを見ながら実弥は説明した。
「すごいわねえ。」
「中へ入ろうか。」
実弥はみりんの手を取った。
[続きます]