【戦国瓦版 ~長谷川嘉輝がオススメする歴史小説~】
ぼくは今年27歳になります。
いつの間にか良い大人です。
スポーツ界で誰がタメかと言いますと、
ダルビッシュ有投手と、本田圭佑選手です。
年俸は、
ダルビッシュ投手が、約10億円、
本田選手が、約1億3000万円、
長谷川は、やめておきましょう。
ところで、
ダルビッシュ投手と本田選手って、似ている点があると思うんですよね。
高い目標、ストイックさ、強い信念、高い技術力、
そして、周りをはばからない歯に衣着せぬ率直なコメント。
(人によっては、「ビッグマウス」とも・・・)
トップアスリートとはそうなのかもしれませんが、何だか似ている気がします。
そんな二人のことが、この小説を読んでる時、頭によぎりました。
『黒田如水(くろだじょすい)』 (吉川英治)
来年の大河ドラマ『軍師官兵衛』の主人公に決定した、
黒田如水こと、黒田官兵衛さんの小説です。
この小説は、官兵衛さんの30歳から36歳のお話なんですが、
官兵衛さん、トガってます。
自分の考えていることにとても自信があるんで、
絶対に折れないし、変に空気も読まないんですよね。
もちろん敵を作るわけで、いくつも危ない橋を渡っていきます。
終始、「KY」です。
終始、「官兵衛、ヤバイ」です。
官兵衛さんは、現在の兵庫県姫路市出身の武将なんですが、
当時の兵庫県とか中国地方の常識として、
「とりあえず毛利家に従っとけば大丈夫!」というのがありました。
この頃、現在の愛知県から爆進してきた織田信長が、
近畿地方を席巻し始めていたのですが、「毛利家≫織田家」だったんです。
ここで唯一、「織田家≫毛利家」と言いだしたのが、官兵衛さんなわけです。
この人、譲らないんだよなー。
「これからは織田家がくる!そこだったら身分に関係なく出世ができる!もっと良い世の中にできる!」、
そう信じて疑わないんですよね。
ぼくなんかは、石橋を叩いて眺めるタイプですから、
この信念を持って突き進むところは、見習おうとしてもなかなかできないところです。
そんなKYな官兵衛さんに転機が訪れます。
ある裏切った武将を説得するために、自ら立候補して単身、その武将の城に向かったのです。
「(俺が説得すれば、思い直すに決まってる!!)」、
という気持ちだったに違いありません。
そして、城に入って説得するわけです。
「おい!裏切ってどうする!思い直せ!」
官兵衛さん、全く言い分を聞き入れられず、牢屋に入れらてしまうんです。
あちゃー、言わんこっちゃない。
ああ、でも、なるほど。
官兵衛さんも、ダルビッシュ投手も、本田選手も、
もちろん自信があることあるんでしょうが、それにも増して、とにかく純粋なんですよね。
物事の裏を読んで発言することなく、
その時その時に思ったことを、素直にピュアに言動に移すだけなんですよね。
ここで官兵衛さんは、
この牢屋で1年間閉じ込められてしまって、
体から虫が湧いたり、足が曲がらなくなったり、とことん衰弱してしまいます。
死が迫って来るよな状況に置かれた官兵衛さんは、
ここで価値観が変わっていきます。
最終的に何とか救出されるのですが、
前のトガった官兵衛さんとは違い、
あらゆる出来事を自分の運命として受け入れる、寛大な人物に変わります。
(いわゆる、「丸くなった」?)
僕は”焦り”がなくなったんではないかなと思います。
僕自身、趣味はおじいちゃんみたいですが、
まだまだ若い人間でして、”焦り”が大いにあります。
「早く有名になりたい」、「早く飯が食えるお金を稼ぎたい」、「バイト辞めたい」・・・、いろいろあります。
もちろん自分を売り込んでいく積極性は大事なんでしょうが、
チャンスが来るまでひたすら準備し、チャンスが来たら一気にモノにする、
という姿勢が大事なのかもしれません。
ダルビッシュ投手も本田選手が、官兵衛さんに似てると言いましたが、
二人とも、既に”焦り”を除いた、スーパー官兵衛の域に達していると感じます。
(国内にいる時の一昔前のダルビッシュ投手と本田選手は、牢屋に入れられる前の官兵衛さんに似てると思うんですよね)
さて、
この本のタイトルは『黒田如水』なんですが、
本文中には一度も「如水」と名乗ったり呼んだりするシーンはないんですよね。
ただ、官兵衛さんの師匠・友人として登場するキーマン、
「竹中半兵衛」の言動を表現する時に、「水の如(ごと)く」という言葉が一度だけ出てきます。
人生で大きな影響を受けた半兵衛師匠の所作から、
「如水」が名付けられたのでしょうか。
この小説の答えは、それの様な気がします。
そして、この小説の官兵衛さんがおじいちゃんになったら、
「焦るな若者。機を待ち、己を磨け。水の如く、流れるままよ。」、とかアドバイスくれそうですね。
もう一度おさらい。
ダルビッシュ投手10億円、本田選手1億3000万円。
いや官兵衛さん、やっぱ焦るって。
またね。