戦国瓦版です。
あかいらか長谷川が、
戦国時代を始めとした歴史小説をご紹介します。
今回紹介する小説はこちら。
地元熊谷の英雄、熊谷次郎直実の生涯を追った、
長編小説の後編です。
物語は、
石橋山の戦い後の頼朝の台頭から、
鎌倉幕府成立後までです。
年号にすると、1180年くらいから1200年くらいまででしょうか。
上巻とは違って、
この時代のヒーロー、源義経が活躍します。
もちろん、武蔵坊弁慶も登場します。
というか、この小説のかなりのキーマンです。
弁慶は、この小説の中では、直実の親友として登場します。
弁慶も直実も、身体がやたらと大きいということで、
お互いに親近感が湧いたということで、
合戦のことなり、好きな女のことなり、わちゃわちゃやっています。
この優しき大男、が読者の母性本能をくすぐります。
最後まで、自分の中で消化できなったのですが、
熊谷次郎直実は、自分のことを生来の二番手だと自虐してます。
これもこの小説の肝なのかなと思います。
直実が倒した熊<父親が倒した熊、
直実の怪力<弁慶の怪力、
直実の妻←兄の妻(兄が病死した後に直実の妻に)、
などを、本文のところどころ、本人が語るので、
いや、お前すげーと思うよ、と読者は思わずつぶやいてしまいます。
そのほっとけない感じだったり、
どこか共感できるところが良いのかもしれません。
そしてとにかく、
この小説の面白い点は、女性のキャラクターです。
上巻で、ボーイッシュな馬乗り女性武士「かづさ」は、
めでたく直実の側室となるのですが、
側室になった途端、急に女性っぽくなります。
言葉使いも、急に京なまりのような、なよっとした口調に変わって、
直実も、女性とはこうも変わるものかな、と呑気に驚いています。
その「かづさ」のギャップにまんまとはまった直実は、
どんどんのめり込んでいくのですが、
そこで嫉妬の塊と化したのが、正妻「わらび」です。
下巻では、上巻ほど登場しないのですが、
登場するときは、大体ヒステリックしてます。
人事だから、こちらは気楽なのですが、
これが自身のことだと思うと、おぞましすぎます。
鎌倉の屋敷に若い側室「かづさ」、
熊谷の領地に年増の正室「わらび」。
直実も、女性とはこうも変わるものか、とまたまた呑気に驚いていました。
もちろん、頼朝の正室「北条政子」も、なかなかの鬼嫁ぶりで登場してきます。
時の最高権力者である頼朝がペコペコしています。
ああ、あと、
あまり頼朝は名君としては、描かれていません。
直実が、弁慶を通じて義経と仲良くなるので、
そういう方向になりますが、
頼朝は、冷酷で残酷で極端な色好みとして描かれています。
ぼくは、性格がまさに判官贔屓なので、
その辺りは、逆に、好んで読むことができました。
途中、頼朝が「かづさ」のギャップにやられて、
つまみ食いしようとするところとか、キャッキャしてしまいました。
男って馬鹿だなー、と。
そして、もちろん、
幸若舞の題目となっ場面、
熊谷次郎直実が、平敦盛を討つシーンも登場します。
自分の息子である直家と同じくらいの若者を、
自分の手で殺めたことで、この世の無常感を否が応でも味わった直実は、
これを機に、出家することを心に決めたといいます。
人間50~年~♪下天の内をくらぶれば~♪のやつです。
織田信長が好んで踊ったというものです。
大河ドラマなどで、必ずピックアップされる大事なシーンに出てきますよ。
あと、歴史好きには少し知れた、
「逆馬(さかさうま)」のシーンも登場します。
極楽のある西に背を向けたら、極楽浄土には行けない、
という、直実独自の理論を基に、
直実は、京都から熊谷へ馬に乗って帰るとき、
向きを逆さま乗って帰ったといいます。
鎌倉に背を向けてるってのも、トゲトゲしてて良いですよね。
股擦れがひどそうです。
直実くらいの豪の者だったら、大丈夫だったのかしら。
最後の最後で、
久下家との領地争いも一段落つきます。
実際は、そんなほんわかしたものではないでしょうが、
ぼくは嬉しい領地争いの結末でした。
総じて、この小説、おもしろい小説です。
古書に入るんでしょうか。
普通の本屋には並んでないので、
ネットなどで購入してみてください。
鎌倉幕府成立の過程もしっかり勉強できますよ。
是非。
またね。
あかいらか長谷川が、
戦国時代を始めとした歴史小説をご紹介します。
今回紹介する小説はこちら。
熊谷次郎〈下巻〉 (1961年) | |
富田 常雄 新潮社 1961 売り上げランキング : 1136371 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
地元熊谷の英雄、熊谷次郎直実の生涯を追った、
長編小説の後編です。
物語は、
石橋山の戦い後の頼朝の台頭から、
鎌倉幕府成立後までです。
年号にすると、1180年くらいから1200年くらいまででしょうか。
上巻とは違って、
この時代のヒーロー、源義経が活躍します。
もちろん、武蔵坊弁慶も登場します。
というか、この小説のかなりのキーマンです。
弁慶は、この小説の中では、直実の親友として登場します。
弁慶も直実も、身体がやたらと大きいということで、
お互いに親近感が湧いたということで、
合戦のことなり、好きな女のことなり、わちゃわちゃやっています。
この優しき大男、が読者の母性本能をくすぐります。
最後まで、自分の中で消化できなったのですが、
熊谷次郎直実は、自分のことを生来の二番手だと自虐してます。
これもこの小説の肝なのかなと思います。
直実が倒した熊<父親が倒した熊、
直実の怪力<弁慶の怪力、
直実の妻←兄の妻(兄が病死した後に直実の妻に)、
などを、本文のところどころ、本人が語るので、
いや、お前すげーと思うよ、と読者は思わずつぶやいてしまいます。
そのほっとけない感じだったり、
どこか共感できるところが良いのかもしれません。
そしてとにかく、
この小説の面白い点は、女性のキャラクターです。
上巻で、ボーイッシュな馬乗り女性武士「かづさ」は、
めでたく直実の側室となるのですが、
側室になった途端、急に女性っぽくなります。
言葉使いも、急に京なまりのような、なよっとした口調に変わって、
直実も、女性とはこうも変わるものかな、と呑気に驚いています。
その「かづさ」のギャップにまんまとはまった直実は、
どんどんのめり込んでいくのですが、
そこで嫉妬の塊と化したのが、正妻「わらび」です。
下巻では、上巻ほど登場しないのですが、
登場するときは、大体ヒステリックしてます。
人事だから、こちらは気楽なのですが、
これが自身のことだと思うと、おぞましすぎます。
鎌倉の屋敷に若い側室「かづさ」、
熊谷の領地に年増の正室「わらび」。
直実も、女性とはこうも変わるものか、とまたまた呑気に驚いていました。
もちろん、頼朝の正室「北条政子」も、なかなかの鬼嫁ぶりで登場してきます。
時の最高権力者である頼朝がペコペコしています。
ああ、あと、
あまり頼朝は名君としては、描かれていません。
直実が、弁慶を通じて義経と仲良くなるので、
そういう方向になりますが、
頼朝は、冷酷で残酷で極端な色好みとして描かれています。
ぼくは、性格がまさに判官贔屓なので、
その辺りは、逆に、好んで読むことができました。
途中、頼朝が「かづさ」のギャップにやられて、
つまみ食いしようとするところとか、キャッキャしてしまいました。
男って馬鹿だなー、と。
そして、もちろん、
幸若舞の題目となっ場面、
熊谷次郎直実が、平敦盛を討つシーンも登場します。
自分の息子である直家と同じくらいの若者を、
自分の手で殺めたことで、この世の無常感を否が応でも味わった直実は、
これを機に、出家することを心に決めたといいます。
人間50~年~♪下天の内をくらぶれば~♪のやつです。
織田信長が好んで踊ったというものです。
大河ドラマなどで、必ずピックアップされる大事なシーンに出てきますよ。
あと、歴史好きには少し知れた、
「逆馬(さかさうま)」のシーンも登場します。
極楽のある西に背を向けたら、極楽浄土には行けない、
という、直実独自の理論を基に、
直実は、京都から熊谷へ馬に乗って帰るとき、
向きを逆さま乗って帰ったといいます。
鎌倉に背を向けてるってのも、トゲトゲしてて良いですよね。
股擦れがひどそうです。
直実くらいの豪の者だったら、大丈夫だったのかしら。
最後の最後で、
久下家との領地争いも一段落つきます。
実際は、そんなほんわかしたものではないでしょうが、
ぼくは嬉しい領地争いの結末でした。
総じて、この小説、おもしろい小説です。
古書に入るんでしょうか。
普通の本屋には並んでないので、
ネットなどで購入してみてください。
鎌倉幕府成立の過程もしっかり勉強できますよ。
是非。
またね。
熊谷次郎〈下巻〉 (1961年) | |
富田 常雄 新潮社 1961 売り上げランキング : 1136371 Amazonで詳しく見る by G-Tools |