今年の合唱曲は、


JUDY AND MARY   「Over Drive」

天使にラブ・ソングをより「I Will Follow Him」



ほんの数日前まで揉めていた生徒達も、気づけば同じ楽譜を見ている。


険悪だった雰囲気が、嘘のようだ。


しかし、未だに残る“温度差”


教室の空気は、砂糖が溶けきっていない水のようだった。



我が校は、中高一貫校だ。


高校に進学すると、中学からの内部生に加え、高校から入学した外部生が、同じ教室で過ごすことになる。


最初は、ぎこちなかった生徒たちも、

入学から、2ヶ月。

かなり打ち解けてきたように思える。


生徒たち自身も、きっとそう思っていたはずだ。


だが、合唱祭の練習が始まると、教室の“溶け残り”が見えてくる。春のぎこちなさが消えたくらいでは、まだ、“砂糖が溶けきった”とは言えない。



「そこまで本気にならなくても。」


異性の視線に晒されながら過ごしてきた外部生。

全力で取り組むことに、少し照れが混じる。


そんな彼女らが入学して、目にしたのは、

本気で声を出す。

本気で悔しがる。

本気で勝とうとする内部生の姿。



合唱祭は、特に気合が入るのだが、それには、理由がある。


特進クラスの存在だ。

特進クラスは、クラス替えがない上に、合唱部の生徒も多い。

だからこそ、焦りがある。



“勝つことが全てではない。”



昔、なにかのドラマで聞いたことがあるような、青臭くてむず痒いセリフ。


だが、長年教師を続けていると、心の底からそう思う場面に出くわすことがある。



朝早くから集まって、ぶつかり合って、声を枯らして。


“勝ちたい”という気持ちに、背中を押されながら、歌う。


本気だからこそ、空気も重くなるし、揉めることもある。


特進クラスは、土台も技術もあって、

正直、条件が違いすぎる。

教師失格だが、今年も思ってしまう。



たぶん、特進クラスには、勝てない。



それでも、青春を費やした時間は、決して無駄にはならない。


きっとこの出来事は、人生のどこかをそっと支えてくれるだろう。