1クールめの部屋は、いろんな意味でとても悲惨だったが

2クール目の部屋は、とてもいい人たちに恵まれた。


その中で、となりの部屋から時々遊びに来る、

大正うまれのおばあさんがいた。


自称「認知症」のおばあさんなのだが、
(はたからみても、やっぱりそうみえる)

とにかくいろんな意味ですごい人だった。


たいていの人は、

同じことばかりいってるおばあさんの相手をいやがるのだが、

このおばあさんは、

「そんな人の反応を見て楽しんでいる」節がある。


そして、「ひとつだけおかしくなったならいいけど、

頭の中が3つ、おかしくなって、どうにもこうにも・・」といいながら

人の表情をみないふりして、よくみているのである。



その中の一つ、ディケアでの話。

おばあさんの通うディケアで、

みんなで手形をとることになったのだそうだ。


一枚の大きな紙に、みんなでわいわい騒ぎながら

手形を取った時のこと、


「そのうち、みんなは、

『あれ~。あたしの手形は、どれだったかなあ』と

いいだしてね、

みんなは、たくさんある手形から、

自分の手形を探せなくなって

手をあわせてみたり、いろいろ悩んでいたのよ。

でも、私は、すぐに『これ!』って指さしたの~」

「そしたらね、

『どうして、あんただけ、すぐ自分の手形がわかるのぉ~?』

って聞かれてね

『だって、私だけ、左手だもん』と答えたの。

楽しかったあ」とおばあさん、悪びれたようすもなく言う


私は思わず噴き出した。

うーん、ひとりだけ、左手かあ・・。

このおばあさん、明らかに確信犯である(笑。


こんな話が、たまーにまじっていて、

けっこうおもしろかったのだが、

おばあさん自体は、ほんとに認知症なのか、

ふりをしているのか、さっぱりわからない。


でも「ふり」だったら、これはすごいことなあと

私は思わずには、いられなかった。

このおばあさん、これから先も、

「ふり」をしたまま、誰にもわからないように

人生を終わる気なのだろうか?


それはそれで、すごいなあと

本当に感心せずにはいられなかった。