今回のLink MEは特別編として経済コラム「先月の円ドルレート[101] 202510」に引き続き、月末値変化で見た202510月の円ドルレート変動の原因を、日経新聞電子版マーケット欄為替・金融記事と「為替レート決定の仕組み ①~③」で説明した利子(金利)裁定式、に基づき解説します。

 

 2025年10月の円ドルレート1週0.66円高・ドル安でスタート、しかし翌25.44の揺り戻しの超大幅な円安・ドル高へ反転ところが翌3は一転して3.15の大幅な円高・ドル安へ回帰、翌43.133円高・ドル安をほぼ相殺する3.13の大幅な円安・ドル高へ反転、10月最終第5には再び1.48の大幅な円安・ドル高が持続、2025年10月最終取引日10月31日(金)154.302025年9月最終取引日9月30日(火)148.06と比べると、6.24も下回る超特大の円安・ドル高で終わる、第1・3週の累計3.81円高・ドル安2・4・5週の累計10.05円安・ドル高を下回る円高・ドル安円安・ドル高が交互する循環的変動となりました。

 

為替レート決定の仕組み ①~③」で説明した、利子裁定式ii*=(πe-π)/π予想為替レート(πe)について解いたπe=π(1+ii*)を使って、2025年9月30日(火)と10月31日 (金)の予想為替レートを求めてみます。利子率(金利)データ日米10年物国債利子率を使用します(時差を考慮し米利子率は前日データ)

 

 2025年9月30日(火)円ドルレート終値148.06円利子率1.645%米利子率4.139%を上式に当てはめると、予想為替レート144.37となります。同様に10月31日(金)円ドルレート終値154.30円利子率1.665%米利子率4.096%を上式に当てはめると、予想為替レート150.53となります。2025年9月30日(火)から10月31日(金)にかけての予想為替レート変化6.16円の円安・ドル高、他方両日の日米利子率格差はそれぞれ、2.494%2.441%日米利子率格差変化(Δ(ii*) )0.053%縮小となります。

 

 これらの値を以下の計算式に当てはめると、予想為替レートの変化(Δπe )6.16円の円安・ドル高が現実為替レートの変化(Δπ)へ及ぼした円安・ドル高効果は6.31、他方日米利子率格差変化(Δ(ii*)0.053%縮小が現実為替レートの変化(Δπ)へ及ぼした円高・ドル安効果は0.086.24(現実為替レートの変化) 6.310.08が得られます。円安・ドル高予想円安・ドル高圧力を及ぼす方向に作用したのに対し、日米利子率格差縮小円高・ドル安圧力をもたらしました。

 

 

 2025年10月の日長期利子率は傾向として第1週の上昇が支配的、他方米長期利子率は傾向として第1週の低下が支配的という動きをしました。10月全体を通しては、日長期利子率が上昇したのに対し、米長期利子率は低下したので、日米利子率格差縮小しました。したがって、利子裁定式の考え方に従えば、円安・ドル高予想に基づく円安・ドル高圧力が日米利子率格差縮小を通じた円高・ドル安圧力を上回り、結果的に6.24円の円高・ドル安はもたらされたという形で説明できます。

 

先月の円ドルレート[101] 202510」のグラフで描かれる傾向線の動きは、利子裁定式の考え方に従えば、円安・ドル高予想日米利子率格差縮小は相反する方向で作用しましたが、前者の円安・ドル高圧力が後者の円高・ドル安圧力を凌駕したという形で説明できます。前月末比並びに前週末・当該月末比でみた202510月の円ドルレート第2・4・5週の累計10.05円安・ドル高第1・3週の累計3.81円高・ドル安を圧倒するので、202510月第2・4・5日経新聞電子版マーケット欄為替・金融記事に基づき円安・ドル高の原因を整理した「先月の円ドルレート[101] 202510」を用いると、日米利子率格差縮小円安・ドル高レート予想の原因を特定できます。

 

 日米利子率格差拡大の原因は、傾向的な日長期利子率上昇米長期利子率低下です。日長期利子率の傾向的上昇をもたらした要因としては、財務省による10年債入札への警戒感に基づく一方向への持ち高傾斜の限定的な動き・低調な10年債入札結果による債券需給の緩みを警戒した売り、が挙げられます。他方米長期利子率低下をもたらした要因としては、9月のADP(Automatic Data Processing)全米雇用リポートで市場予想に反した雇用減・米連邦政府機関の一部閉鎖、が挙げられます。

 

 円安・ドル高レート予想に基づく円安・ドル高圧力の原因は、以下の通りです。

 

 第1は、パウエル米連邦米連邦準備理事会(FRB)議長の12月利下げ後退発言・習近平氏の合成麻薬フェンタニル対策実行約束に対するトランプ氏の対中国関税10%引き下げによる米中対立懸念の緩和・米政府によるロシア石油大手の制裁対象追加措置がもたらしたニューヨーク原油先物相場の大幅上昇、に基づく米長期利子率の先高観です。

 

 第2は、日銀10月地域経済報告(さくらリポート) における各地域の強弱まちまちの景気内容・8月毎月勤労統計調査速報における8カ月連続マイナス実質賃金・早期利上げ必要性の情勢にはない10月金融政策決定会合の見方・高市新政権と日銀の十分に密な連携に要する時間の長さ・想定よりも金融引締に積極的な「タカ派」ではなかった10月金融政策決定会合の内容・追加利上げ実施にはなお時間を要すると受け止められた植田日銀総裁発言、に基づく日銀の早期利上げ観測後退見通しです。

 

 第3は、米地銀の信用リスク懸念緩和・米中対立緩和の期待感・日本株含み益に対する海外投資家の為替変動リスクヘッジ、に基づく日米株価上昇を通じた円キャリートレードの開始です。

 

 第4は、所信表明演説での第104代高市早苗首相「責任ある積極財政の考えの下での戦略的財政出動」発言・輸入企業など国内実需筋の円売り・ドル買い観測、に基づく円安・ドル高予想です。

 今回のLink MEは、先週の円ドルレート[204][208]に基づき、月末週末並びに当該月末日次データを用いて202510月の円ドルレートの変動と原因について検討し、月次月末値の変化を日経新聞電子版マーケット欄為替・金融記事に基づき解説します。

 

 グラフには2025930()から1031()までの前月末週末並びに当該月末日次データ青の折れ線で記載されています。縦軸の円ドルレートの数値()方向へ行くほど小さ(大き)くなるように、言い換えると円高・ドル安(円安・ドル高)になるように、描かれています。2025930()の円ドルレートは1ドル=148.061031() 154.30なので、月末値の変化で見ると、2025101ヶ月間の円ドルレートの変動6.24の円安・ドル高であったことが、グラフから読み取れます。

 

 

 2025103()17()前月末比並びに前週末比各0.663.15円高・ドル安となった一方、10()24()31()前週末比各5.443.131.48円安・ドル高となったことがグラフから読み取れます。その結果、20259月末終値148. 06と比べると10月最終取引日1031()6.24円安・ドル高となりました。

 

 途中の行き過ぎた円安・ドル高や円高・ドル安に戻ったものを除外し、2025930()148.06からスタートして1031()154.306.24円の円安・ドル高を推し進めた週末日月末日を取り出した、薄茶色傾向線もグラフに描かれています。2025年9月30(火)148.06から1031(金)154.30円までの変動範囲の中で、2025930() 148.06より円安・ドル高となる週末取引日を日付順に探すと1010()152.84のみが該当することをグラフより読み取れます。したがって、2025930()148.061010()152.84202510月取引最終日である1031()154.30を結ぶグラフが傾向線となります。

 

 202595週最終取引日930()148.06から、いわば一直線20251031()154.306.24円安・ドル高となったと想定したのが、傾向線です。

 

 202510月の円ドルレート10.66円高・ドル安でスタート、しかし翌25.44の揺り戻しの超大幅な円安・ドル高へ反転ところが翌3は一転して3.15の大幅な円高・ドル安へ回帰、翌43.133円高・ドル安をほぼ相殺する3.13の大幅な円安・ドル高へ反転、10月最終第5には再び1.48の大幅な円安・ドル高が持続、202510月最終取引日1031()154.3020259月最終取引日930()148.06と比べると、6.24も下回る超特大の円安・ドル高で終わる、13週の累計3.81円高・ドル安245週の累計10.05円安・ドル高を下回る円高・ドル安円安・ドル高が交互する循環的変動となりました。このような傾向線の背後にある6.24円安・ドル高原因を、日経新聞電子版マーケット欄為替・金融記事に基づき検討すると、以下のようになります。

 

 第1は、米長期金利の変化を通じた日米金利差拡大に基づく円安・ドル高です。米長期金利上昇につながった要因としては、パウエル米連邦米連邦準備理事会(FRB)議長の12月利下げ後退発言・習近平氏の合成麻薬フェンタニル対策実行約束に対するトランプ氏の対中国関税10%引き下げによる米中対立懸念の緩和・米政府によるロシア石油大手の制裁対象追加措置に基づくニューヨーク原油先物相場の大幅上昇、が挙げられます。

 

 第2は、日本の金融政策スタンス変更に基づく円安・ドル高です。日銀の早期利上げ観測後退の要因としては、日銀10月地域経済報告(さくらリポート) における各地域の強弱まちまちの景気内容・8月毎月勤労統計調査速報における8カ月連続マイナス実質賃金・早期利上げ必要性の情勢にはない10月金融政策決定会合の見方・高市新政権と日銀の十分に密な連携に要する時間の長さ・想定よりも金融引締に積極的な「タカ派」ではなかった10月金融政策決定会合の内容・追加利上げ実施にはなお時間を要すると受け止められた植田日銀総裁発言、が挙げられます。

 

 第3は、米株価の上昇に基づく円安・ドル高です。米株価の上昇をもたらした要因としては、米地銀の信用リスク懸念緩和・米中対立緩和の期待感・日本株含み益に対する海外投資家の為替変動リスクヘッジ、が挙げられます。

 

 第4は、その他の要因に基づく円安・ドル高で、所信表明演説での第104代高市早苗首相「責任ある積極財政の考えの下での戦略的財政出動」発言・輸入企業など国内実需筋の円売り・ドル買い観測、が挙げられます。

 今回のLink MEは特別編として経済コラム「先週の円ドルレート」を掲載します。日末値変化で見た202510月第4週最終取引日1024()から105週最終取引日1031()の円ドルレート変動の原因を、東京外国為替市場の日次データを用い、日経新聞電子版マーケット欄為替・金融記事に基づき解説します。

 

 日次とは、1ごとのデータであることをそれぞれ意味しています。東京外国為替市場日次データは、午後5時の取引終了時点での円ドルレート終値となります。円ドルレート終値は、1ドル=144.31円~144.33のようにで表示されます。幅ではなく1つの数字で表示する場合は、1ドル=144.31円と小さい数値円高・ドル安の数値が使用されます。

 

 グラフには20251024()1031()までの日次データ青の折れ線で記載されています。縦軸の円ドルレートの数値()方向へ行くほど小さ(大き)くなるように、言い換えると円高・ドル安(円安・ドル高)になるように、描かれています。20251024()の円ドルレートは1ドル=152.821031()154.30なので、20251024()1031()1週間円ドルレートの変動1.48円安・ドル高であったことが、グラフから読み取れます。

 

 

 20251027()30()31()前週末並びに前日比各0.201.380.90円の円安・ドル高となった一方、28()29()前日比各0.870.10円の円高・ドル安となったことをグラフから読み取れます。その結果、2025年先月末930日(火)終値148.06と比べると202510月第5週最終取引日1031()6.24円安・ドル高となりました。

 

 途中の行き過ぎた円安・ドル高や円高・ドル安に戻った日を以下のように除外して、傾向線を求めます。20251024()152.82から1031()154.30までの変動範囲の中で、20251024()152.82より円安・ドル高となる最初の取引日次にその日より円安・ドル高となる日1024()154.30までそのような手順を繰り返すと20251027()153.0230()153.43が該当することをグラフより読み取れます。したがって、20251024()152.8227()153.0230() 153.43202510月第5週最終取引日である1031()154.30円を結ぶ薄茶色のグラフ傾向線となります。

 

 2025104週最終取引日1024()152.82から、 いわば一直線10月第4週最終取引日である1031()1.48円安・ドル高となったと想定したのが、傾向線です。

 

 202510月第5週の円ドルレートは、週明け後小幅な円安・ドル高でスタート、翌取引日からは一転して2日間連続の円高・ドル安が持続、翌取引日には再び大幅な円安・ドル高へ回帰、最終取引日にもさらなる円安・ドル高の到来、パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長の12月利下げ後退発言・日銀金融政策決定会合の金融引締非タカ派的な内容・植田日銀総裁の追加利上げ慎重発言・米中対立懸念の緩和・などを通して、最終的には円安・ドル高円高・ドル安が交互しスタート時点の円ドルレートを1. 48円下回る円安・ドル高で終わる循環的変動となりました。このような傾向線の背後にある1.48円安・ドル高の原因を、日経新聞電子版マーケット欄為替・金融記事に基づき検討すると、以下のようになります。

 

 第1は、FRB米連邦公開市場委員会(FOMC)で0.25%利下げを決め、12月利下げの見方も市場では強いなかパウエル議長が12月利下げを巡り「既定路線とはほど遠い」と述べたので、米長期金利が上昇し円売り・ドル買いを促したことです。

 

 第2は、日銀金融政策決定会合政策金利を据え置くなか田村直樹審議委員高田創審議委員が前回に引き続き利上げを主張し、「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」では25年度経済成長率見通しを小幅に引き上げたので、想定よりも金融引締に積極的な「タカ派」ではなかったとして円買い・ドル売り持ち高解消の動きが出たことです。

 

 第3は、植田日銀総裁利上げの是非やタイミングについて「現時点で予断を持っていない」と話したほか、今後の政策判断を巡っては「来年の春季労使交渉(春闘)の初動モメンタム(勢い)を確認したい」と述べたので、追加利上げ実施にはなお時間を要するとの思惑により円売り・ドル買いが一段と膨らんだことです。

 

 第4は、トランプ米大統領と中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席の韓国会談後、トランプ氏は習氏が合成麻薬フェンタニル対策の実行を約束したとして中国に対する関税を10%引き下げると表明したので、米中対立への懸念が一段と和らいだのも円相場下押し圧力となったことです。

 

 今回のLink MEは特別編として経済コラム「先週の円ドルレート」を掲載します。日末値変化で見た202510月第3週最終取引日1017()から104週最終取引日1024()の円ドルレート変動の原因を、東京外国為替市場の日次データを用い、日経新聞電子版マーケット欄為替・金融記事に基づき解説します。

 

 日次とは、1ごとのデータであることをそれぞれ意味しています。東京外国為替市場日次データは、午後5時の取引終了時点での円ドルレート終値となります。円ドルレート終値は、1ドル=144.31円~144.33のようにで表示されます。幅ではなく1つの数字で表示する場合は、1ドル=144.31円と小さい数値円高・ドル安の数値が使用されます。

 

 グラフには20251017()1024()までの日次データ青の折れ線で記載されています。縦軸の円ドルレートの数値()方向へ行くほど小さ(大き)くなるように、言い換えると円高・ドル安(円安・ドル高)になるように、描かれています。20251017()の円ドルレートは1ドル=149.691024()152.82なので、20251017()1024()1週間円ドルレートの変動3.13円安・ドル高であったことが、グラフから読み取れます。

 

 

 20251020()21()22()23()24()が5日間連続で前週末並びに前日比各1.050.410.670.67、0.33円の円安・ドル高となったことをグラフから読み取れます。その結果、2025年先月末930日(火)終値148.06と比べると202510月第4週最終取引日1024()4.76円安・ドル高となりました。

 

 途中の行き過ぎた円安・ドル高や円高・ドル安に戻った日を以下のように除外して、傾向線を求めます。20251017()149.69から1024()152.82までの変動範囲の中で、20251017()149.69より円安・ドル高となる最初の取引日次にその日より円安・ドル高となる日1024()152.82までそのような手順を繰り返すと20251020()150.74円、21()151.1522()151.8223()152.49が該当することをグラフより読み取れます。したがって、20251017() 149.6920()150.74円、21日(火)151.1522()151.8223()152.49202510月第4週最終取引日である1024()152.82円を結ぶ薄茶色のグラフ傾向線となります。現実の円ドルレートのグラフ傾向線のグラフは一致します。

 

 2025103週最終取引日1017()149.69から、いわば一直線10月第4週最終取引日である1024()3.13円安・ドル高となったと想定したのが、傾向線です。202510月第3週最終取引日1017()から10月第4週最終取引日1024()の円ドルレートは一貫して円安・ドル高が持続したので、現実の円ドルレートのグラフ傾向線のグラフは一致します。

 

 202510月第4週の円ドルレートは、週明け後大幅な円安・ドル高でスタート、翌取引日からも3日間連続の円安・ドル高が持続、最終取引日にもさらなる円安・ドル高の到来、104代高市早苗首相による責任ある積極財政表明・日経平均株価の大幅上昇・米中対立緩和・日銀の早期利上げ観測後退・ロシア石油大手制裁対象追加などを通して、最終的には前週の持続的円高・ドル安とは真逆のスタート時点の円ドルレートを3. 13円も下回る急激な円安・ドル高で終わる単調的変動となりました。このような傾向線の背後にある3.13円安・ドル高の原因を、日経新聞電子版マーケット欄為替・金融記事に基づき検討すると、以下のようになります。

 

 第1は、吉村洋文日本維新の会代表は自民党と連立政権の樹立合意と政権合意書への署名を明らかにし、積極財政金融緩和志向の自民党高市氏が首相指名選挙では選ばれる公算が大きくなり政治情勢の不確実性が低下するなか、衆参両院本会議で高市早苗自民党総裁104代首相に指名され、所信表明演説に臨み経済・財政分野では強い経済を構築するため「責任ある積極財政の考えの下戦略的に財政出動 を行う」と述べたので円売りが膨らんだことです。

 

 第2は、政局不透明感が後退するなか、米地銀信用リスクへの懸念が和らいだのも投資家心理の改善につながり、日経平均株価は終値として初めて4万9000円台に乗せ過去最高を更新したのに加え、トランプ米大統領が中国との関係は良好だとして貿易協定締結へ楽観的な姿勢を示すとともに米中首脳会談があると明らかになったので、米中対立緩和の期待感により日米株式相場が上昇し、上向きの投資家心理との見方に基づく「低リスク通貨」円売りが優勢となったほか、海外投資家が日本株含み益に対し為替変動リスクをヘッジする円売りに動くとの見方も円相場重荷となったことです。

 

 第3は、20・24日は(実質的)510日」に当たる等、輸入企業など国内実需筋の円売り・ドル買い観測も円相場下押ししたことです。

 

 第4は、米ブルームバーグ通信は10月金融政策決定会合で日銀内に早期利上げ必要性の情勢にはないとの見方があると伝えたので、日銀の早期利上げ観測が一段と後退したのも円売り・ドル買い につながったことです。

 

 第5は、高市首相金融政策について「政府と日銀の十分に密な連携により意思疎通を図るのが何より大事だ 」と語り、新政権への利上げ方針理解には時間を要するうえに、金融政策運営に関する説明時間が日銀金融決定会合までには足りないとして、日銀金融政策決定会合での利上げ決定確率が後退との見方に基づく円売り・ドル買いが出たことです。

 

 第6は、米政府ロシア石油大手を制裁対象に加えたので、世界的な原油需給の引き締まりが意識され、ニューヨーク原油先物相場が大きく上昇したのを受け米長期金利が上昇し、円売り・ドル買いを促したことです。

 今回のLink MEは特別編として経済コラム「先週の円ドルレート」を掲載します。日末値変化で見た202510月第2週最終取引日1010()から103週最終取引日1017()の円ドルレート変動の原因を、東京外国為替市場の日次データを用い、日経新聞電子版マーケット欄為替・金融記事に基づき解説します。

 

 日次とは、1ごとのデータであることをそれぞれ意味しています。東京外国為替市場日次データは、午後5時の取引終了時点での円ドルレート終値となります。円ドルレート終値は、1ドル=144.31円~144.33のようにで表示されます。幅ではなく1つの数字で表示する場合は、1ドル=144.31円と小さい数値円高・ドル安の数値が使用されます。

 

 グラフには20251010()1017()までの日次データ青の折れ線で記載されています。縦軸の円ドルレートの数値()方向へ行くほど小さ(大き)くなるように、言い換えると円高・ドル安(円安・ドル高)になるように、描かれています。20251010()の円ドルレートは1ドル=152.841017()149.69なので、20251010()1017()1週間円ドルレートの変動3.15円高・ドル安であったことが、グラフから読み取れます。

 

 

 20251014()15()16()17()が4日間連続で前週末並びに前日比各0.880.720.011.54円の円高・ドル安となったことをグラフから読み取れます。その結果、2025年先月末930()終値148.06と比べると、202510月第3週最終取引日1017()1.63円安・ドル高となりました。なお10月13日(月)は「スポーツの日」祝日にともなう取引休業日でした。

 

 途中の行き過ぎた円高・ドル安や円安・ドル高に戻った日を以下のように除外して、傾向線を求めます。20251010()152.84から1017()149.69までの変動範囲の中で、20251010()152.84より円高・ドル安となる最初の取引日次にその日より円高・ドル安となる日1017()149.69までそのような手順を繰り返すと20251014()151.9615()151.2416()151.23が該当することをグラフより読み取れます。したがって、20251010()147.4014() 151.9615()151.2416()151.23202510月第3週最終取引日である1017()149.69円を結ぶ薄茶色のグラフ傾向線となります。現実の円ドルレートのグラフ傾向線のグラフは一致します。

 

 2025102週最終取引日1010()152.84から、いわば一直線10月第3週最終取引日である1017()3.15円高・ドル安となったと想定したのが、傾向線です。202510月第2週最終取引日1010()から10月第3週最終取引日1017()の円ドルレートは一貫して円高・ドル安が持続したので、現実の円ドルレートのグラフ傾向線のグラフは一致します。

 

 202510月第3週の円ドルレートは、週明け後祝日をはさんで円高・ドル安でスタート、翌取引日からも小幅を含む2日間連続の円高・ドル安が持続、最終取引日にもさらなる円高・ドル安の到来、高市氏首相選出を見込んだ円売りドル買い持ち高解消・中国による韓国造船大手への制裁を巡る米中貿易対立の激化懸念・米雇用の下振れリスクに基づく米利下げ観測・国内輸出企業の円手当・米地銀ザイオンズバンコーポレーションによる信用不安リスク・自民維新連立政権の可能性などを通して、最終的にはスタート時点の円ドルレートを3. 15円も上回る急激な円高・ドル安で終わる単調的変動となりました。このような傾向線の背後にある3.15円高・ドル安の原因を、日経新聞電子版マーケット欄為替・金融記事に基づき検討すると、以下のようになります。

 

 第1は、公明党斉藤鉄夫代表が野党候補への投票を選択肢より排除しない考えを示したほか、野党候補の一本化を巡り立憲民主党日本維新の会国民民主党の3党幹事長が会談するなか、状況を見極めたいとして高市氏の首相選出を見込んで積み上がっていた円売り・ドル買い持ち高解消の動きが広がったことです。

 

 第2は、中国商務省韓国造船大手ハンファオーシャン子会社の米企業5社に対して中国との取引を禁じる制裁を発表し、米中貿易対立の激化懸念を通じて日経平均株価が下げ足を速め、「低リスク通貨」円買いが増えたことです。

 

 第3は、中国商務省韓国造船大手の米国子会社5社に制裁を科すと発表したのに対して、トランプ米大統領は自身のSNSに「食用油をはじめとする中国との貿易取引を停止することを検討中だ」などと投稿したので米中貿易対立の激化懸念が強まり、円買い・ドル売りが優勢だったことです。

 

 第4は、パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長米労働市場について「雇用の下振れリスクが高まったようにみえる」と語ったのに加え、ボウマンFRB副議長も米ワシントンのイベントで「年内にあと2回の利下げが決定されると見込んでいる」と述べたと伝わり、今後もFRB利下げを進めるとの観測が再燃して円買い・ドル売りを後押ししたことです。

 

 第5は、国内で事業会社の決済が集中しやすい「5・10日」にあたる15日には、直近の円安・ドル高傾向を背景に国内輸出企業が先物での円の手当てを焦っていなかったので、平時よりも円買い・ドル売りが多くなったことです。

 

 第6は、米地銀ザイオンズ・バンコーポレーションなどが融資に関する不正行為を巡って訴訟を起こしていたのが判明し、ザイオンズ貸倒引当金なども計上しており米銀の信用リスクが高まるとの懸念が広がったのを受け、対円でドル売リが出たことです。

 

 第7は、米銀不良債権処理に追われれば景気の腰折れにつながりかねないほか、10月米フィラデルフィア連銀製造業景況指数が悪化したのもあって、市場ではFRBが次回の米連邦公開市場委員会(FOMC)で0.50%の大幅利下げを決める可能性が意識されたのを受け、日本時間17日午前の取引にかけて米長期金利が低下し円買い・ドル売りを促したことです。

 

 第8は、米株式相場で業績悪化を懸念された銀行株が大きく下落したのを受け、日経平均株価も700円近く下落し投資家心理が悪化したのも、「低リスク通貨」円買いを誘ったことです。

 

 第9は、藤田文武日本維新の会共同代表は国会内で高市早苗自民党総裁と首相指名選挙や連立政権に向けた2回目の政策協議を開き協議後、記者団に「大きく前進したものと両者で受け止め最終の詰めをする」と語ったので、自民と維新の連立政権が発足すれば政局が安定し日銀利上げに動きやすくなるとの思惑により、円買い・ドル売りが増えたことです。