目次10、「旦那の上司に・・・」 | カメラマン 兼 作家の備忘録

カメラマン 兼 作家の備忘録

あの頃まだJekyllから時々Hydeだった、だが今ではもうすっかりハイド時々ジキルなのだ。

 

 鎌倉で撮影をした37歳の彼女は、この若さで未亡人だった。

 

子供をヒザの上にのせて江ノ電のシートに座る姿、子供の手を取り鶴岡八幡宮の

長い急な階段を息を切らしながら上る姿、おみくじを引き運に一喜一憂する姿

しゃがみこんで子供と同じ目線で語りかけている母の姿。

 

 それはまさに、さだまさしの「無縁坂」の世界だった。

 

 

 

 

 神殿に向かって手を合わせる、その白魚のように白くて小さな「母の手」は

あっという間に息子の手より小さくなっていくんだろうなと思いながら

その一瞬の「一期一会」を俺はカメラのフレームで切り取っていた。

 

 

 

 

 鎌倉高校前駅まで江ノ電で移動し、目の前の砂浜で夕日の中、江の島をバックに撮ってあげた。

彼女は履物と足袋を脱ぐと、着物の裾を膝までたくし上げ、波打ち際で子供とじゃれている。

 

  「海と着物」・・・・すごくいい。

 

 

 

待望の第2弾「続・Hyde時々Jekyll」9月1日文芸社より発売

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