タイトル 不良番長
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公開年 |
1968年 |
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監督 |
野田幸男 |
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脚本 |
松本功 山本英明 |
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制作国 |
日本 |
出演者
神坂弘(梅宮辰夫)不良グループのリーダー
河本五郎(南原宏治)神坂の旧友
榊龍子(夏珠美)榊一家の親分の娘
タニー(谷隼人)神坂の仲間
ランキング(克美しげる)神坂の仲間
和夫(小林稔侍)途中で仲間となる
お豊(大原麗子)神坂の仲間
正月早々選ぶ作品でない事は重々承知しているのだが、ある意味お屠蘇気分が抜けぬうちに紹介した方が良いと思ったので、本作を紹介させていただく。出来ればおおらかな気分で読んでいただければ幸いだ。
東映ニューフェイス5期生に合格して以来、様々な映画に出演し主演を張る事も多くなっていたが、しかし今一はまり役に出会えず伸び悩んでいたのが当時の梅宮辰夫。娘梅宮アンナの溺愛っぷりしか知らない昨今の人は信じられないだろうが、デビュー当時「いい女を抱くこと、いい酒を飲むこと、いい車に乗ること、きれいな海が見える一等地に家を構えること」をやりたいがために俳優になったという程ヤンチャしていた。
東映もなんとか彼を売り出そうと四苦八苦していたが、そんな時アメリカ映画をパクる事に凄腕を発揮する岡田茂が、マーロン・ブランドの「乱暴者」(1953年)や、ロジャー・コーマン監督・ピーター・フォンダ主演の「ワイルド・エンジェル」(1966年)などをヒントに思いついたのが本作。タイトルも岡田が考案し本人は「どうだ。いいだろう」と悦に入っていたというが、周囲はドン引きしていたと言われる。ただ、梅宮に話すとひどく気に入り「よし!東映東京は俺がしょって立つ」と思うようになったとか。しかし当時、東映京都で任侠映画が撮られるため、肝心の看板スター、高倉健と鶴田浩二は京都に行くことが多かったのでスターとなる絶好の機会が巡ってきた状態だった。
「連想ゲーム」で知的な雰囲気がおなじみだが、この頃は悪役が多かった渡辺文雄
それまでの不良者に見られたヒロイズムの観念は薄く、文字通り悪人を主人公にしたような作風で、それは当時も論議を呼んだが、映画は大ヒットしてシリーズ累計16本も作られるようになる。初見は確かVHSだったと思うが、面白いと感じた記憶がない。今回久しぶりに見て見たが、やはり面白いとは到底思えないが、当時大ヒットした理由は何となく察する事が出来た。
映画の冒頭でナチスの帽子をかぶった、主人公神坂率いるカポネ団(本作では呼ばれないが)が、海岸で善良なカップルを襲い女性をレイプするところから始まる本作。この冒頭だけで、現代では観客はドン引きしてとても主人公たちに感情移入できない。その為終盤の大アクションシーンも、カポネ団が次々と倒れても、たいして悲しくはならない。だいたいこの連中は町で女の子をさらってレイプ。そして馴染みのクラブに売りつけるという、「お前に人の心はないのか!?」と言いたくなるような鬼畜の所業を生業とするような連中。そんな中、榊一家の親分の娘・龍子を襲ってしまい、仕方なく詫びを入れる事に。ところが肝心の龍子は神坂に惚れるという昭和のあるあるな展開。いや、それは絶対にないから。
ところが榊の親分は、自分の娘が瑕ものにされたのにホテル建設にからむ横領をネタに、大江興業のゆすりに神坂を巻き込み、報酬は折半する事になる。手際よく仕事を勧めるが、大江興業のバックには暴力団が付いていてその中に神坂の旧友の河本がいた。河本はカポネ団の前に立ちはだかる。
冒頭の善良カップルのレイプといい、人身売買といい、高級車のタイヤを外してのカツアゲといい、この連中には全く感情移入できない。しかもやっている事はせこい事ばかり。後半でようやく巨悪との戦いになるが、ここでも社長の愛人や妻を誘拐してレイプして脅すという、鬼畜の所業なので「どっちもどっち」というよりも、カポネ団の方が悪く見えてしまう。しかも榊龍子は、レイプされた神坂に惚れてカポネ団に入るという謎行動。ポルノ映画ならともかく、東映の看板映画でそれはないだろう。ヒロインの夏珠美は子役出身で本シリーズ都合7本に出演しているが、70年に強盗被害にあった事も影響してか、70年代半ばには引退しているようだ。ちなみに本作で梅宮にレイプされるシーンは、歯科で歯の矯正を行わせ、麻酔で意識が朦朧とする状態でベッドで裸にして濡れ場を撮ったという事なので、そうした事も早期引退に繋がったのだろう。この頃の東映東京での女優の扱いはこんなものだった。実際梅宮を始め出演者による共演女優狩りは有名で、シリーズが続き悪名が高まると女優が出演してくれなくなり、カルーセル牧やピーターが出演するようになったともいわれている。
同じ銃だが銃身が異なる。アップ用とアクション用だろう
今見るととても人にお勧めするような映画ではないが、当時は人気があったのも事実なので、本作のアウトロー的な部分が当時の観客(もちろん大半は男)に受けたのだろう。
ちなみに後に梅宮辰夫の愛娘の梅宮アンナは、羽賀研二の毒牙にかかるわけだが、その時のいかにも常識人的な梅宮の発言に、当時の共演者たちは「辰ちゃん。人のこと言えないだろう」と突っ込んだとか。





