タイトル ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズ

公開年

2024年

監督

阪元裕吾

脚本

阪元裕吾

主演

高石あかり

制作国

日本

 

出演

杉本ちさと(髙石あかり)普段はずぼらな社会不適合者だが凄腕の殺し屋

深川まひろ(伊澤彩織)格闘術にたけた凄腕の殺し屋だが普段はちさと同様

冬村かえで(池松壮亮)野良の殺し屋。格闘術、射撃のいずれも常人離れした腕を持つ

入鹿みなみ(前田敦子)二人の先輩だが性格はきつい。実は灰原哀のファン

七瀬りく(大谷主水)みなみの相棒の筋肉馬鹿。宮崎弁がきつく時に解読不能となる

 

髙石あかりと伊澤彩織がプロの殺し屋、“ちさと”と“まひろ”を演じ、この社会不適合者の殺し屋女子2人組のゆるーい日常とハードなアクションのギャップで人気となった、阪元裕吾監督による青春アクション映画「ベイビーわるきゅーれ・シリーズ」の第3弾。

前作までは、二人の社会不適合社っぷりがゆるくてシュールな笑いを呼んでいたが、本作では旅先という事もあってそうした部分の描写は少なく、より二人の友情(百合?)が前面に出て描写されている。

なお。2024年の9月からテレビ東京系で「ベイビーわるきゅーれ エブリデイ!」が放送されているが、別にドラマを見ていなくても本作の鑑賞に何ら問題はない。

本作は過去最大規模で上映され、かなりの予算を使っていると思われるので、メジャーに合わせて内容が変わるのでは?とファンをやきもきさせたが、ご心配なく。予算に合わせてたかない派手になっているぐらいで、過去のシリーズとスタイルが大きく変わった事は無かった。

殺し屋協会に所属するプロの殺し屋コンビ、杉本ちさとと深川まひろの二人は宮崎県に出張していた。すでに前日ミッションの一つをこなし、今日の仕事は楽勝なのですっかりバカンス気分だが、ちさとは今日がまひろの誕生日であることに気づく。焦って何かプレゼントをと考えるも、次の殺しの予定が入っているため仕方なくターゲットの松浦が潜伏している宮崎県庁に向かう。普通この手の映画だと、だいたい南国が舞台となると沖縄ロケが多いが、本作は宮崎。ある意味「ベイビーわるきゅーれ」らしい。そして“南国”“夏”“海”とくれば水着美女と来るはずだが、このシリーズでは二人の肌の露出は厳禁。本作でもみんなが思い描く水着には全くならない。

ここで水着になったらちょっと興ざめする気がする

 

次のミッションはチンピラを1人消すだけの簡単なお仕事。しかし、そこで謎の男がターゲットを仕留めようとしている現場に出くわす。ダブルブッキングかと焦る二人だが、その男は教会に入っていないいわば“野良”。そこでりょうしゃはターゲットを巡り激しい戦いとなるが、男の殺し屋スキルは高く、二人がかりでも苦戦が免れずターゲットを逃してしまい、高い格闘能力を誇っていたまひろのショックは大きい。

二人の前に宮崎の協会の殺し屋、入鹿みなみと七瀬が現れ、相手が野良の殺し屋で凄腕の冬村かえでであることを告げ、協会の掟として彼をみなみらと協力して仕留める事が命じられる。仕方なく協力する二人だが、みなみは事あるごとに高圧的に出て、二人に対して先輩風を吹かせる事から二人との相性は最悪。

冬村の自宅を急襲するが本人はおらず、代わりに仲介人の広川がつかまり、冬村に関する情報を洗いざらい喋ってしまう。

協会の調査で松浦が潜伏しているホテルを突き止め、4人は松浦を連れ出すことに成功するが、そこを冬村に襲われ、さらに松浦が雇った護衛役の殺し屋を交え壮絶な戦いとなる。ここでも冬村の驚異的な戦闘スキルは他の者を圧倒し、みなみが足を負傷してしまう。間一髪のところを清掃係の田坂と宮内に助けられ、ちさととまひろのサポートもあって何とか脱出に成功する。ここでの池松壮亮は、ほとんど場所を動かずに4人を圧倒し、格の違いを見せつけている。

何とか隠れ家に逃げ帰った一行だったが、力の差を見せつけられて意気消沈する。そんな中で、みなみは二人に助けられたことを素直に礼を述べ、その上で力を貸して欲しいと頼んだ。その意気を汲んだちさととまひろは残って戦うことを決める。その頃、冬村も地元の農協系の殺し屋たちを引きこんで最終決戦に挑もうとしていた。

一瞬で殺し屋の顔になる

 

いつも通り、社会不適合者でゆるーい日常を過ごすちさととまひろ。いつもは年相応の女子が普段着で着る様なだぶだぶの格好に加えて、中盤にはホテルに乗り込むところではドレスアップした姿を披露している。そして二人とも男装なのが面白い。そして、相変わらず伊澤彩織のアクションは凄い。もうこれだけで金を払ってみる価値があるほど。そして終盤に前作の兄弟の事に触れて「楽しかった」と評しているのは、ファンなら涙なしには見られないところ。そしていつもはガンアクションが多い高山あかりが、本作ではかなり格闘をやっている。それがなかなかいい。既に人気女優の仲間入りをしている彼女だが、新しい事の挑戦している姿は好感が持てる。この二人を発掘してくれただけでも、阪元監督の功績は大きい。

静かなる狂気をたたえる池松壮亮の演技は秀逸。そしてアクションは完璧

 

そして掃除屋の田坂と宮内等、お馴染みのレギュラーは変わらず続投。それ以外に今回は最凶の殺し屋の冬村に池松壮亮がキャストされている。童顔で朴訥とした役が多いが、それを逆手にとっておとなしさの中に狂気をはらんだ殺し屋を好演。また、キャストに前田敦子がいたので、てっきりカメオ出演かと思ったら、どっぷりと最後まで出ていた。これがあの二人組と、絶妙な絡みを見せて過去最高の名演技。また九州弁で素朴な雰囲気の地元の殺し屋七瀬を演じた大谷主水は宮崎出身の元テコンドー選手で、現在は主に台湾で俳優をやっている。

過去作最高に楽しませてくれた本作だが、ここまで来ると次回作にも期待してしまう。日本では二人を圧倒できるアクションがやれる俳優はあまりいないだろうが、そこは海外に目を向けてはどうだろう。香港、台湾、韓国などが思い浮かぶが、タイもありだと思う。「チョコレート・ファイター」のジージャ・ヤーニンなど面白いと思うのだが。