タイトル ソウ3

公開年

2006年

監督

ダーレン・リン・バウズマン

脚本

リー・ワネル

主演

トビン・ベル

制作国

アメリカ

 

本作は、「ソウ・シリーズ」の3作目で、04年、05年に引き続き製作されたゲーム感覚の監禁スリラー映画。これまでのシリーズはゴア描写はあるものの、ミステリー要素が中心だったのに対して、本作では残虐性を前面に出した作風となっている。その為、アメリカの映画審査機関MPAAのレーティングは「NC-17指定(17歳以下鑑賞禁止)」となる予定だったが、様々な削除・修正を加えた結果、最終的にR指定(17歳未満は保護者の同伴が必要)での劇場公開となった。また日本でもR-18の予定だったが、残虐シーンを暗めにすることで何とかR-15の公開にこぎつけた。

これまで映画の黒幕であり続けたジグソウこと、ジョン・クレーマーが初めて主役となり、物語の中心にいるのも本作の大きな特徴。

これまで同様に、映画は前作のラストから始まる。刑事のケリーがジグソウの被害者と思われる死体が見つかったとの報告に、急いで駆けつけるが前作の最後にジグソウとともに行方不明となったエリックではないことを知り安堵するが、現場に違和感を覚えた。ジグソウのトラップはこれまでは必ず生存の道が残されていたが、今回はどう転んでも死は免れないのだ。その直後にケリーは誘拐され、ジグソウのゲームに投げ込まれ今回もやはり逃げ道は残されていない方法で殺されてしまう。

これらのゲームを仕組んだのはジョンではなくアマンダで、彼女は瀕死のジョンに代わりジグソウとなっていたのだ。しかし、彼女はジョンとは違い情緒が不安定で、最初から助かる道をふさいでいた。

優秀な医師リンがアマンダに誘拐され、ジョンを生かすように命じられる。もしジョンが死ねば首に巻いたトラップが爆発して、彼女の頭はショットガンの十字砲火を浴びてしまう。「病院に連れていくべき」と主張するリンにアマンダはここでの治療を命じ、ありあわせの機材で手術を試みる。

その頃、食肉加工工場で目覚めたジェフ。彼は長男を交通事故で亡くし、加害者への復讐を常日頃考えていた。冷凍庫で事故の唯一の目撃者で、法廷での証言を拒否したダニカが金属フレームに鎖でつながれ、彼女に水を噴霧して凍死させようとしている現場に遭遇。最初は躊躇っていたが彼女の悲鳴に心を動かされ鍵を取るが、その時すでに凍死していた。

この時ダニカは全裸でこのシリーズでは珍しいサービスカットとなっている。本作だと、ジョンの治療とジェフの復讐の二つが交互に描かれる。

リンの手術は成功しとりあえずジョンは小康状態となるが、この時もアマンダの情緒不安定ぶりが露呈し、またジョンがリンを頼りにしている様子から彼女に激しい嫉妬の炎を漏らす。

 

ジェフは加害者に軽微な判決をしたハルディン判事を助けると、遂に加害者のティモシーが手足をねじ切るトラップに繋がれている現場に到達。助けるカギを取り出すには、ショットガンで一人は死ななくてはいけない。何とか取り出そうとするがショットガンが暴発し、ハルディン判事を殺し、更に鍵も間に合わずティも死は首をねじ切られ死んでしまう。

前作までは被害者達は殺されても当然というクズばかりだったが、本作から毛色が変わってしまう。ケリーはアマンダから選ばれたようなのでカウントしないにしても、ジェフの罪は息子の復讐をひたすら願い、それにより娘に優しく接する事が出来ない程度。リンに至っては完全なとばっちり。前作のダニエルが窃盗などの微罪だったが、アマンダが保護していたようなので最初から殺すつもりはなかった様子。それに比べると本作の二人はジグソウのゲームに似つかわしくない。

この後はリンのパートとなり、アマンダと本格的に対立するが、それすらジョンの立てた計画通りだったという展開。本作のジョンは、本当に狡知の塊。相手がどう動くかを完全に予想できるが、そうした人物が主役ポジにいると物語に起伏が無くなり面白さがそがれる。本作も、そうした欠点を抱えている。

半面アマンダが第1作からジョンのサポートとして活動している事も判明。その一方で彼女はトラップを生き残った者も容赦なく処刑していた事も判明する。それにサスペンス要素が減り、グロシーンが増加という、ホラー映画の続編あるあるな展開となってきているのがちょっと残念。

本作の見どころはずばりジョン・クレーマーと彼を演じるトビン・ベルの演技となる。ほぼ全編横になっているだけなのに、その存在感と演技力は飛びぬけている。本作の重要なテーマの一つはジグソウの後継者探しだが、彼に勝る人物は探しえないだろう。と思っていたら、その後のシリーズもなんやかんやと理由を付けて、トビン・ベルは続投することになる。まあ、これは仕方ないだろう。