タイトル ツイスター

公開年

1996年

監督

ヤン・デ・ボン

脚本

マイケル・クライトン アン=マリー・マーティン

主演

ヘレン・ハント

制作国

アメリカ

 

最近続編を見て、すっかり内容を忘れていた事から、もう一度見て見ようと思い立ったのが再鑑賞のきっかけ。見ていると、「ああ。こんな内容だったな」と、いろいろと思い出してきて懐かしくなった。それに主演の1人、ビル・パクストンが2017年に急死したのも、今思うと感慨深いものがある。ちなみにビル・バクストンがこの世界に入ったきっかけは、ジェームズ・キャメロンの紹介で、ロジャー・コーマン率いるニュー・ワールド・ピクチャーズで美術監督となったことだという。こんなところにもコーマン御大の名前が出て来るとは。作品はともかく、人材の発掘という点で御大の果たした功績は、アカデミー賞10個分以上の価値がある。

製作はスティーブン・スピルバーグで監督はヤン・デ・ボン。ヤン・デ・ボンは「スピード!」で注目され売れっ子監督の仲間入りとなったが、2003年に「トゥームレイダー2」を監督して以降は遠ざかっている。

一見温和な紳士だが、実は...

 

主人公のジョー・ハーディングは竜巻を追う観測チームを率いる女性。幼いころ巨大竜巻に父を殺され、トラウマとなっていた。彼女の夫ビルは、復讐に憑りつかれているようなジョーについていけず、離婚を決意していた。今日も、恋人のメリッサを伴い送っていた離婚届をもらうため、彼女の率いるチームがいるところにやって来た。実は彼もそのチームの一員で、ジョーに負けない程優秀な観測員だった。もう気象予報士として安定した生活を送るつもりだったが、自分が考案した「ドロシー」と呼ばれる観測機が完成した事を知り心が騒ぐ。更にライバルのジョーナスも彼のアイデアを盗用した観測機を完成させている事を知り、離婚届にサインをもらうことを理由にチームに同行するが、これはメリッサにとっては初体験。それまで知らなかった、ビルの意外な一面を見る事になる。

このドロシーは続編の「ツイスターズ」にも登場。今となっては少々時代遅れだが、それでも十分な性能を持っていて元の設計の優秀さがうかがえるようになっていて、これはファンサービスとしては嬉しいところ。

離婚寸前なはずが、何故か息ぴったり

 

2つのチームは激しい先陣争いを繰り広げるが、天才が二人もいるジョー達のチームが一歩先んじる。この二人、離婚寸前にしては息ぴったりで抜群のコンビネーションを発揮するのは、この手の映画あるある。しかし竜巻が進路を変えた事からドロシー設置に失敗。何とか難を逃れた二人は、チームと合流するとメリッサの車に移り、なおも竜巻を追う。湖水の水を吸い上げ、牛をも巻き込む3本の竜巻は、合体して一つになりやがて消滅する。狂喜乱舞の二人をよそに、メリッサは茫然自失状態。いやそりゃそうだろう。竜巻の中にいきなり放り込まれて、喜ぶ方がどうかしている。その後、一行はワキタの町のジョーの叔母メグを訪ねて、彼女の得意料理のステーキに舌鼓を打つ。そこでこれまでのビルの武勇伝を聞くメリッサは、完全にドン引き。そりゃ、これまで温和で優しい紳士と思っていた彼氏がキチガイだったとしりゃ、誰でもドン引きする。しかもビルは既に離婚届の事なんて忘却の彼方で、竜巻に熱中していた。

アメリカ人は何故かこのステーキ・アンド・エッグが大好き

 

その後も激しい竜巻チェイスが続くが、予備のドロシーを叩き壊していくが、何時しかジョーとビルはかつての絆を取り戻していく事になる。やはりキチガイにお似合いなのはキチガイだ。しかし、ジョーは離婚届けにサインするが、一行が泊まった街にも竜巻に破壊され、一行は倉庫の中の半地下に逃れ何とか難を逃れるが、ここでメリッサが限界を迎えビルに別れを告げる。いやよく我慢したよ。更に、ワキタが竜巻に襲われたという知らせが入った。一行はメグの救出に向かい、間一髪で助け出すことに成功する。メグの家にある風車を見たジョーの脳裏に、ドロシーを確実に飛ばすアイデアが浮かんだのだった。

昔は凄く見えたのに

 

30年も前の映画だけに、CGなどの特殊効果は今見ると微妙に見えるのは仕方ないところ。これが“特撮”なら味わいとなるのだが、デジタルなものは陳腐にしかならない。牛が飛ぶところなどは昔見た時は、興奮したが今見ると笑ってしまうのは仕方がない。ただ、物語はシンプルながら、よくできている。離婚寸前の夫婦が、巨大な脅威に立ち向かう事で、絆を取り戻すというのは鉄板だが、それだけに安心して見ていられるというモノ。これは続編でもちゃんと踏襲されているのは嬉しいところだ。

竜巻観測機の名前が「ドロシー」なのは、「オズの魔法使い」のヒロインの名前からとられているのは明らか。あの映画も竜巻で飛ばされるのがきっかけで、オズの国へ迷い込むからいいネーミングと言える。

竜巻の内部は神々しいまでに美しい

 

本作はヤン・デ・ボンの「スピード」に続く2作目だが、本当はこの前に「アメリカ版ゴジラ」を撮る予定だった。しかし予算の超過などを理由に降板させられ、代わりにローランド・エメリッヒが撮る事になったが、その評価はご存じの通り。この事でヤン・デ・ボンはかなり悔しい思いをしたようで、そのうっ憤を晴らすべく、ゴジラを竜巻に見立てて作ったのが本作と言われている。確かに本作での竜巻の描写は怪獣そのもの。そうした巨大な脅威に、新兵器で果敢に立ち向かう人間達という構図は、「シン・ゴジラ」に近いものがあるし、「シン・ゴジラ」の元ネタの一つとして指摘されることもあり、庵野監督が参考にした可能性はあると思う。

ちなみに本作の製作費は9200万ドルに対して、興行収入は約5億ドル。「GODZILLA」は1億3000万ドルに対して、興行収入は3億7000万ドル。この結果にヤン・デ・ボンは大いに留飲を下げた事だろう。