タイトル プー2 あくまのくまさんとじゃあくななかまたち

公開年

2024年

監督

リース・フレイク=ウォーターフィールド

脚本

マット・レスリー

主演

スコット・チェンバース

制作国

イギリス

 

前作「プーあくまのくまさん」は、癒し系アイドルがスラッシャー・ヒーローとなるという衝撃(笑撃?)の展開に、全世界に大きな話題を呼んだ。ただ、興行的には成功と言えたが、評価は散々。もっともこの辺りは想定内だったはずだし、それにこれに懲りる連中じゃない。早速続編が作られ、更に著作権切れの児童文学のキャラを次々と主人公にしたホラー企画である、ザ・ツイステッド・チャイルドフッド・ユニバースが立ち上げられることに。ちなみにこれの総称はプー・ユニバースと呼ぶとか。今後の予定だと(タイトルはいずれも仮)

①   ピーターパンとネバーランドナイトメア(24年)

②   バンビ:レコニング(25年)

③   ピノキオ:アンストラング(25年)

④   プー・ユニバース:モンスターズアッセンブル(25年)

⑤   プー3血と蜂蜜(25年)

と、現時点で決定しているのは5本で、その内ピーターパンとバンビは撮影が終了している。他に「眠れる森の美女」と「白雪姫」が予定されているとか。このラインナップを見ると、リース・フレイク=ウォーターフィールドは絶対Disneyに喧嘩売ってるな。

監督は変わっていないが、主演送りストファー・ロビン役はニコライ・レオンからスコット・チェンバースに代わったがこれには理由があって、前作は100エーカーの森で起きた惨劇から脱出したクリストファーが語った話を基にして作られたホラー映画という事になっている。それにより事実上前作との関連性を絶ち、新規シリーズのはじまりとしたのだが、それはプーを始め怪物たちのキャラを変更させる必要があったからで、これにもプー・ユニバースが絡んでいると思うがどうだろうか。

100エーカーの森の惨劇と呼ばれる事件の唯一の生存者、クリストファー・ロビンだったが、町の住人の多くは野生化したぬいぐるみが人間を襲うという話を信じず、クリストファーこそが事件の犯人ではないかと噂していた。私も「狂暴なぬいぐるみが人を襲った」などとほざく奴がいたら、入院を勧める。

クリストファーはアッシュダウンの病院で医師として働きながら、催眠療法によるカウンセリングを受けていた。そんな中、彼の話を元にB級ホラー映画は作られ、彼が務める病院の上層部は解雇してしまった。失意のクリストファーだが、優しく気づかってくれる両親と、幼なじみのレクシーだけが頼りとなっていた。

彼が解雇された日、クリストファーの幼馴染の青年が、無残な姿で病院に担ぎ込まれた。彼と仲間はクリストファーの話を信じて、100エーカーの森でプー達を探していたのだったが、逆に彼らの襲われてしまったのだ。

その後、カウンセリングの結果蘇った記憶から、実はプー達との思い出はかなり美化されていて、元からプー達には狂暴な面があった事を思い出す。そして幼い頃、双子の弟ビリーが彼の目の前で誘拐された時、側にいたのは病院で雑用係を務めるキャベンディッシュであることも思い出す。彼の家に侵入して事の次第を問いただすが、それがアーサー・ギャラップ博士の命令であった事と、博士は人間の動物の遺伝子を組み合わせて、新しい生物を生み出そうと考えていた。プーは実はクリストファーの弟のビリーだったのだ。ここに、100エーカーのモリの生きたぬいぐるみたちの真実が明らかとなった。

そのころ、アッシュダウンではパリピの若者達が集ってパーティが開催されていた。しかしそこに100エーカーの森の怪物たちが迫りつつあった。

終盤のパーティ大虐殺はまさに出血大サービス。次々とパリピたちが、邪悪な仲間たちの餌食となり殺されていく姿は爽快感すらある。それにどうせ殺されるのは、ドラッグに酒、そしてセックスに明け暮れているような、ホラー映画の餌枠だけに、どれだけ悲惨な目にあってもかわいそうに感じない。この辺り、彼らは風紀委員長であるというスラッシャー・ヒーローの法則が発動している。良い子のみんなは、こんな大人になっちゃだめだよ。

見た時は「監督が変わったか?」と思う程、作風が変化していて驚いた。前作は、まるで大学生の卒業制作映画のように雑な作りだったし、ストーリーもひたすらプーたちが、100エーカーの森に入り込んだ人間を襲って殺すだけに単純なストーリー。そしてプーたちも、昔はおとなしくクリストファーと楽しい日々を送っていたのが、成長したクリストファーが100エーカーの森に近寄らなくなった事から、寂しさと飢えから狂暴化したとの設定だったが、マッドサイエンティストが子供をさらって動物のDNAと結合させるという、狂気の実験で生み出され、元から彼らは狂暴だったがたまにおとなしくなることがあり、その時クリストファーと遊んでいた。そしてプーたちの狂暴性を示す記憶は、消えていたという様に変えられている。確かに前作のままだと、今後のユニバース展開を考えるとまずいので、再設定し直すのも分かる。それに伴い前作に比べると、クリストファーの消えた記憶からプー達の正体を探るという、サスペンス要素が加わり中だるみを防ぐことに成功している。

しかしその一方で前作に見られた、破天荒な面白さは減少し普通のスラッシャー映画になっている。前作が楽しめた人にはここが物足りなく感じるかもしれないが、ただこれは悪い事ばかりでもなく、本作では明確なヒロインや家族が設定され、クリストファーがプーたちと戦う明確な理由付けが出来ている。また前作ではただ殺すだけで、ヴィランとしての魅力に欠けたプーたちだったが、本作ではフクロウのオウルが影のラスボス的な立ち位置にすることで、無言で殺戮を繰り返すだけのプー達を補っているし、彼が今後ユニバースで重要な立ち位置になると予想する。それに彼の正体も気になるところ。まあ、だいたい予想は出来ているが。

 

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