タイトル テリファー

公開年

2016年

監督

デイミアン・レオーネ

脚本

デイミアン・レオーネ

主演

ジェナ・カネル

制作国

アメリカ

 

ホラー映画、特にスプラッター系のホラー映画はいくつかお約束があるが、映画「キャビン」で描かれる「淫婦」「戦士」「学者」「愚者」「処女」の5タイプの登場人物がいて、そのうち「処女」は最後まで生き残るというのは有名。たいていのホラー映画は最後にヒロインが生き残り、スラッシャー・ヒーロー対決し、一部の例外を除いてたいてい生き残る。だからホラー映画のヒロインを見れば、「こいつは生き残るのか」と最初からネタバレしてしまう事になる。

しかし本作はヒロインが途中で変わってしまうので、そうしたお約束が通用しない。ただ、その「ヒロインの交代」が映画に必要かと言われれば、別にそんな事も無いのがなんとも難しいところ。

殺されるのがパリピだからそれほど心が痛まない

 

本作は、アート・ザ・クラウンと呼ばれる殺人ピエロが繰り広げる惨劇を描いたものだが、彼は監督のデイミアン・レオーネの過去の短編映画から登場しているキャラクター。監督からは思い入れが強いようだ。ただ、ジェイソンやマイケルなどはかなり早い段階で、その正体が明らかになるが、これまでアートの正体や詳細な設定が明らかにされず、いまだ謎めいたスラッシャー・ヒーローだ。この事についてレオーネは「正体を知りすぎない方が不気味さが増す」とミステリアスさを醸し出す為の演出だと語っている。その為本作でも彼は殺戮を繰り広げるだけで、彼自身移管する事は全く描かれない。そもそも、人間だったのかも不明だ。ただ、続編の「テリファー 終わらない惨劇」で、ヒロインの父親がアートの出現を予期していたかのような描写があるので、今後明らかとなる可能性もある。

キャラの深堀がほぼされていないので、没入できないのが欠点か

 

媒体によって異なるが、だいたい10万ドル位以下の製作費で、41万ドルもの配収を得ているのでこれはヒットと言っていいだろう。他にも円盤や配信もあるから笑いが止まらないほどのヒットだったはず。私は確かレンタル円盤で見たと思う。確かにゴア描写はすさまじく、特に“例”のシーンは凄いと思ったが、流血はあまり得意でない自分が見ても、特に嫌悪感を催すシーンはなかった。というのも、やはり低予算という事もあって、肝心のゴアシーンがあまりリアルに描かれていなかったりする。ただ、その安っぽさが如何にも80年代ホラーっぽくてなかなかいいアクセントにはなっている。本作がホラー映画ファンに刺さったのもそうした理由もあると思う。

ストーリーは冒頭のテレビのトークショーで、昨年のハロウィンに起きた「マイルズ大虐殺」で唯一の生存者、ヴィクトリアが取材に応じているが、これが事件の結果二目と見られないご面相になっている。

最初は冷静に対処していたものの、司会者のモニカから事件の犯人と目される殺人ピエロ、アート・ザ・クラウンが死体安置所から消得た事を知らされる。その後、モニカはヴィクトリアに襲われ同じように顔を破壊されてしまう。

それから映画は1年前のハロウィンの夜。タラとドーンはとあるダイナーで休んでいたが、そこに大きなビニール袋を持ったピエロの格好をした男が現れる。ピエロがトイレに入ると、怒った店員が追い出してしまった。どうやら汚い使われ方をしたようだ。

ピザを食べ終えた二人が外に出ると、車がパンクしていた。スペアタイヤが無いため、仕方なく電話で姉のヴィクトリアに連絡して迎えに来てもらうタラはこのパンクの原因はあのピエロではないかと疑っていた。トイレに行きたくなったタラは、害虫駆除の為閉鎖されていたビルに入れてもらい用を足すが、その間ピエロはドーンを拉致してしまった。

このおばさん、結局何だったのだろう?

 

用を足し終えたタラは、帰ろうとするが、ビルは鍵がかかって出られない。その前にピエロが出現し、何とか逃げようと奔走しますが、薬により昏倒させられる。目を覚ますと、そこにはパンイチで逆さづりにされたドーンがいた。そしてピエロは股からのこぎりで真っ二つに割いていく。かろうじて逃げ出しタラ。その頃外では、ヴィクトリアが到着しピエロの計略でビルの中に誘い込まれてしまう。ここから逃げ場のない女性と殺人鬼、アート・ザ・クラウンとの壮絶な戦いが始まる。といった内容なのだが、最大の見せ場はドーンの股割き。これがキャッチコピーの「ギコギコしちゃうぞ」に連なるのだが、確かに残酷高低予算のせいか、造形もチープな印象で流血も少なめな事もあって、そこまで残酷な印象はしない。

本作唯一のサービスカット。だけどエロさはほとんど感じない

 

本作は、この手のスラッシャー・ヒーローのお約束を微妙に外しているのが特徴で、冒頭で話した通りヒロインは途中で入れ替わり、一人生き残るものの彼女は冒頭で別の惨劇を引き起こしてしまう。更に、スラッシャー・ヒーローは刃物や棍棒などを使い銃器に手を出さないが、アートは拳銃で一人を射殺し最後は自殺する(もちろんこれは裏があるが)この“銃を使う”のは、かなり反則と言えかなり論議を呼んだようだ。

殺人ピエロと言えば「IT」のペニーワイズがいるが、彼も残忍な殺人鬼ながらも過去が描かれたりするが、本作のアート・ザ・クラウンはすべてが謎。そもそも人だったのかも不明で、まるで殺人を楽しんでいるかのようで、殺すことに特に理由は感じない。

ストーリーなど無いに等しく、ただただひたすら惨劇が繰り広げられるだけの映画なので、かなり観客を選ぶ映画。それだけに血を見ると気分が悪くなるような方は、見ないことをお勧めする。