タイトル アリゲーター(1980年版)

公開年

1980年

監督

ルイス・ティーグ

脚本

ジョン・セイルズ

主演

ロバート・フォスター

制作国

アメリカ

 

1975年に公開された「ジョーズ」が大ヒットしたことにより、様々な同類のアニマルパニック映画が雨後の筍の如く量産されたが、本作はその中でも78年公開の「ピラニア」と共に、頭一つ抜きで手評判のいい映画。ホラー小説界の巨匠・スティーヴン・キングが大絶賛したという事から、多少下駄を履かされている面はあるだろうが、今回見直してみて本作が良質なB級ホラーエンターテインメント作品であることが確認できた。

ちなみに脚本のジョン・セイルズは「ピラニア」の脚本も担当している。本作では少女が飼っていたワニの赤ちゃんが逃げ出したことで大事件が起きているが、「ピラニア」でも事件の発端を作ったのは女性だったが。昔女性から酷い振られ方でもした経験があるのだろうか。

ストーリーはこうしたアニマルパニック映画としては、王道を行く展開。ワニ園で小さなアリゲーターの赤ちゃんを買った少女マリサしかし、所かまわず出現するワニに怒った父親は、トイレに流してしまう。かつては歯を介護していた時、尿漏れパットを誤って流し詰まってしまい、業者を呼ぶ羽目になったがワニ君は生きたままよく流れたものだ。

12年後、アメリカ中西部にある小さな町で、何かに食いちぎられたようなバラバラ死体が発見される。ここで観客は「あのワニが成長したのだ」とピンと来るが、無論主人公で殺人課刑事のデイビッドは知る由もなく、地道な調査を行うが現場でワンちゃんの死体が見つかるが、その飼い主によると行方不明になった時はもっと小さかったという。そうこうしているうちに、またもや死体が見つかるが、現場で発見された服に見覚えがあった。それはデイビッドが犬を買ったペットショップの主人のものだった。捜査の結果、その主人は製薬会社に違法に犬を下ろしていた事が分かる。研究をしていたスレイドは、食糧不足解消のため成長を促進する薬を開発していたが、同時に代謝をも促進してしまう事から研究が頓挫している事を明かす。

仲間の警官と下水道を捜索中に、巨大アリゲーターに襲われ仲間の警官が命を落とすが、実はデイビッド。ここの赴任する前に相棒を死なせてしまい、その事から他の警官と組みのを嫌がられるようになっていた。そしてこの件で、署内で孤立してしまう。

爬虫類学者のマリサに話を聞くが、「そんな巨大なアリゲーターなんかいるはずない」と一笑に付される。このマリサこそ、かつて赤ん坊のアリゲーターを買っていたあの少女なのだが、無論本人はそんな事知る由もない。

その頃デイビッドに付きまとった記者が、下水道で惨殺され、残された写真から巨大アリゲーターの存在が明らかとなる。そこでデイビッドの指揮で殲滅作戦が繰り広げられるが、取り逃がしたうえに、アリゲーターは地上に現れ一人の警官を食い殺してしまう。

その頃製薬会社は真相に迫ろうとしているデイビッドを煙たがり事件から外すと、代わりに狩猟の達人のブロック大佐が指揮を取る様になる。クビになったデイビッドだったが、いつの間にかマリサと良い仲に。しかし、ブロック大佐はアリゲーターに食い殺され、署長自ら指揮した作戦も大失敗。そこでデイビッドとマリサは警察署の証拠保管庫にあったダイナマイトと時限装置を使って、アリゲーターを退治することを決意する。

前述のとおり王道を行く展開なので、特に意外性もなく物語は進む。その為現代だと物足りなさを覚えるかもしれないが、あまりより道もせず複雑な人間関係もないのでサクサク見る事が出来る。そしてアリゲーターの造形だが、これはかなり良くできていると言っていい。無論時代が時代だから如何にも張りぼて感があるが、カットによっては本物と見まがうほど出来が良い。不法投棄を行っていた製薬会社の社長の娘と、開発責任者のスレイドとの結婚パーティーの会場に 期待通りに巨大アリゲーターが出現し、阿鼻叫喚の地獄絵図が繰り広げられるクライマックスは、「もっと殺れ!」と巨大アリゲーターを応援すること必至。巨大な顎で片っ端から食い殺し、尻尾をつかってガッツンガッツン叩き潰していく姿に興奮は極致に達する。とはいえ、CGのない時代だけに全体的に今から見るとスローモーで、会社の社長は逃げられた気がしない事もないが、模型のワニでよくここまで描いたと拍手を送りたいほど。

本作は製作費175万ドルに対して、興行収入650万ドルと大ヒットを記録。しかし意外な事に続編が出来たのは10年後で、設定を共有するだけの完全なオリジナルストーリー。しかもかなり不評だったのでシリーズは打ち止めとなった。2.3年後に続編を作っていれば、かなりヒットが望めただけにちょっと残念な気がする。