タイトル ゾンビマックス!怒りのデス・ゾンビ

公開年

2014年

監督

キア・ローチ=ターナー

脚本

キア・ローチ=ターナー トリスタン・ローチ=ターナー

主演

ジェイ・ギャラガー

制作国

オーストラリア

 

ゾンビが蔓延した世界を舞台に、生き残った人々の壮絶な戦いを描いたオーストラリア製アクションホラー映画。オーストラリアのアクション映画と言えば、「マッドマックス」が頭をよぎるし、いかにもな邦題から便乗企画と思うかもしれないが、「マッドマックス 怒りのデス・ロード」の公開は本作より後。ただ、オリジナルの「マッドマックス」の影響は受けている様に感じた。ゾンビが蔓延し荒廃した世界が舞台である事や、ある理由から石油が欠乏した世界などは、明らかに「マッドマックス」を意識している。ただ、これまでのゾンビ映画と一線を画する斬新な設定や、スピード感あふれるストーリー展開などが人気を呼び、世界各地の映画祭で話題を集める事になる。ちなみに製作費は16万ドルに対して興行はオーストリア国内で10万ドルと厳しい結果なのが、「フュリオサ」と似ているのは何とも…。

実を言うと本作は感想を書く気はなかったが、面白くて夢中になってしまい、ついつい書くことになってしまった。

このイカレタ格好が最高にクール

 

突如、謎の彗星群が地球に降り注ぎ、その影響を受けた人類はほとんどがゾンビと化すという展開は、SF映画の古典的名作「人類SOS」そっくり。だからと言ってパクリ感がしないのも凄いところ。自動車整備工のバリーは妻アニーと娘ミーガンと就寝中にゾンビの出現を受けて急いで車で脱出。普通なら嚙まれなければ大丈夫だが、本作のゾンビは空気感染するので、みんな防護マスクをつけているのだが、オーストラリアの家庭ではどこでも防護マスクを持っているのか。と思ったが、自動車整備工なので薬物から守るために置いているのかもしれない。

ヒロインのビアンカ・ブラッドリーの熱演も魅力。続編ではさらにパワーアップ

 

しかし途中でアニーとミーガンはゾンビ化したため、やむなく二人を手にかける。失意から自殺願望を持つが、通りかかったチョーカーに助けられ行動を共にする。途中で車がエンコし、歩いているところをベニーにチョーカーは誤って殺されてしまう。そして今度はベニーと行動を共にする。

その頃バリーの妹ブルックは、ガレージでゾンビに噛まれた友人らに追われている最中に、突然現れた武装兵らしき二人に捕らえられて気絶する。目が覚めるとブルックは身体を拘束されており、マッドサイエンティストによる拷問まがいの実験台にされてしまう。いやこの実験の目的が良くわからなかったけど、どうやらゾンビに耐性のある人間を使って超人兵士を作ろうとしているようだ。ただ、世界が崩壊しようとしているのに、そんな兵士をだれが作ろうというのだろうか。

何がやりたいのかイマイチわからんが、バエるからいいか

 

フランクたちが立てこもるガレージにたどり着いた二人は、そこで彗星の影響で石油が燃えなくなっている事を知る。そしてゾンビの血液が、ガソリンの代わりになる事も偶然見つけ、外に放置してあるトラックを回収すると、装甲を施して後部に捕らえたゾンビを繋ぎ、ブルック捜索の旅に出かけるのだった。

 

途中で旅の仲間たちが死んでいくのだが、悲壮感はなく最後までドライなまま物語はサクサクと進んでいく。その為深みはないが、そもそもゾンビが出てくるアクション映画を見に来る観客で、そんなものを期待しているものはいないだろうから、この割り切りは重要。邦画には、この割り切りが出来ていないものが多い。

前半で愛する家族はゾンビになるという、ヘヴィーでお涙頂戴の部分はさっさと済ませ、そこからガレージに立てこもりから、脱出するまでぐいぐいと描く。そしてゾンビとの戦いはだいたい中盤で終わり、後半からは、謎の組織に捕らえられたブルックを救出してからの脱出行とテンポよく進むので飽きさせない。立てこもるものはすべてむさくるしい男ばかりにし、ヒロインを主人公の妹にすることで、恋愛要素意をバッサリ切り落としているのも、物語を分かりやすく簡素にする効果がある。そして登場人物たちが皆、キャラが濃ゆく魅力的だ。そして死んでも、割とドライに描くので物語のテンポを崩さない。ただ、欠点が無いわけではない。

本作で気になったのが、やはりあの特殊部隊?とマッドサイエンティストの目的で、ゾンビに耐性があるA型RH-でゾンビへの対抗手段を考えているのだろうが、何の研究をしているのかよくわからん。ゾンビの血をブルックに注射してどうしたかったのか。しかもゾンビが出現してその日のうちに出現していて、あらかじめ準備をしていたとしか思えないが、そのバックボーンが不明。あまり深く考えてはいけないのだろう。ただ、それ以外はかなり面白かった。世紀末世界の演出に、石油が使えなくなりゾンビの血が石油の代わりになるというのは面白い。しかもここは「マッドマックス 怒りのデス・ロード」でウォーボーイズが生きながらえる為には、健康な人間の血液が必要という設定と酷似している。公開はこちらが先だが、まさかパクられたとは思えないが偶然の一致にしては奇妙過ぎる。

そして本作の最大の魅力はブルックで、美人でセクシー。そして、ゾンビの血によってゾンビを操る能力を得るというのが面白い。終盤で仁王立ちになってゾンビを操る姿は、実にカッコいい。

舞台のほとんどはガレージと森の中というのは、16万ドルという低予算に恥じないが、それを感じさせないほど面白いし、ゾンビ映画の新境地を開いたといってもいい映画。決して正座して見るようなものではないが、暇つぶしに見るのなら予想以上の満足感を得る事が出来ると思う。