タイトル 告白 コンフェッション

公開年

2024年

監督

山下敦弘

脚本

幸修司 高田亮

主演

生田斗真

制作国

日本

 

本作の予告編を見た時「無茶苦茶面白そうだなあ」という感想を持ったが、それだけに売予告編がピークという事態に陥るのではないかと、ちょっと心配になった。その後、上映時間が74分という事を知り、少々嫌な予感を抱くことになる。ただ、福本伸行が原作、かわぐちかいじが作画を手がけた漫画「告白 コンフェッション」を、生田斗真と韓国のヤン・イクチュンのダブル主演で実写映画化したワンシチュエーションスリラーという事で、「このメンツならば、あまり酷い事になっていないだろう」と自分を奮い立たせて映画館に向かったが、何とも微妙な感想を抱くことになる。

死ぬと思ったので告白って、ありそうでないと思う。

 

主人公の朝倉と韓国人のジヨンは、大学時代の登山部の仲間。その頃同じ登山部の仲間、さゆりを亡くしてい以来、さゆりを偲んで登山する事になっていた。今年も二人で登山に出掛けるが、途中でジオンが怪我をしかつ天候悪化で山中に取り残されてしまう。絶体絶命の状況だったが、その際ジヨンは「さゆりは俺が殺した」と告白する。驚愕する浅井だったが、少し吹雪が止んだ時に近くに山小屋を見つける。そこに避難する事が出来一息つく二人。

薪ストーブもあり何とか助かりそうだったが、浅井は先ほどのジヨンの告白が気になっていた。自分が死ぬと思っての告白だっただろうが、助かる可能性が出てきた現状、果たしでジヨンはどう思うだろうか。ひょっとしたら口封じのため殺そうと思っているのではないのだろうか。そうなると、彼の一挙手一投足が気になる。

最後に薪を尖らせて武器を作るが、それならなぜ落としたシャベルを拾わない

 

そんな時、ジヨンが無くしたと言っていた携帯を持っている事が判明。彼は、ふもとと連絡を取っていたが、その際「一人です」と答えていた。その事をジヨンに尋ねても、「負傷者は一人だと答えた」というばかりではっきりとしない。

お互いの疑心暗鬼が募り、ついに決定的な亀裂となるのだった。というのが本作の粗筋で、特に新味があるわけではなく、割と定番のストーリーだが、閉鎖されら場所に自分を殺そうと思っているかもしれない男と閉じ込められるという、ある意味成功が約束されているストーリーだ。ただ映画を見終わった感想を素直に言うとすると、「何とも微妙」と言ったところ。

この二人が同年代と言われても...

 

前半はお互いの心理劇という事で、それなりに盛り上がりそれなりに見ごたえあったが、後半はついに浅井とジヨンが直接対決となる。この部分がイマイチ盛り上がらない。まず浅いとジヨンは同年代という設定だが、演じる生田斗真とヤン・イクチュンは9歳異なるし同世代に見えない。それに多少ヤン・イクチュンの方が体格がいいものの大きな差が無いし、足を怪我しているというハンディがあるので、彼に怯えて生田斗真が逃げ回る事にリアリティがない。実際何度かジヨンを倒し武器が転がっているのに、スコップや鉈等の得物を取ろうとしていない。それに、足が悪い割にはありえないほどの速さで階段を登ったりする。一応浅井にも高山病というハンディが用意されているが、映画の中ではお互いを対等にする程の役割を果たしていない。ただそれ等の事にはすべて理由があるのだが、見ている時はその理由が明らかでないので没入するのを阻害している。この手の映画は観客に考えさせては駄目なので、観客をぐいぐいと引っ張っていかなくてはいけないのに、中盤から後半にかけてテンポが悪くなって色々と考える隙を与えている。折角80分弱と短くしているのに、これはもったいない。

決してつまらないわけではないし、事実面白い部分もあるのだが、総じて面白いとは言えない内容。というより、私は本作のオチは途中で気が付いた。どこで気が付いたかと言えば、中盤あたりでジヨンがトイレ?に行った時、壁にかかった彼の上着から携帯を探していたのだが、ずっとトイレの扉を見ていたのに次のカットで、すぐ後ろにジヨンがいたカット。明らかにジャンプ・スケアで怖がらせる事を狙っているが、このシーンの不自然さから細かいところが気になるようになった。確かに本作は現実とは思えない不自然なカットが多い。ひょっとしたらホラー映画を狙っていたのかもしれないが、ワンシチュエーションスリラーには全く必要ない。そしてホラー演出を多用した為か、テンポが悪くなっている。

確かにこの子の為なら殺し合うかもしれないが、実はそんな話ではない

 

原作は未読だが、ネットで5話まで無料で見る事が出来たので見てみたが、かなり違っている部分があり、それが映画にいい影響を与えている部分もあるが、足を引っ張っている部分も多い。また、原作と一番の違いは、原作だと犯人は石倉という日本人だが、映画はリュウ・ジヨンという韓国人留学生となっている。これにより中盤の彼の感情が読みにくくなり、不穏な空気を醸成する事に役立っているが、その一方で「なぜ留学生が卒業後も10年以上日本にいるのか」という疑問が出てくる。この件は、映画を見る限り説明されていない。ジヨン日本語能力で、日本で就職するのは難しいと思う。ただ、主に韓国と取引をやっている会社ならあるかもしれないが、この件に関する説明は一切ない。

もう一つは原作だと終始浅井によるナレーションが入り、彼の心理描写が事細かに描かれているが、映画は第3者視点で描く形になっている事から、心理描写が十分とは言えない。これは映画という媒体から仕方ないのだが、それなら映画も事件後に浅井が誰かに語るような形にすればいいと思うが、それはラストシーンに直結するので出来ない事情がある。最後まで読んでいないので詳しい事は不明だが、本作はラストも大幅に改変がされているようだ。

本作の改変は、すべてヤン・イクチュンが出演するための改変なのかもしれないが、その改変が映画の完成度を高めるように作用していないのが問題。確かにヤン・イクチュンも生田斗真もその演技は素晴らしく、見ごたえがあった。それだけに、もう少しやりようがあったのではという気がしてならない。