タイトル ソウ

公開年

2004年

監督

ジェームズ・ワン

脚本

リー・ワネル

主演

ケイリー・エルウィス

制作国

アメリカ

 

本作は、監督は長編映画デビューとなるジェームズ・ワン、脚本はワンとリー・ワネル。

主要な舞台を地下の浴室に限定したこともあって、製作費は120万ドルと、この手の映画にしても低予算だが、全世界で1億ドル以上の興行収入を記録。当時、「スクリーム」(1996年)以降では、最も収益性の高いホラー映画のひとつとなった。その結果シリーズ化され、10本の映画が作られることになる。

本作でシグソウを演じたトビン・ベルの出番は、中盤で寝ているシーン以外は、ほぼラストのみだが、そのインパクトの強さから大ブレイク。その後、多くのホラー映画に客演することになる。

映画の冒頭は、主人公のひとり、水の張られた浴槽の中にいたアダムが、栓が抜けて水が抜けていくのと同時に目覚めるシーンから始まる。そこは、汚れた広いバスルームで、アダムの片足は鎖で繋がれ、部屋の反対側には同様に鎖で繋がれた男、ゴードンがいた。二人の間には、後に犯人から拳銃自殺したと説明される遺体があった。

二人はポケットにカセットテープが入っているのに気づく。ゴードンのポケットには他に銃弾一つと、何かの鍵があった。カギは二人の鎖のカギには合わず、死体が握るテープレコーダーで、二人はテープを再生する。

内容はそれぞれへ宛てたメッセージでゲームをしようと囁くのだった。アダムは「この場で死ぬか、逃げ出すか試す」、ゴードンは「時計が6時を回るまでにアダムを殺せ、そうでなければ彼の妻と子が死ぬ」というもの。さらにゴードンの方には「Xに宝が隠されている」「ハートに従え」という謎めいたメッセージが続くのだった。アダムのそばのトイレタンクにハートのマークがあり、中には2組の糸鋸が入っていた。しかし糸鋸で鎖を着る事は不可能だった。

ゴードンは最初は沈着訂正に事態に対処していくが、切羽詰まり次第に狂気を帯びていく。このゴードンを演じるケイリー・エルウィスの演技は見事。対するアダムは最初こそパニックに陥るが、その後は比較的冷静になる。終盤は明らかに狂気に陥るゴードンを叱咤激励する事もある。演じるリー・ワネルはオーストラリア出身の俳優で、脚本もこなす。本作でもジェームズ・ワンとともに、脚本を担当している。この二人の対比が面白い。

実はゴードンには犯人の見当がついていた。それは世間を騒がせていた命を軽んじる人間を拉致し、彼らに命を懸けたゲームを仕掛ける謎の人物だった。ただ、必ず助かる術を用意しているのが特徴だった。実は5ヶ月前、自分の所持品がジグソウの犯行現場に落ちていたため容疑をかけられていた。その時間愛人と密会していたことからアリバイが成立し容疑は晴れたが、ジグソウ逮捕に執念を燃やす刑事のデヴィッド・タップは、その後もゴードンを犯人とにらんで付きまとっていた。

刑事デヴィッドを演じるのはベテランのダニー・グローヴァー。ジグソウをゴードンと思い込み、警察を辞めた後もしつこく付きまとう。アランがこんな目に合うのは、ひとえに彼のせいと言っても過言はない。

時間は刻一刻と過ぎ、次第に焦燥に駆られる二人。そうした中、それまで初対面と思っていた二人だったが、妻からの電話でゴードンはアダムが自分をつけ回していた事を知る。と言うのが大まかな粗筋。

本作の魅力は、その周到に練られた脚本にある。ジグソウの目的は、被害者に生きる喜びを感じさせること。ジグソウ自身は末期癌で余命いくばくもない状態なので、被験者にそれをもたらすため、極めで残酷な罠を仕掛けて、被害者の生きる力を試そうとする。それは、狂気にも似た残酷な手段で、心身に何らかの傷を残すものだが、絶対脱出不可能と言うものではなく、「生きたい」と言う狂気にも似た願望を持っていれば、必ず脱出できるようになっている。その為か、映画中盤に登場する唯一シグソウの罠から脱出できたアマンダは、麻薬中毒を克服できてシグソウに感謝すらしている節がある。

 

そして助かる手段が序盤にさりげなく登場するが、被害者自身によって破棄されてしまっていたという落ち。

二人を見守っていた男。誰もがこいつこそジグソウかと思っていたが、実は彼も被害者だったというところは思わずうならされた。

そして本作の魅力を語る上で外せないのが、実はシグソウは身近にいたというラストシーン。中盤あたりで「ジグソウはいつでも特等席で見ていた」と言うセリフが、伏線となっていたわけで、このシーンでは当時「そうか!この手があったか‼」と思わず鳥肌が立つほどの衝撃があった。

ご都合主義的に突然出てくる新設定もなく、丁寧に伏線を回収していて、ミステリーとしてもよくできている。本作の成功を受け、ジェームズ・ワンは「死霊館・シリーズ」や「インシディアス・シリーズ」等、見ごたえのあるホラー映画を次々と発表。活躍はホラーに限らず「ワイルド・スピード SKY MISSION」や「アクアマン」を監督している。しかしやはり主要フィールドはホラーだと思うので、今後も見ごたえのあるホラー映画を期待している。