タイトル シャッター

公開年

2008年

監督

落合正幸

脚本

ルーク・ドーソン

主演

ジョシュア・ジャクソン

制作国

アメリカ

 

2004年のタイの映画「心霊写真」は世界中でヒットし、その内容から衝撃を与えた。それをハリウッドが見逃すはずはなく、本作はそのハリウッドリメイク作品である。オリジナルはタイを舞台にし、キャストも退陣で占められていたが、リメイクにあたり、舞台はタイでなく日本に変えられている。そして、オール日本ロケが行われ監督は「感染」「催眠」の落合正幸が抜擢と、完全にタイはどこかに消えている。

これは想像だが、2006年からタイではタクシン派と反タクシン派との間で騒乱状態となり、2006年には軍事クーデターまで起きている。その事からタイのロケを断念し、映画では火葬が重要な要素となっているので、日本に切り替えたのではと想像している。アメリカでも火葬は増えているが、まだ一般的ではないし映画の舞台となるバックグランドも、異なるとの判断なのだろう。この判断自体間違っていないし、800万ドルの製作費に対して、興行収入が4800万ドルと大成功を収めたから、間違った判断ではなかったということだ。

ただ、批評家からの評価は低くRotten Tomatoesだと観客のスコアも33%と壊滅的だ。この辺りは、死生観などの文化の異なる対象をリメイクするときの難しさを表しているのかもしれない。

映画は原作通り結婚式から始まるが、本作だと主人公カップルが結婚するところが異なる。ベンとジェーンの二人はアメリカで結婚式を挙げ、新婚旅行を兼ねて日本にやってくる。ベンは写真家で、東京には親友のブルーノが彼を雇い仕事を依頼したのだ。この辺り、結構設定に無理を感じる。仕事がてらに新婚旅行に行く人は、仕事人間と言われる日本人でもそうはいないと思う。

富士山麓のコテージに向かう二人は、そこで人を轢いたが事故の痕跡はない。原作と違いちゃんと警察を呼んで調べてもらうが、それでも何も見つからず、そのままコテージに向かうのだった。原作だと轢き逃げとなるので変更されているが、それ故今後の二人は、罪悪感を持たない展開となる。

しばし新婚旅行を満喫する二人だが、奇妙な事にベンが撮った写真には白い影のようなものが映っていたが、あまり気にしない。東京に移動しベンはブルーノからの依頼の仕事をこなし、ジェーンは一人で東京見物。ベンは日本語が話せるが、ジェーンは全くダメ。新婚なのに愛する妻を言葉の通じない異国の町に放り出す、ベンの神経が理解できない。東京滞在の為にブルーノが二人に用意したのは、エレベーターも付いていない古びたビルの1室で、仕事場も兼務している。広いもののあまり快適そうに見えないが、二人は「広い!」とご満悦。アメリカでは古さよりも広さを重視するのだろうか。このビルには二人しか住んでいない様子で、1回下には古びた荷物がいっぱい押し込まれている。しかし、問題が発生する。折角撮った写真に白い筋が入っていたのだ。

何とか首は免れ取り直すことにする。また日本に来て原因不明の肩こりに悩まされる。この辺は原作と同じで、体重計をみて看護士がギョッとするにも同じ。しかし、今時あんな古い体重計を使っている病院はあるんだろうか。そして、白い筋が伸びている、ブルーノの会社の部屋を調べに来るジェーンは、そこでベンと写真に納まるメグミという若い日本人女性の事を知る。二人は付き合っていたが、別れようとするがなかなか応じてくれず、ブルーノとアダムに手伝ってもらっていた。このメグミが原作のネートに相当する人物で、奥菜恵が演じているが、物静かな女性と言った感じで、ネートの持つ異様さは感じられないのが残念。そして、ブルーノに、もう一人メグミを別れさせるのを手伝ったアダムも自殺。

この後、メグミの実家を訪ね彼女の母親を諭して葬式を挙げる所や、火葬の直前にメグミの幽霊が出没するところ。そして、すべてが終わったと思ったら、衝撃の真相が明らかとなるところは原作と同じ。ただ、原作はジェーンは最終的にタンの見舞いに訪れるが、本作ではそのままというところが異なる。

粗筋にも書いたが、無理やり日本を舞台にしたせいか、色々と変なところが多いし、日本人同士が英語話すのはもうギャグとしか思えない。ミステリーやサスペンス要素が強く、見てもさほど怖くないのも欠点と言えるだろう。原作の設定を色々と変えているせいで、怖さが希釈されたように思える。原作は敬虔な仏教国であるタイで、「因果応報」を描いたものだからこそ、怖さが出ていたと思う。「リング」が成功したのは、呪いの拡散という分かりやすいテーマだったからで、本作のように、異なる文化的なバックを背景とする作品は、元々の設定を練り直す必要があると思う。ただ、Rotten Tomatoesの評価ほど酷いとは思わないし、気楽に楽しむにはいいと思う。