タイトル 心霊写真

公開年

2004年

監督

パークプム・ウォンプム バンジョン・ピサンタナクーン

脚本

パークプム・ウォンプム バンジョン・ピサンタナクーン

主演

アナンダ・エヴァリンハム

制作国

タイ

 

タイで社会現象を巻き起こすヒットを記録したホラー映画で、タイでの興行成績は1億998万バーツに達した。また、世界30カ国で公開されシンガポールでは3,300万人の観客動員を記録。韓国ではボックスオフィスのトップ5にランクインし、最大1億バーツの興行収入を上げた。日本では小規模な公開だったが、ホラー映画ファンを中心に熱狂的なファンを獲得。配信などでも好評を博する。

邦題は「心霊写真」と直球どストレートだが、原題は「ชัตเตอร์ กดติดวิญญาณ(シャッター・魂のプレス)」。なお、2008年にはハリウッドで「シャッター」としてリメイクされたが、「呪怨シリーズ」等で知られる落合正幸が監督を務め、舞台が日本となって奥菜恵も出演しているが、何故タイが舞台とならなかったのは不明。

定石通りのイントロ。本作は変わったことはしてないのに怖さが際立っている

 

衆人の結婚式に参加した写真家のタンと、その恋人の女子大生ジェーン。帰り道でジェーンが運転する車が若い女性を轢いてしまう。動揺したタンはジェーンを急がせ轢き逃げしてしまった。動揺を隠せない二人だったが、奇妙な事にこの件がニュースになる事はなく、事故現場に行っても自分がぶつけた看板の損傷はあるものの、人が惹かれた痕跡はない。その為次第と元の生活に戻っていく二人だったが、タンが写した写真に奇妙な白い影が浮かび上がる様になる。知人の写真屋に相談しても「露出のミス」としか言ってくれない。

事故以来、タンは首の激しい凝りに悩まされるようになり、病院に行っても原因は不明。ただ、体重計に乗ると丸でもう一人乗っているかのような、不自然な増え方をするようになる。

主演のアナンダ・エヴァリンハムは母はラオス人で父はオーストラリア人のハーフ。父親は実際にフォトジャーナリストをしている。2010年までオーストラリア国籍だったが、その後タイに国籍変更している。本作の出演をきっかけに人気俳優となり、現在に至るまで精力的に活動している。

ヒロインのナッターウィーラヌット・トーンミーも、本作で人気となる。女子大生の役だが、実際に彼女はチュラロンコン大学国際関係学科を卒業し、ラムカムヘン大学で政治学と国際関係学の博士号を取得している才媛。

そんなある日、タンは写真を現像しているとそこにジェーンがやって来たが、かかってきた電話に出るとジェーンが話しかけてくる。驚いて振り返るとそこには誰もいなかった。やがて、結婚式に出席した新郎と友人3人が次々と自殺したことが判明する。

ジェーンは、タンが写した自分の大学の写真に写る、白い影がとある教室を示している事に気が付き、そこに行ってみると、部屋で怪奇現象が起きるとともに、飾ってあった写真にタンと一緒に映る若い女性を見つけるが、その顔は自分が轢いた女性だった。そこことをタンに問い詰めると、彼女の名はネートで一時彼女と恋仲だったが異様さに怖くなり別れたと告げた。その時手伝ったのが結婚式に出席した3人だった。タンの説明に少々納得がいかないものの、ジェーンはタンを誘いネートの家に向かう。ネートの友人というと、愛想よく出迎えてくれた母から彼女はまだ生きていると伝えられ、驚愕する二人。しかし、彼女の部屋に行くと、そこにはミイラ化したネートの死体があった。母親を説き伏せ葬儀を行うが、火葬されるまでの間にタンの前にネートが姿を現すのだった。といった内容で、タイトルを見て想像したのは、一枚の心霊写真をめぐる怪奇譚かと思ったら、意外と心霊写真そのものはそれほど重要でない。むしろラストに登場する心霊写真でない写真の方が重要で、その意味で原題の「ชัตเตอร์(シャッター)」というのは、絶妙なタイトルだと分かる。

最近のJホラーは直接関係ない人まで景気よく死ぬ話が多いが、これは「呪怨」や「リング」の様な呪いが伝染していく話が人気だったことに由来すると思う。ただ、もうそうした話は飽きられていて、じっくりと都市伝説や怪異を描いた方が人気があるのではないかと思うが、なかなか日本で頭を切り替える事が出来ないようで、最近の「ミンナノウタ」や「忌怪島/きかいじま」「禁じられた遊び」等のように、景気よく人が死ぬ話が量産される傾向がある。

本作の恐怖演出はジャンプスケアやこけおどしなど、つくりは教科書通りで既視感のある演出ばかりなのに、本作は無茶苦茶怖い。これは、非業の最期を遂げた被害者の復讐という点に絞り、次第にその死の真相が明らかとなるという展開。そしていったん呪いは終わったと思わせて最後のどんでん返しと、丁寧に教科書通りに作っている事が恐怖をそそるのだろう。

使い古された手法でも、丁寧に描けば面白くなるのだ。それだけ最近のJホラーは作りが雑で、それを誤魔化すためより過激に、派手になって行っているのが観客に飽きられているのだと思う。その点では、今後Jホラー復活の為の道しるべとなっているのではないだろうか。

どこか異様なネートを演じたアチタ・シカマナだが、素顔はこんなに綺麗

 

余談だが、終始不穏な緊張感に溢れた本作だが、ワンシーンだけギャグが挟み込まれている。それがちょうど真ん中あたりで、観客の息抜きにはちょうどいい塩梅となっている。この辺りの緩急のつけ方の学ぶべきだと思う。