タイトル ナボンガ

公開年

1944年

監督

サム・ニューフィールド

脚本

フレッド・マイトン

主演

バスター・クラブ

制作国

アメリカ

 

本作は、一部の好事家から「史上最悪のゴリラの着ぐるみ映画」と呼ばれ、カルト的な人気を得ているアドベンチャー映画。これも一部からモンスター・パニック映画と評されているものの、本作に登場するゴリラはゴリラであって、ゴリラ以外の何者でもない。特に巨大という訳でも、特殊能力を持っているという訳でもない。しいて言えば、美女にメロメロで彼女を命がけで守るといったところで、「キングコング」が近いかもしれないが、オリジナルでは結局コングの片思いに終わったが、本作では心を通わせている。ただ、美女によって命を落とすのは同じだが。

資料によっては原題が「NABONGA. THE GIRL AND THE GORILLA(ナボンガ 少女とゴリラ)」となっているのもあったが、当時のポスター等で確認する限り、原題は「NABONGA」である様だ。また邦題に「ゴリラ姫ナボンガ」というのもあるが、ヒロインの名前はドリーン。ちなみにタイトルの「ナボンガ」は、このゴリラの名前でも、ヒロインの名前でも、地名でもなく映画の中ではその正体はついに明らかとされることはなかった。

映画は、ストックウェルが娘を連れて、嵐の中を軽飛行機で逃走するところから始まる。彼はエジプトの銀行員だったが、巨額の横領が発覚し脱出するため飛行機をチャーターしたのだったが、案の定というか、ジャングルに不時着。ストックウェルと10歳の娘ドリーンは消息不明となった。この時ストックウェルは持っていた宝石類をパイロットに見られ、殺している。一方何も知らないドリーンは、探検隊によって傷ついたゴリラを発見し看病する。

数年後、墜落現場の周辺ではゴリラ操る白人女性の事が話題となっていた。その事から彼女は「白い悪魔」と呼ばれていた。

カール・ハースト隊長率いるアメリカの調査隊が現地を訪れるが、その中のレイは白い魔女の事に興味を示し、夜のうちにガイドのトボと一緒に白い魔女の住処へ旅立つ。朝になり、レイがいなくなったことに気づいたカールは愛人のマリーと一緒にあとを追う。

大方の予想通り、白い魔女の正体はドリーン。父は既に他界し残された宝石を守って、ゴリラのサムソンとともに仲良く暮らしていたのだ。実はレイの父親はストックウェルが勤務していた銀行の頭取。ストックウェルの横領が発覚し、その罪を押し付けられて自殺していた。その事から、彼は行方不明となった横領した金を探して、それを被害者救済に当てようとしていた。レイはゴリラのサムソンに襲われそうになっているところをドリーンに助けられる。ジャングル育ちのドリーンはレイの言うことが理解できず、またサムソンはドリーンが彼に好意を寄せているようなので、嫉妬して気の休まる暇がない。

そんな時、カールとマリーが二人の元に忍び寄っていた。

主演のバスター・クラブは元水泳の選手で、1932年のロサンゼルスオリンピックでは400メートル自由形で金メダルを獲得した。ジョニー・ワイズミュラーと似た経歴だが、バスターもターザンを演じた事がある。そればかりか、フラッシュ・ゴードンやバック・ロジャーズなどヒーローを演じている。本作公開時は人気が落ちている訳でなく、「ビリー・ザ・キッド・シリーズ」に主演していた。そんな彼が本作に出演したのは謎としか言いようがない。

ヒロインは本作がデビュー作で、公開当時まだ18歳のジュリー・ロンドンが演じた。美貌とスタイルの良さを生かして、終始豹柄のワンピースというセクシーないでたちで目を引くが、女優としては大成せず、後にハスキーボイスを生かして歌手に転身。こちらは成功している。

本作の評価は、「史上最悪のゴリラの着ぐるみ映画」等と呼ばれていて、何かと悪名高いゴリラの着ぐるみだが、映画を見る限りモノクロで画面の暗さもあったし、中の人の熱演もあって、少なくとも見るに堪えないほど酷くは感じなかった。また、ヒロインのジュリー・ロンドンの演技はともかく、美貌と当時まだ10代だったとは思えないセクシーさで、見る者を魅了してしまう。ただそれ以外の要素はかなり微妙。8年間もジャングルで過ごした割りには、ちゃんと髪がセットしてありメイクもばっちりなのは置いておくにしても、ヒロインの本格的な登場が物語半ばを過ぎたあたりからと、構成に難がある上に、いまいちストーリーの歯切れがよくない。それに主人公のレイは、ヒーローなのにあまりカッコいい要素が無く、没入できないのも致命的で、最後は結局ゴリラに助けられるなど、あまり活躍らしい活躍が無い。むしろ振り切ってZ級を極めるような内容だったら、違った意味で評価されていたかもしれない。その意味では、ひどく中途半端な映画と言っていいだろう。

これは本作と直接関係ない話だが、私が本作を見たのはAmazonプライム。何故かここはクラシカルなB級ホラーやモンパニがかなり配信されているが、中には「どこで見つけたんだ?」と思いたくなるような、かなりレアな映画もあったりする。いまだに配信されているところを見ると、それなりに需要があるのだろう。ホラー、モンパニ映画好きにはこうした映画は貴重。Amazonプライムには東映オンデマンドだのヒーローチャンネルだの、東宝名画座等々、色々なチャンネルが有料でサービスを提供しているが、いっそこうしたパブリックフリーのB級ホラー・モンパニ・SFを集めたチャンネルを作って配信してはどうだろう。パブリックフリーだから、余り予算はかからないはずだ。料金だが、他の有料チャンネルと同じぐらいの1000円未満だったら需要はあると思う。