タイトル ゴジラ×コング 新たなる帝国

公開年

2024年

監督

アダム・ウィンガード

脚本

テリー・ロッシオ サイモン・バレット ジェレミー・スレイター

主演

レベッカ・ホール

制作国

アメリカ

 

2014年の「GODZILLA ゴジラ」から始まったハリウッド版「ゴジラ」シリーズと2017年の「キングコング:髑髏島の巨神」の世界観をクロスオーバーさせた「モンスターバース」シリーズの通算5作目だが、最近シリーズは尻すぼみの様な状態。

興行成績で言えば

「GODZILLA ゴジラ」 5億2000万ドル

「キングコング:髑髏島の巨神」 5億6000万ドル

「ゴジラ キング・オブ・モンスターズ」 3億8700万ドル

「ゴジラvsコング」 4億7000万ドル

予告編見たら、てっきり「キャッキャ!うふふ」かと思ったら

 

以上のように「髑髏島の巨人」をピークに低落傾向になり、テコ入れも兼ね、ゴジラとコングの夢の共演を実現させた「ゴジラvsコング」も。思ったほどの上昇は見せなかった。本作の製作費が1億3000万ドルから1億5000万ドルと、歴代最低だったことから本作で「モンスターバース」は打ち切りになるのでは?という声も囁かれたが、本作が公開されるや北米を始め世界で大ヒットを記録。初週末3日間における世界累計興行収入は 1億9,400万ドル。北米では3,861の映画館で封切りを迎え、8,000万ドル を叩き出した。現時点での推移を見ると、今年最高のヒット作「デューン砂の惑星PART2」を上回るという予想が出ている。

その理由については、前作「ゴジラvsコング」からアダム・ウィンガードが監督に就いた事から作風が一新され、昭和後期のゴジラ・シリーズやガメラ・シリーズに見られる“怪獣プロレス”色が前面に出る事になったことが大きいと思う。「ゴジラ-1.0」や「シン・ゴジラ」の様なリアル寄りの真面目な怪獣映画が好きな人には不評だったが、思い切ってエンタメ寄りにしたことで、新たなファンを獲得したのだと思う。それに「ゴジラvsコング」はコロナ禍での公開という点も加味しなくてはいけない。ともかくまだ決定ではないものの、続編は間違いなく検討されているのは確実なようだ。

余談だが、原題は「Godzilla x Kong: The New Empire」と、珍しくまんまの邦題となっている。

ゴジラとコングによるメカゴジラとの壮絶な死闘に決着が着いてから3年後、ゴジラは地上の怪獣たちの脅威を抑え込み、コングは本来の故郷である地下空洞で暮らしていた。しかしコングは、未だ同族と出会う事が出来ず、孤独な日々を送っている。そしてもう一つ、コングを悩ませていたのは虫歯の痛みだった。

そんな中、地下空洞から謎の波長の信号が感知され、ジアもそれを感知し、彼女が描いた絵はその信号の周波と酷似している。アイリーンは陰謀論者のバーニーに意見を求め、それが地下空洞からゴジラに発信されている救援信号の可能性が浮上する。おりしも虫歯の痛みに耐えきれずゴジラが地上に出てきた機会をとらえ、モナークの獣医トラッパーがコングの治療を行い、帰る時にアイリーン、ジア、バーニーそしてトラッパー達が調査のため地下空洞へ乗り出す。地下世界で一行は、信号の発信源にたどり着くが、そこにはシアと同じイーウィス族が大勢いて、かつて地上の覇権をめぐりゴジラと戦ったスカ―キングが、虎視眈々と地上侵略を目指して準備している事が判明する。

「わしのシマにナニさらすんねん!」

「じゃかっしい!仲間をこき使うった、どんな了見や!」

 

一方コングは、新たに発見された割れ目から、さらに地下に広がる世界を見つけるが、そこにはまだ子供の同族がいた。スーコと呼ばれるその子供は、コングに敵意を見せつつも、大人の同族をあっさり粉砕したその力に渋々道案内をするが、コングの優しさに触れ次第と心を通わせるようになる。同胞たちが集まる場所にたどり着くと、そこには無数の同族達を奴隷同然に支配するスカーキングがいた。

ここでコングとスカ―キングが激突。激しく戦う両雄だったがなかなか決着はつかない。そこでスカ―キングはその配下の怪獣・シーモを繰り出す。冷凍光線を放つシーモにコングは苦戦。右手に凍傷を負ってしまう。あわやというところでスーコに助けられ、満身創痍の状態でアイリーンらの元にたどり着くコング。傷の手当てをしつつ、コングのパワーアップを図るトラッパー。そしてイーウィス族の女王の導きで、ジアはモスラを召喚しゴジラを地底世界に招き、スカ―キングと戦わせようとする。

コングやゴジラと意思が交わせ、モスラを召喚できる、ある意味最強キャラ

 

2大怪獣が共通の敵に向けて協力するところや、それを仲立ちするのがモスラである点等、「三大怪獣 地球最大の決戦」を基にしているのは間違いないだろう。まさか21世紀になって、あの名作のハリウッドリメイクが見られるとは思わなかった。

上記で、怪獣プロレスを前面に出したと書いたが、本作は怪獣同士の組んでほぐれつのプロレスがメインの一大娯楽エンタメ大作だが、予算の影響からか中盤までの戦いは、割とあっさりとしている。特にゴジラパートは顕著で、ローマでのスキュラや北極でのデイアマットとの戦いはいずれも放射能火炎であっさりと決着をつけている。また、コングのパートも、冒頭のワートドッグやドラウンヴァイパーとの戦いは、いずれもあっさり決着がついている。その分、中盤の見せ場のコングとスカ―キングとの戦いは、プロレスにふさわしい。

ただ、このシーンもシーモの登場で遠距離戦となり、やや消化不良。しかしその分、最終決戦・ゴジラ・コング対スカ―キング・シーモの戦いは胸躍る一大エンタメとなっている。舞台は地下世界から地上へと目まぐるしく動き、灼熱のリオ・デジャネイロで冷凍怪獣という、なんともミスマッチな戦いが面白いし、中盤まではコングに敵意むき出しだったスーコが、いつしかコングの相棒となり、最終決戦では一番の殊勲の働きをするというのもムネアツだ。デザイン的にミニラの雰囲気があるのもいい。スーコはこれまでは、孤独だったコングに初めて“守るべき対象”となったことで、今後はこの二人?を軸とした物語が紡がれると思う。

一方付けたし感が半端ない人間パートだが、本作では怪獣それぞれに個性があって、言葉は発っしないものの、お互いにどんな会話しているのか分かるような演出が取られている。そして、コング・ゴジラ・アイリーン達と3者が次第に対スカ―キング戦へと集約されていく脚本はワクワクさせられる。そしてドラマが少ない人間パートもアイリーンとジアが次第と絆を深めていく様や、トラッパーとのささやかなロマンスなど、怪獣パートの邪魔にならない様にうまく落とし込んでいるのも面白い点。

難点をあげるとすれば、スカ―キングにラスボス的な強さが感じない事。彼はコングとは何とか互角には戦えるが、倒すには至らない様で早々にシーモを呼び出すし、最終決戦でもゴジラ相手だと逃げるばかりで勝負にならない。もう少しラスボスらしい強さとカリスマ性がある怪獣を出すべき。

「わてを怒らせたら、チイみるでぇぇぇ」

 

そして人間パートでバーニーは必要性を感じなかった。彼は根っからの陰謀論者で真面目に研究しているわけではないし、地下世界に移っても特に活躍はない。人種的な問題があるのなら、トラッパーをアフリカ系にすれば、バーニーの必要性はない。

他にも、様々な欠点、突っ込み所はあるものの「これでいいんだよ」と言いたくなるほど、長年のファンの夢を結集した一大怪獣エンタメ。その一方で、特に日本の本格的な怪獣映画ファンは、昭和後期の怪獣プロレスものに嫌悪感を持っている事が多いので、不満があるかもしれない。私も10年前だったら、受け入れられなかったかもしれない。そうしたファンは、元々目指す方向が違うのだから仕方ない。

なんやかんや言っても、美男美女カップルは絵になる

 

日本では「ゴジラ-1.0」や「シン・ゴジラ」の様なリアルで真面目なゴジラを作り、ハリウッドでエンタメ全振りの怪獣映画を作って、すみわけを図ればいいと思う。最後にもう一回いうが「これでいいんだよ」