タイトル 人造人間ハカイダー

公開年

1995年

監督

雨宮慶太

脚本

井上敏樹

主演

岸本祐二

制作国

日本

 

本作は、“'95東映スーパーヒーローフェア”の1本として95年に公開され話題を呼んだヒーロー・アクション映画。雨宮慶太監督特有のカッコいいキャラクター造形や、あまり風呂敷を広げる事が無い、コンパクトにまとまったストーリー。そして、ハカイダーを活躍させる世界観の絶妙さから、好評だったことから、公開翌年の1996年に劇場未公開シーンと新規追加撮影シーンを加えた、ディレクターズカット版が公開された。

ちなみに、同時上映は「超力戦隊オーレンジャー」「重甲ビーファイター」と、いずれも低年齢向きの特撮ヒーローシリーズの劇場版で、本作のダークでアウトローな作風とは大きく異なり、この辺を東映はどう解釈したのかは不明。多分、何も考えていなかったのだろう。

映画の冒頭は、トレジャーハンターたちによって、長い眠りから覚めたハカイダー。彼らを一掃すると、専用バイク“ギルティ“を駆って、グルジェフが支配するジーザスタウンへと進む。本作でのハカイダーは、グルジェフにより治安維持用に開発されたロボットであったが、制御困難であったことから廃棄される予定だったが、数名の科学者によって盗み出され行方不明となっていた。その為、グルジェフに強い憎しみを抱いている。普段は人間携帯だが、戦闘時にはハカイダーに変身する。迎撃に向かった重武装兵は全く歯が立たず、次々と返り討ちにされる。

そのグルジェフが支配するジーザスタウンは、表向きユートピアのように喧伝されていたが、実は治安維持用ロボット・ミカエルとサイボーグの重武装兵の暴力により支配され、逆らうものは脳手術により反抗する意思を奪われてしまうデストピア。それに反抗するレジスタンスも活動している。カオルが率いるグループもその一つで、おりしも現金輸送車を襲い、活動資金を強奪するが、ハカイダーと重武装兵との戦いに巻き込まれてしまう。相手がハカイダーであることを知ったグルジェフはミカエルと、装甲車を派遣する。

装甲車の攻撃に苦戦を強いられるハカイダーだったが、ハカイダーショットで返り討ちにする。しかし破損しカオルに助けられる。

アジトで修復されるハカイダーにカオルは「共に戦おう」と呼びかける。しかし、奪った金で豪遊する事しか考えていない他の仲間を見て拒絶。

そこに重武装兵が雪崩れ込み、カオルたちは次々と倒される。そして、不意を突かれたハカイダーも倒れる。かろうじてカオルだけは一命を取りとめたものの、カオルは重症の身で市場をさ迷い、そこでハカイダーと再会する。今わの際に自分の夢を語りながら、眠るように息をひきとってしまうのだった。復讐に燃えるハカイダーはグルジェフを倒すべく、彼の居城の元老院へ急ぐのだった。というのが大まかな粗筋。

ハカイダーと言えば「人造人間キカイダー」に登場する悪役だが、その誇り高く高潔な姿勢からキカイダーを上回るほど人気を得た。放送終了後もその人気は衰えなかったことから、そのキャラを使ったスピンオフとして作られたのが本作。したがって、「人造人間キカイダー」での設定はなくなり、キャラクターを使った完全新作となっている。

ミカエルに比べ、機動性は劣るが突撃力や防御力、そして破壊力ではハカイダーの方が勝っていて、最終決戦ではそれぞれの特性を生かした戦いを見る事が出来る。

ヒロインの宝生舞は男勝りな中に、いつか普通のお嫁さんになりたいという素朴な願いを持った少女を好演。好評だったことから、本作の続編として彼女を主役としたビジンダーのリメイク作品も企画されていたが、実現には至らなかったのは何とも残念。なお、ゲーム「人造人間ハカイダー ラストジャッジメント」にカオルを模したようなキャラクターが登場する。ただし、名前は最後まで明らかとはならなかった。

グルジェフを演じた本田恭章は歌手が本業で、俳優活動はあまり多くないが、恐らく本作が一番好評だった役だろう。

全編雨宮節炸裂と言った作風だけに、見る人を選ぶだろうがあの世界観が好きな人には、ドストライクで刺さる映画。最終決戦でのミカエルとハカイダーの死闘は、それぞれの特徴の違いが色濃く出ていて、見る者を飽きさせない。しかし最後のグルジェフとの戦いは、ちょっとあっさりしすぎていた。その前に登場したミカエル戦車と融合して戦う様にすればよかったのだが、予算の関係もあって難しかったのかもしれない。ストーリは一見ユートピアに見えるデストピアという、ありきたりの設定だが手堅くまとめているし、敵側が全て天使を思わせる白を基調とすることで、ダークヒーローのハカイダーとの対比が出来ている。そして、ハカイダーのダークヒーローとしての魅力は十分に描いている。