イトル オクス駅お化け

公開年

2022年

監督

チョン・ヨンギ

脚本

高橋洋 イ・ソヨ

主演

キム・ボラ

制作国

韓国

 

本作は、韓国・ソウルの実在の駅を舞台にした韓国のウェブ漫画を「リング」シリーズなどで知られる脚本家・高橋洋とイ・ソヨンが共同で脚本を手がけ、さらにモキュメンタリー・ホラーで知られる白石晃士が脚本協力として参加して完成させた日韓合作のホラー映画。ただし原作にあるのは、映画の冒頭にあるとある青年が駅のホームで踊っているように見える女性が、実はお化けだったという短いシークエンスだけで、それ以降の話はほぼ映画オリジナルストーリーとなっている。白石の話だと、元の高橋の脚本は複雑だったので、かなり変更を加えたといっていた。オリジナルがそのようなものだったかはわからないが、そっちも見て見たかった気がする。

こいつ一体誰だったんだ?

 

高橋は、1948年に発覚した日本の寿産院事件に以前から興味を抱いており、この産院を養護施設に変更してプロットに組み込んだ。

なお、原作となったウェブマンガの日本語版は、「プラットホームお化け」のタイトルで見る事が出来る。

 

 

 

 

映画の冒頭では上記の通り、終電を待つ青年が奇妙に動きをする女性の幽霊に遭遇するところから始まるが、このエピソードはほとんどその後のストーリーと絡んでこない。てっきり、この女の幽霊をめぐる謎解きとなると思っただけに、かなり意外な気がする。ちなみにこの終電を待つ青年は、原作者のホランが演じている。

映画は一カ月前にさかのぼり、新人のウェブニュース記者パク・ナヨンは自分の書いた記事が原因でトラブっていた。駅で写した若い女性の写真を使ったところ、相手は男性だったのだ。しかも明確に写真を使う許諾を得ていなかった。へこんだナヨンはオクス駅の駅員で友人のチェ・ウウォンにネタが無いかと尋ねると、駅の地下にある廃駅で一人の男が回送列車に轢かれ自殺。その場に居合わせたウウォンは子どもを目撃したことを証言。更に、死体を処理した湯灌師も目撃する。何とかウウォンに監視カメラの映像を持ってきてもらい、回送列車の運転手にも取材するが、要領の得ない事を言うばかり。それでも子供の目撃証言だけは引き出すことに成功。意気揚々と記事にすると記事は大いにバズる事になる。しかし、社長のモは「あんたが取材した時、運転手は死んでた」と言い、訂正記事を書く羽目になる。

ホラーとしてはよくあり手法。特に新味はない

 

そんな時、自殺した男テホの妹であるテヒがナヨンに接触してきた。テヒは自分とテホには幼少期の記憶はなく、催眠術で過去を思い出そうとしたらある井戸のイメージが浮かんだという。

調査の結果、ナヨンはオクス駅地下の廃駅には古い井戸があり、井戸の近くにはかつて児童養護施設があったことが判明する。

一方、湯灌師から今まで怪死を遂げた者には全員に“爪”の傷痕があったことを知らされる。どうやら、爪痕は呪いが掛けられることで生じることを突き止める。ナヨンは、オクス駅の井戸に関する取材を続けたいとモはそれを拒否。仕方なくナヨンはひそかに調査を進めるが、オクス駅周辺で次々と怪死事件が起きている事が判明する。そして、ウウォンの同僚も爪の跡が出来た後にトイレで怪死する。やがて事件は、駅の近くにあった養護施設で行われた、忌まわしい臓器売買事件へと広がっている。

最初に述べたとおり、本作の冒頭とその後に話は直接つながっていない。あの女はモ社長かと思ったが、そうではないようだ。本作で一番インパクトがあるあのシーンなので、その後登が完全に分断されてしまっている。

その後のオリジナル部分は、特に目新しい部分はなく、井戸が出てきたり、呪いの回避方があったり、それにミスリードがあったりするところなど、高橋洋が脚本を担当した「リング」と似ている、というよりも韓国版「リング」と言っても差し支えないレベル(もっとも韓国でも「リング」はリメイクされているが)。また、記者の倫理でナヨンが悩むシーンがあるものの、防犯カメラの映像を持ちだしたり、事件現場に勝手に出入りしたり、あまり悩んでいる様子が無いので、ナヨンにもウウォンにも、そして勿論モ社長にも感情移入できない。

これから貞子が出てきても、全く違和感ない

 

ただ、モ社長のキャラが強すぎてナヨン達にヘイトが向かないが、あくまで薄めているだけで没入できるわけではない。ただ、モ社長のキャラが強すぎるのは、ラストシーンでの爽快感に繋がるという意外な効果もあるが、あそこももう一ひねりして欲しかったと思う。

そこそこ面白く、そこそこ怖いがそれ以上ではない。ホラーの初心者さんが、カップルで見るにはちょうどいい、軽めの佳作だと思う。