タイトル ファンキーハットの快男児

公開年

1961年

監督

深作欣二

脚本

田辺虎男 池田雄一

主演

千葉真一

制作国

日本

 

本作は、「ファンキーハットの快男児シリーズ」の第1作で、深作欣二のデビュー3作目となる。もっともこのシリーズは2作しかない。音楽には全編にわたりジャズが用いられ、千葉真一の爽やかな魅力と相まって、スリルとサスペンスにユーモアを織り交ぜた青春活劇となっている。深作は、この作品で手持ちカメラが大々的に用いられ、スピーディーな後の深作スタイルが確立したようだ。

主人公の天下一郎はと、その悪友の茂と車のセールスの仕事をそっちのけで、ナンパにいそしむお気楽学生。冒頭でその現代の視点だと何ともダサいナンパを繰り返すが、勿論引っかかる女などいない。ようやく一人の娘が引っ掛かり意気揚々とジャズ喫茶に入るが、相手のみどりは株式投資に夢中の経済女子。その事、外で待たされた茂は渋滞に仕方なくスポーツカーを動かすが、そこで一人の若い娘に遭遇。声をかけると「駅まで」と付いてくる。実はこの娘は小暮という高級官僚のお手伝いさん。田舎から出てきた弟が駅で迷っているという電話を受けて飛び出したのだが、肝心の弟は見当たらず仕方なく茂にお屋敷に戻ってもらうが、お屋敷では靖幸が誘拐されて大騒ぎ。早速天下探偵事務所に来てもらい、誘拐犯からの連絡に備える。ここが本作の弱点の一つで、恐らく事件と一郎との接点を作るために仕込んだと思われるが、お手伝いを屋敷から遠ざけたところで、誘拐計画にあまり関係が無い。事実、この後茂はフェードアウトしてしまう。

この探偵事務所の所長・天下清助は一郎の父親。そこで小暮家に張り込むが、そこに大型工事落札の情報を得て、投資に役立てようとしたみどりの電話を犯人からと勘違いして、帝都ホテルに張り込み捕まってしまう。とんだ災難だがその頃真犯人から電話があり、みどりの無実は何とか証明される。

コミカルなやられっぷりを披露するは潮健児の一八番

 

真犯人からの連絡に、お手伝いが目的地に金をもって現れ、周りは天下探偵事務所の署員が張り込むが、そこにお手伝いの挙動を怪しんだ警察官が職質して失敗に終わる。しかし、靖幸が家に戻ってきて小暮家は大騒ぎとなる。実は、小暮と取引がある日の丸建設の宇賀島が、代わって身代金を払っていたのだ。翌日、みどりは証券会社で日の丸建設の株を大量に購入する不審な女を目撃。一人で後をつけて行方不明となる。

みどりの行方を探ろうと、一郎はようやく本気を出して捜査に乗り出すと、謎の女が購入した株の代金と身代金が同額であることを突き止め、証券会社に張り込むと不審な男が日の丸建設の株を受け取るところを目撃。後をつけると、男は保釈の虎と呼ばれるヤクザに株を渡し、みどりの始末を頼む現場を目撃するのだった。

人の家でパンイチで器械体操する千葉ちゃん。そのあと中原ひとみも何故か水着に...

 

官庁と企業の癒着やインサイダー取引を取り入れた脚本はかなり斬新。現代では、金融商品取引法でインサイダー取引は規制されているが、本作の頃はまだ抜け道はいくらでもあった頃。ただ、みどりのように堂々と情報を集めては、さすがにバレルだろう。脚本家はインサイダー取引きに詳しくないらしく、結構がばがばに描かれている。本作のインサイダーを成功させるには、まだ日の丸建設が受注すると発表されていない段階で、株を購入する必要があるが、その原資として身代金を獲得するにはかなりスケジュールがきつい。映画では観客に分かりやすさを優先しているようだ。

脚本のおかしさは置いておくにしても、本作の魅力は何といっても千葉真一。爽やかで親しみやすさを前面に出すとともに、身体能力の高さもいかんなく発揮する。恋人?のみどりの家で突然器械体操を、それもパンイチで肉体美全開で見せつけ、クライマックスでは大勢の悪玉相手に、激しくもコミカルなアクションシーンが用意され、まさに千葉真一の為の映画状態。その一方でヒロインの中原ひとみも、そのキュートなルックスと投資に興味津々の現代風女子の魅力を見せつけている。ラストで千葉ちゃんを「こんな優良株は放って置けない」というあたり、さすが世界のサニー・チバの誕生を予言している!量産品らしくかなり雑だが、二人の魅力を十二分に描き切っているので、正直2作で終わったのが惜しくもっと続けてほしかった。