タイトル オーメン:ザ・ファースト

公開年

2024年

監督

アルカシャ・スティーヴンソン

脚本

ティム・スミス アルカシャ・スティーヴンソン キース・トーマス

主演

ネル・タイガー・フリー

制作国

アメリカ

 

本作は、ホラー映画史に燦然と輝く1976年公開の名作ホラー「オーメン」の前日譚で、ダミアン誕生にまつわる秘密を明かしたホラー映画。オリジナルは「オーメン/最後の闘争」までしか見ていないので何とも言えないが、オリジナル要素も入っていて新たなるシリーズ化を狙っているようだ。

映画は教会の改修工事の中、ブレナン神父はハリス神父がある女性の出産について話すシーンから始まる。期待通り上から鉄パイプが降ってくるが、二人とも無事な様子。落胆した直後、振り返ったハリス神父の後頭部は、鉄パイプでえぐれていた。さすが、分かっている。ちなみにブレナン神父は、オリジナルの「オーメン」にも登場している。

1971年、反政府暴動のさなかの1971年。アメリカ人の修道士マーガレット・ダイノがローマのヴィザルデリ孤児院にやってくる。出迎える親代わりのローレンス枢機卿が出迎え案内する。

そこには修道女から虐待を受けているカルリータや、異様さを持つ修道女アンジェリカ。親切なガブリエル神父に奔放なルームメイトのルスらと出会った。

主人公のマーガレットを演じたネル・タイガー・フリーは「ゲーム・オブ・スローンズ」で金髪で派手目のイメージがあったが、本作では黒髪で清楚とがらりと変わっている。さすが女優!

マーガレットはルスに、ローマ市内のクラブに連れていかれ、生まれて初めて酒を飲み知り合ったパオロと踊るが、そこから記憶が無くなっていた。

次の日、二日酔いなのか気分がすぐれないマーガレット。しかしその目の前でアンジェリカが自殺する。それもガソリンを被り火を放ったうえでの首つりという派手なもの。

マーガレットの元にブレナン神父が訪れ、カルリータはアンチクライストで、悪魔の子を産むことになると告げその証拠となる資料を盗み出すよう求めるが、彼女は断った。

しかし、カルリータが気になり様子を見ていると、確かにおかしな部分も多い。また、街中で偶然知り合ったパオロに会うが、彼は車にひかれて死ぬ。その直前に彼は「痣を探せ」と言い残す。

ルスの誓いの儀式が行われる中、修道院を脱出したマーガレットとガブリエルはブレナン神父と合流し、悪魔の子を宿す母胎を探すが、マーガレットは写真に写る幼女の痣の場所は、カルリータと異なる事を発見する。

正直言って本作はあまりミスリードが上手くなく、かなり早い段階で悪魔の子を産むことになる母胎の正体は分かってしまうが、パオロが車にひかれるシーンは決定的。ちなみにオリジナルだと、ダミアンの父はサタン。母は雌のジャッカルということになっている。

またオリジナルで悪魔の子を守るのは、文字通りの悪魔崇拝者ということになっているが、本作ではカトリック内部の最強硬派。神への信仰を取り戻すために悪魔を蘇らせようとしているというとんでもない連中。神への帰依が強すぎて、逆にその神を冒涜する事に手を貸すようになるというのは、現実世界の宗教にもある事なので、絵空事とは言えない。もっとも現実世界には、国連常任理事国でありながら、領土的野心から隣国に攻め込み、占領地で虐殺の限りを尽くし、戦況が行き詰まると「核兵器使うぞ」と恫喝する、悪魔も真っ青な人間がいるのが。いやあの子がその後ロシアに渡って…ということにはならないだろうし。

本作は、不穏な雰囲気やじわじわ来る怖さを描いていて、ホラー映画というよりもオカルト映画と言った方がいい。開始早々から不穏な空気は全開で、それが中盤まで持続する。そして要所要所に差し込まれる、衝撃画像にいやが上にも映画に引き込まれた。スプラッターやジャンプスケアに頼る、安っぽいホラー映画が多い中、本作の演出で怖がらせる手法は見事。監督のアルカシャ・スティーヴンソンはこれまで短編映画やテレビドラマの経験しかなく、あまり期待していなかったのだが、これは嬉しい誤算だった。

オリジナルに比べると、多少ゴアシーンは多いし謎のモザイクがあったりするが、その程度は許容範囲と言っていい。

一応76年版「オーメン」の前日譚という触れ込みだが、ラストやオリジナル要素から鑑みると、ヒットすればオリジナルのリメイクは想定していると思われる。製作費は3000万ドル程度という事なので、恐らくヒットするものと思われたが、全米週末興行は900万ドルとまさかの惨敗。損益分岐点は7500万ドル程度と思われるので、このままだと相当海外でヒットしないと赤字は免れない情勢だ。Rotten Tomatoesだと批評家、観客共にそれほど悪くない評価だけにこれは全く予想外。アメリカではディズニーと付くだけで、もう観客の興味の対象外となっているのかもしれないが、そうなると今後Disneyの再建は多難が予想される。もっとも、Disney+でオリジナルの「オーメン・シリーズ」の配信をしていなかったようで、この辺りの連携もまずさが、ディズニー最大の癌なのかもしれない。