タイトル 人形佐七捕物帖 くらやみ坂の死美人

公開年

1960年

監督

山崎大助

脚本

結束信二

主演

若山富三郎

制作国

日本

 

本作は、横溝正史の原作「人形左室捕物帖」を若山富三郎主演で描く東映でのシリーズ第2弾となる。

このシリーズは、白塗りの優男を演じる若山富三郎が受け入れられるか否かで評価が違ってくると思うが、横溝正史らしいおどろおどろしさや、ミステリー要素が皆無なうえに、佐七を原作にはない法善流棒術の達人にして、立ち廻りが得意な若山富三郎に思う存分立ち回りをさせているだけに、殺陣だけは見ごたえ充分。また、何故か恋女房のお粂から恋人のお照に変更しるなど、あまり原作に詳しくない私が見てもかなり違和感を覚える内容。その一方で、下っ引きの辰五郎を演じる大泉晃の怪演は見所だが、悪目立ちしているので当時の観客はかなり違和感を覚えたはず。本作も感想を書こうかどうか迷ったのだが、とりあえず書くことにする。

くらやみ坂で若い男と逢びき中の女芸人松花斎天菊が殺された。偶然現場を許嫁の鼈甲問屋鍬形屋の跡とり娘お里が許嫁の巳之助と通りかかり第一発見者となる。死体の転がる屋敷の門には血潮で描かれた蝙蝠の絵があった。事から、世間を騒がせている蝙蝠組の犯行と思われた。叔父で亡き兄に代わり店を預かる鍬形屋新兵衛に迎えられて、お里は家の戻るのだった。

逢引き相手は逃げ去ったが、佐七の調査で怪我がもとで醜い容貌と変り、小屋をやめた清十郎という男だと分る。佐七は人違いで殺されたと睨み捜査を進めるが、佐七を邪魔に思った蝙蝠組は行く先々で待ち構え、佐七を亡き者にしようとする。そんな中、お里危ないとにらんだ佐七は鍬形屋に急ぐが何事もなかった。安心したのもつかの間、奥に下がったお里が何者かに刺され瀕死の状態になったのだった。というのが大まかな粗筋。

冒頭で殺された女芸人は人違いだということはバレバレだし、そこに現れたヒロインの叔父さんの演出からもう事件の黒幕は明らか。ただ、さすがに前作は批判があったのか本作では一応謎を残すようにしているものの、うまく行っているとは言い難い。ヒロイン枠のお里に重傷を負わせた犯人が煙のように消えるトリックも、冒頭から見ていればはっきりとわかってしまう。そもそもこの時何故、止めを刺さなかったのかは謎。この事件の犯人は無駄な行動が多く、その為馬脚を現してしまっている。それと監督の山崎の演出はシリーズ通して一本調子で、セットのバリエーションの少なさもあって、同じ映画を見ているような錯覚を覚える。

本作に限らず、このシリーズは謎解きよりも佐七の殺陣が見どころで、毎回シーン毎に殺陣を変えてみごたえは十分。そして最初は多勢に無勢で苦戦するも、大泉晃から立ち廻りの棒を渡され形勢逆転するのがお約束。この渡す手筈が大泉晃劇場なのも毎度の事。その意味では若山富三郎の為、そして立回り為に作られた佐七なので、そこは大らかに見るべきなのだ。勿論、原作ファンはストレスを抱え込むことになるだろうが、そんな方はテレビの松方弘樹版や林与一版を見ることをお勧めする。