タイトル エルム街の悪夢3 惨劇の館

公開年

1987年

監督

チャック・ラッセル

脚本

 ウェス・クレイブン ブルース・ワグナー チャック・ラッセル フランク・ダラボン

主演

パトリシア・アークエット

制作国

アメリカ

 

本作は、悪夢の中に住む殺人鬼フレディが自分を惨殺したエルム街にすむ大人たちへの復讐のため、彼らの子供たちを襲う「エルム街の悪夢」シリーズ第3弾。前作、「エルム街の悪夢2 フレディの復讐」を見たウェス・クレイブンは「主人公がフレディに乗っ取られるストーリーは、主人公と視聴者の一体感を阻害している」「フレディを現実世界に寄こし過ぎたせいで、彼の威厳が失われる状況へと追い込んだ」「若者たちに囲まれプールサイドを走り回るフレディの姿はバカバカしい」と否定的なコメントを寄せており、本作ではシリーズに終止符を打つつもりで脚本として参加している。その為、第1作で生き残ったナンシー・トンプソンが再登場して、フレディとの戦いに終止符を打つ。はずだったが、500万ドルの製作費に対して4500万ドル近い興行収入を得た事から、早くも翌年には続編が制作された。

映画は、第1作から6年後のエルム街にすむ、女子高生クリスティンが悪夢に悩まされ、自殺未遂を起こしたことから精神病院に収容される。自殺未遂をしたぐらいで娘を精神病院に入れるというのもどうかと思うが、この辺りは門外漢の私には論評できないところ。

しかし病院には、同じような少年少女たちが入院していて、そのすべてがエルム街にすんでいるという共通点がある。オカルトは置いておくにしても、普通ならこの町に何かあると思うところだが、この病院はシムズ医師を始め全員問題視せず、対処療法に徹しているのはかなり無能じゃないか?そうこうしているうちに患者の1人、フィリップがフレディに操られ飛び降りて死んでしまうが、それでもかたくなな病院側。そんな問題ある病院にインターンとしてやって来たのが第1作のヒロイン、ナンシー。暴れるクリスティンが例の「フレディが来るよ」と言う歌を歌っているのを聞きピンときた彼女。続きを歌ってクリスティンの信頼を得る事に成功する。

病院の看護師の中に、後に「マトリックス」でブレイクする、まだ無名時代のローレンス・フィッシュバーンがいるのに注目。

ブレイクした「マトリックス」のある意味夢の中の話だった

 

彼女は医師のニールを説得し催眠療法を試そうとする。しかしその直前にジェニファーがフレディの毒牙にかかる。ナンシーはニールに自分もかつてフレディに狙われたことを告白し、協力を求める。最初は半信半疑だったが、彼女の話に患者たちが反応した事から彼も信じるようになり、催眠療法を試みる。うまくいくかと思われたが、失語症のジョーイがフレディに捕らえられ、目覚めると意識不明となっていた。この事からナンシーとニールは担当から外されてしまう。

余談だが、催眠療法の効果について明確なデータはなく、現在では疑問視されているが、本作の世界観では“ものすごく効果がある”事になっている。

そこでニールはジェニファーの葬儀で知り合ったシスターから、フレディの出生の秘密を聞かされ、「彼の遺体を見つけて大地に葬るよう」告げられる。そこで、ナンシーとフレディの遺体がある場所を知っているナンシーの父、ドナルドに会うが妻の死以来酒浸りの彼は協力しようとしない。そんな時、病院からクリスティンが個室に監禁されたという連絡が入る。ナンシーは現地に駆けつけ、ニールはドナルドを説得しようやくフレディの遺体のありかを聞き出した。しかし彼らの元に、フレディの毒牙は迫りつつあった。と言うのが大まかな粗筋。

本作でフレディのキャラは確立する

 

この手の映画は、大体ヒロインひとりで怪物と対峙する事が多いが、本作ではエルム街の子供たちに加え、第1作のナンシーとドナルドが参加。ある意味オールスターキャストで、フレディと対決し、ついに決着がつくのが見どころ。とはいえ、ラストをみえるとまだ彼は完全に滅んでいない事が示唆されるなど、ホラー映画の常道を行く仕上がりとなっている。その意味ではある程度次の展開は予想できるし、フレディのコミカルさも見られ始めているので、さほど怖さはない。ただ、ファンにとっては納得がいく終わり方と言える。また本作でフレディ出生の謎は明かされるが、それは次回作で明確に描かれることとなった。

ちなみに「エルム街の悪夢 ザ・リアルナイトメア」では、ナンシー役のヘザー・ランゲンカンプがロバート・イングランドと共演し、仲良く談笑しているシーンがあって、映画の舞台裏を見ているようで面白かった。

前作は、興行的には成功したものの、批評家、ファンの双方からの評判は芳しくなく、ニュー・ライン・シネマはシリーズを継続するかどうか難しい決断を迫られることになる。そこで、シリーズ生みの親のウェス・クレイブンが脚本に参加。シリーズを終わらせるつもりで、ラストでフレディとナンシーの戦いに決着がつく終わり方がなされている。しかし、本作は予想以上のヒットを記録し、フレディ・クルーガーと言うキャラクターも、作り手が手に負えないほどの人気を得る事になり、結局続編が作られることとなった。これには賛否あるだろうが、おかげで恐ろしくもあり、人間臭さも持った魅力的なフレディが誕生することになる。