タイトル 海底大戦争

公開年

1966年

監督

佐藤肇

脚本

大津皓一

主演

千葉真一

制作国

日本・アメリカ

 

本作は、人間を改造して半魚人を造りあげ、海底王国を築こうとするマッド・サイエンティストたちに、日本人記者とアメリカ人女性カメラマンが立ち向かう姿を描いた作品。元は、アメリカのテレフィーチャ―として制作されたが、日本では劇場公開された。製作は東映とラム・フィルムだが実質的に制作したのは東映で、監督、スタッフ、出演者にずらりと東映のメンツが集まっている。監督は「怪談せむし男」の佐藤肇、原案は「マタンゴ」の福島正実と、ホラー色が強いが、後半はアクションが前面に出てくるし、東映としては珍しく近未来的デザインの潜水艦が登場し、メカアクションを繰り広げる。

映画は、米軍の新型誘導魚雷を試験中に、カメラの前を人のような影が横切り、取材をしていたブンヤ達がパニックを起こすところから始まる。それを見た米軍のブラウン中佐は慌てて会見を打ち切るので、てっきり米軍の軍事機密かと思ったら、全然そんな事はなかった。また、その場に原子灰処理センターのハワード教授がいることを、不審に思った記者の安部とカメラマンのジェニーは、現場にダイビングして調査を行うが、ジェニーは恐ろしい怪物に遭遇してしまう。戻ってその事をブラウンに伝えるが、全く取り合ってくれない。

ヒロインのペギー・ニールは父が在日米軍勤務の軍人だったとされているので、その時期に日本で女優として活躍していた様だ。実質的に66~67年しか活動していないので、恐らく父とともに帰国したのだろう。もっとたくさん出ていたような気がしていたが、本作を含め3本しか出ていなかったのは意外。劇中、彼女が荷物を運んでいるのを見た安部の友人が「相変わらず日本式だな」と茶化すシーンがあるが、日本でも大半の男は荷物を女性に持たせることはないと思うが?

もう一人の主役(というよりも、こちらの方が実質的に主役だが)ブラウン中佐は、60~70年代に日本で活躍していたフランツ・グルーベルが演じている。「宇宙大怪獣ギララ」では、ペギー・ニールと再び共演している。ブラウン中佐と潜水艦艦長(出番は多いが役名が無い)の関係が分かりにくいが、ブラウン中佐は新型魚雷の責任者という立ち位置なのだろう。その割に終盤は暴走して勝手に魚雷を発射するが。この二人は、一人の役に収まったように思うが?

怪物を写したカメラを海底に落としたことから、二人は又潜るが海底に洞窟を発見。中に入ると何かの施設のようなところにたどり着き、そこで怪物に捕まってしまう。この施設は、世界征服を企むマッド・サイエンティストのムーア博士が築いた海底基地で、怪物たちは協力者のハイム博士が作った海中でも過ごせる改造人間だった。

ムーア博士は安部に協力を求めるが、二人は脱出を図るが、すぐに捕まるのはお約束。本作は千葉ちゃんのアクションの見せ場は少なく、アクションシーンを期待した人はがっかりするだろう。

その頃、ハワード教授もムーアらに誘拐され見せしめのために安部とジェニーは半魚人に改造されそうになる。二人に続きハワード教授も行方不明となったことから、ブラウンたちは安部の話を信じる気になり、潜水艦で出撃するのだった。というのが大まかな粗筋。

朱薄々気味悪い笑い顔で自信たっぷりだが、この自信はどこから来るのか?

 

映画として見ると、残念ながら出来が良いとは言い難い本作。ただ本作の印象を悪くしている最大の問題は、外国人俳優たちの大げさな演技と、わざとらしい吹替にある。わざとらしい悲鳴はどうかと思ったが、ペギー・ニールはまあまあだったが、他は総じてひどい。室田日出男を始め東映の本職の俳優たちは、ほぼ台詞のないモブなのでドラマパートはあまり見られたものではない。せめて吹替をもっと自然にやれば、そこそこ見られたかもしれないが、この頃の吹替は総じて大げさだ。

ほぼ、モブの室田日出男

 

一方で、本作の見どころは、海中シーンの特撮。冒頭の追跡魚雷のシーンや、後半の潜水艦対海底基地の攻防戦等はなかなかの迫力。そして半魚人がジェニーを襲うシーンは、妙にエロティック。既視感があったがルチオ・フルチの「サンゲリア」でトップレス美女をゾンビが襲うシーンに似ている。本作の方が早いしアメリカをはじめ海外でも公開されているので、フルチが見ている可能性はあるが、何とも言えないところ。

もう一つは登場するサイボーグ半魚人。元ネタは、言うまでもないが「大アマゾンの半魚人」。役者がスーツを着ているが、造形はのっぺりとしていて今一かっこよくない。それに半魚人なのに水中で行動しているシーンは少なく、もっぱら基地内で労働に従事している。その労働も、荷物運びなどばかりで、これだけの科学技術があるのなら、ロボットでも作った方が良さそうに思える。また、半魚人は意志を持たないはずが、コントロールマシンが「STOP」「WORK」「FIGHT」の3つしかないのに、どうやって動かしているのかは謎だ。ただ、改造シーンの特殊メイクはなかなか気持ちが悪かった。ただ、どちらかと言えば質より量といったところで、終盤の大暴れは数を生かして見せ場を作っている。

普通、特撮映画は本編と特撮の二班体制で作られるが、本作では水中撮影班が加わり、3班体制で撮影が行われた。そのかいあって、水中撮影シーンはよくできている。

その特撮は東映の特撮を数多く引き受けていた矢島信男が本作でも担当。終盤の攻防戦では、迫力のある戦いを描いている。

何とも微妙な作品だが、その一方で「仮面ライダー」の原型という解釈も成り立つ。

敵がマッド・サイエンティストの集団で、人を誘拐しては改造手術をして怪人を作るところなど、ショッカーを思わせる描写だ。実際に劇中では頑なに“半魚人”は使わずサイボーグで通している。しかも主人公達をサイボーグにしようと手術を始めるが、未完の状態で逃げられるのはそっくり。そう思うと本作にも意味があるし、転んでもタダでは起きずに歴史的大傑作につなげたと思うえば、東映のしたたかさを見る事が出来ると思う。