タイトル 怪盗グルーの月泥棒

公開年

2010年

監督

ピエール・コフィン クリス・ルノー

脚本

シンコ・ポール ケン・ダウリオ

主演

スティーヴ・カレル

制作国

アメリカ

 

本作は、イルミネーション・エンターテインメント製作の3Dコンピュータアニメーション・映画で、「怪盗グルー」シリーズの第1作目になる。ユニバーサル・ピクチャーズが配給する初の3Dアニメ作品となる。映画に登場したマスコットキャラのミニオンズは大人気となり、その後スピンオフでは主演を務めた。

本作は製作費6900万ドルに対して、興行収入5億3000万ドルと大ヒットし、続編以外も多くのスピンオフが作られた。また、大人気となったミニオンズはユニバーサルと親会社となったコムキャスト両方の企業のアイコンとされるようになっている。

初登場時はやな奴だったのが、だんだんカワイク見えてくるから不思議

 

観光客の目の前で、ピラミッドがみるみるしぼみ風船で作られた偽物だと判明するところから始まる本作。場面が切り替わり、主人公怪盗グルーの意地悪な面が描かれる。てっきりピラミッド泥棒はグルーの仕業かと思ったら、真犯人は最近売り出し中の若手怪盗のベクター。泥棒としての腕はいいものの、若手の台頭で今一目立った活躍が無いグルーは、月泥棒を思い立ち、不足する資金を銀行から借りようとするが、まずは必要な縮ませ光線を手に入れてからだと断られたので、さっそく盗み出すが、途中でベクターに盗まれてしまう。実は銀行頭取はベクターの父親だった。

冒頭のピラミッドのシーンで観光バスの古ぼけた感じや、乗員の個性が丁寧に描かれていた事に感心した。最近の某ディズニーのアニメでは、主要キャラなのにモブキャラ同然に、全く顔つきが同じキャラが描かれているので、この辺りにもこだわりの違いが見て取れると。

その後を描いた「ミニオンの月世界」では更に酷い目にあう

 

何とか手に入れようとするグルーだが、鉄壁の防御を誇るベクターの屋敷に手も足も出ない。しかし、孤児院の少女たちが売りに来たクッキーに目が無い事が分かり、マーゴ、イディス、アグネスの孤児3姉妹を養女にして、まんまと縮ませ光線をゲットする。

邪な心から養女にしただけで、全く愛情が無かったグルーだけに、最初は三姉妹を邪険に扱っていたグルーだったが、次第と愛情を感じるようになりかわいがるようになる。それに反比例して怪盗としてのモチベーションは下がり、三姉妹のバレー発表会に出る為月行きを断念しようとすらした。グルーの為に様々な発明品を作っていた博士は、それに危機感を抱き、孤児院に連絡して三姉妹を返してしまう。

最初ば煩わしかったけど次第に愛情が。こてこてだけどそれが良い!

 

寂しさをこらえて月を盗むためロケットに乗り込むグルー。無事盗むことに成功するが、今日が三姉妹の発表会だった事を想いだし、急ぎ現場に駆けつける。しかし、発表会は終わっていたばかりか、三姉妹はベクターにより誘拐されていた。ベクターから盗んだ月と引き換えに、三姉妹を引き渡しと言われたグルーは、彼の元に急ぐのだった。というのが大まかな粗筋。

90分余りの尺の中で、起承転結をきちんと描いて、それでいて面白さに特化している。キャラの魅力的で、主人公のグルーは悪党だが、冷酷になり切れず情に厚いところが良く描かれていた。そして「母親に認めてもらいたい」という、コンプレックスを抱いていて、それが「世間をあっと言わせる大泥棒になる」という事に繋がっているという事も。しかし、無関心に見える母親だが、実は誰よりもグルーの事を愛していて、それを素直に出せないだけ。そのことに気付くのは、自分は「父親」という立場になってからで、自分が周囲に意地悪に接するのは、愛して欲しいことの裏返し。そこが描かれているから資金が底を突いた時、三姉妹ばかりかミニオンズたちも、こぞってへそくりを差し出して応援するのが納得できる。三姉妹もそれぞれ描き分けられていて、愛らしさと生意気さの境界線ぎりぎりの描写が秀逸。一方ヴィランのベクターも、昔気質のグルーと対比した、今にも現代っ子という、ちょっと生意気な感じが良く描かれている。

しかし、本作最大の人気キャラとなったのはミニオンズ。目は一つか二つと一定しないが、オーバーオールを着て意味不明でわけのわからない言語で話しているところが共通点。リアルにいたら、ぜった悲鳴を上げて逃げ出すほど不気味なのだが、底抜けに明るくて、グルーの命令には忠実だが、ドジな性格のため失敗を重ねてしまう等、超絶可愛い。その言語は日本語、インドネシア語、フランス語、英語、イタリア語、スペイン語、ヒンディー語を含むほかの言語から一部を借用していて意味不明だが、一応ごく一部は航海国向けに吹き替えを行っている。あの意味不明だが、なんとなくる言葉を話すところがポイント高い。

突飛なアイデアを描いている様に見えて、しっかりと親子愛や家族の絆が描かれている。そこが本作が愛された理由だと思う。