タイトル デューン 砂の惑星 PART2

公開年

2024年

監督

ドゥニ・ビルヌーブ

脚本

ドゥニ・ビルヌーブ ジョン・スパイツ

主演

ティモシー・シャラメ

制作国

アメリカ

 

本作は、フランク・ハーバートのSF小説を映画化し、第94回アカデミー賞で6部門に輝いたSFアドベンチャー大作「DUNE デューン 砂の惑星」の続編。本来昨年11月の公開を予定していたが、SAG-AFTRAのストライキの影響を受けて先延ばしになり、ようやく公開にこぎつけた。

正直言って前作は丁寧に作られていたものの、それほど面白いとは思わなかったので、本作にもあまり期待はしていなかったが、アメリカでの前評判の高さや前売り券の売り上げが異常に高いことから、少々困惑したのは事実。日本でも当初は3月20日公開予定だったが、アメリカでの前評判の良さからか、5日間前倒しとなった。見終わって率直な感想は、前作の不満点はかなり解消され、見ごたえのある映画になっていた。前作は長尺だったこともあり退屈に感じる部分があったが、本作は更に長尺になっていたにもかかわらず、最後までその世界観を表現するビジュアルにぐいぐい引っ張られ、全く飽きさせることはなかった。勿論原作ファンには不満点はあると思うが、現在これ以上の映像化は望めないと思う。

まだ公開直後で、ネタバレ厳禁で書いているので、その点はご容赦いただきたい。

チャニを演じたゼンデイヤは180㎝と高身長だが、巧みなカメラワークで感じさせない

 

ハルコンネン家の陰謀により一族を滅ぼされたアトレイデス家の後継者ポール。フレーメンに助けられ彼らの信頼を得たポールは、ついに反撃の狼煙を上げる。ハルコネンのスパイス採掘作業を徹底的に妨害するフレーメンの戦士たち。そしてフレーメンの少女、のチャニと次第に愛し合う様になる。レディ・ジェシカが死期が迫る教母に代わり命の水を飲むことで教母となり、仲間を得るため南部へと向かう。ポールも同行を求められるが、夢に南に向かうことで戦争が激化して多くの者が死ぬ光景を見たためい躊躇うが、ハルコンネン家の次期男爵フェイド=ラウサがデューンの新たな支配者として送り込まれ、ポールたちの本拠地が攻撃される。ポールは南に向かう決心をするのだった。

原作だとポールたちがフレーメンに合流し、最終決戦まで2年の時が流れ、その間自ポールの妹が生まれているし、ポールとチャニとの間にも子供が出来ているが、本作ではかなり時短されている。

その事も含めて、原作だとハルコネン男爵はポールの妹エイリアが殺すことになっているが、さすがに今時2歳の幼女が人殺しをするのは憚られるので、そこはマイルドに改変されている。

また本作で一番物議をかもすのはラストの改変だが、そこはネタバレになるので省略する。

一面に広がる砂漠がシーンごとに表情を変えたり、ハルコネンを一貫してモノクロタッチで描き、全員を白塗りのスキンヘッドで描くことで、彼らの異様さを引き立たせている。そしてスパイス採掘機械はどこか昆虫的な動きだし、戦闘機も昆虫を思わせる羽ばたきをしている点など、映像面では文句がつけようがないほど素晴らしい。

そして物語は、原作の複雑さを整理してポールとチャニが主軸に据えられている。そうすることで言2人のラブラブ感が前面に出ているが、実が原作はここが弱点でフレーメンに受け入れられた以降、あまり物語が進まない。ハルコネンとの戦いも地味なゲリラ戦が主でイマイチ盛り上がらないし、気が付いたらいつの間にかフレーメン達が優勢になっていて、突然クライマックスを迎える事になるので、デヴィッド・リンチ版だとこの件はバッサリとカットされている。

本作ではチャニとの関係を丁寧に描くことで、物語に大きな流れを作ることに成功しているし、レディ・ジェシカを早々に命の水を飲ませる事で原作のマザコン感を亡くさせている。その分、ポールとチャニの関係が浮かび上がることになっている。そしてラストは一番大胆な改変が行われていて、これが多分一番賛否が分かれるところだと思う。勿論原作通りの終わり方だと、昨今の世相から何かと炎上しそうというのもあるのだろうが、それよりも二人の考えや立場の違いをはっきりと描きたかったのだと思う。それに命の水を飲んで以降の、ポールとチャニの絡みが急に減るというよりも、ポールの救世主としての活動が主となり内心を出さなくなるが、それもラストのチャニの行動を見越してのモノなのかもしれない。

苦難を乗り越え距離を縮める二人だけに、ラストは裏切りと感じたのか?

 

現在、、ドゥニ・ビルヌーブは三部作を想定していてそこまで監督を務めるという事なので、それを踏まえての改変で、そもそも原作だとチャニにとっても、イルーランにとっても幸せとは言い難い未来が予想できるだけに、そこは仕方ないのかもしれない。

それと三部作ということで次回作は「砂漠の救世主」の映画かと思っていたが、その間12年の間隔があるのでかなりオリジナル展開が多くなることが予想されるし、あるは「砂漠の救世主」までを描いた、全くのオリジナル作品となるかもしれない。

映画を見終わってまず思ったのは、映像面では100点満点で120点といってもいいと思うほど素晴らしい。オリジナルの「スター・ウォーズ 新たなる希望」は当時はすごかったが今見るとかなりしょぼく感じるのは仕方ないにしても、最近は10年もたてば陳腐化してしまう。それに比べると本作は、恐らく10年後に見ても映像には息をのむと思う。というより、ハルコネンのモノクロ描写や、登場人物の衣装に色彩を落として表現した上で、あえて砂漠をくすんだ調子で描くなどして、ビジュアルの陳腐化を防いでいる。ここはアイデアの勝利。その一方で物語的には、ポールとチャニに重点を置いた分、やや希薄な印象を受けた。原作だと2年が経過しているのをかなり短縮しているのでテンポが良くなっているが、その分特に原作ファンには物足りなさを感じる人もいるだろう。

欲を言えば、最終決戦はもう少しじっくり見たかった

 

ただ、原作の映画化として現時点で、これ以上は望めないほど高いクオリティを維持しているので、次の完成を待ちたいと思う。