タイトル 天下の快男児 突進太郎

公開年

1960年

監督

小林恒夫

脚本

棚田吾郎

主演

高倉健

制作国

日本

 

本作は、以前紹介した「天下の快男児 万年太郎」の姉妹篇で。続編でないのは物語上、完全に独立した話となっていて、主人公のキャラと物語の流れだけが共通点だから。ただ、主人公は前作の万年太郎そのもので、出演者も一部絡んでいるがすべて別人設定。その意味ではユニバースが近いかもしれない。

有名な女性下着メーカー、ダイアナ下着株式会社に、和服にハンチング帽という、場違い感満載の健さん演じる突進太郎が入社試験を受けに来るところから始まる。

太郎は大卒三年目だが、なかなか定職につけず、合気道道場の師範を務める益代の家に「就職が決まるまで」との条件で下宿している。とはいえ益代は太郎に惚れている様子なので、いつまでもいてほしいというのが本音。ただ太郎としては、いつまでも厄介になる訳に行かず、何としても仕事に就きたいが、体育会系そのものの太郎が女性下着メーカーに合うはずもなく不採用となるが、ちょっとしたアクシデントで採用通知が届いてしまう。

応対した堀部のけんもほろろな対応に怒った太郎は定番の「社長に合わせろ」。しかし、社長の元に押し掛けていたゴシップ紙の記者をぶちのめして追い返したことから、社長のあぐりに気に入られ、めでたく採用となる。世の社員の皆さんは、当世こんなことをしては間違いなく炎上するので、絶対にしないように。

このありえない場違い感を楽しむのが本作のだいご味

 

採用されたはいいものの、女性下着など全く門外漢の太郎は、お得意様の前で大失敗。それをねちねちと攻め立てる堀田に切れて、今度は彼をぶちのめし辞表を提出する。これが許されたんだからいい時代だ。しかし怒らせたと思ったお得意様から太郎を指名するほど気に入られたことが判明。一転会社に残留と決まり、あぐりに気に入られた太郎の事を、婚約者の堀部は気に入らない。そして、太郎に気がある千秋も。本作でも建さんはモテまくりだ。

そして会社のレクレーションで、あぐりと太郎が乗ったモーターボートが故障。二人は釣り小屋で一夜を過ごすことに。無論、朴念仁の太郎だけに間違いはなかったが、その事から会社は大騒ぎとなる。

妖艶な美女がドはまりしている久保菜穂子

 

ただ、これはあぐりの計略で、彼女は堀部とその父親が決めた婚約を盾に会社を乗っ取ろうとしている事に気付き、純朴で忠実な太郎と噂になる事で婚約を破棄し、彼らを押えようとしていたのだ。さすがの策士っぷりだが、この事を他言無用とされたので太郎は気がある千秋に言う事が出来ず、その事から二人の関係はぎくしゃくし、ここぞとばかり千秋に気がある荒井に横取りされそうになる。この荒井を演じているのが地獄大使こと潮健児。天下の大女優、山東昭子のお相手なんて羨ましすぎる。

潮健児。一世一代の見せ場!!

 

フランスからファッションデザイナー・グリッフ女史が来日し、各社の争奪戦が展開するが、ここは太郎が文字通りの突進で女史に気に入られ、ブラジャーのデザインをゲットする。

これに焦った堀部一派はファッションショーを台無しにすることで対抗。これを受けてあぐりは挽回しようと水着ショーを計画。しかし、そこに堀部一派が卑劣な罠を仕掛けようとしていた。というのが大まかな粗筋。

この頃邦画に出演する外国人女性は、日本人の劣等感の裏返し

 

何やら既視感があるストーリーだが、物語の流れは前作「天下の快男児 万年太郎」と、ほぼ同じ。絵にかいたような体育会系の、真面目が取りえの新人が、姦計をめぐらす重役一派の妨害を、持ち前のバイタリティで跳ね返して最後は一掃するという、サラリーマン物の定番を行っている。その点新味は全くない。

しかし、この頃の映画あるあるだが、俳優がとにかく豪華。若手は、久保菜穂子に岡田真澄。山東昭子。更に脇を神田隆。伊藤雄之助。花沢徳衛といった演技派が固めて、全く隙が無く安心して最後まで見る事が出来る。はっきり言ってこの役は、現在の視点で見ると高倉健にはあっていないと感じるが、元々建さんは若い頃にはコメディにも出ていたし、後期の「あ、うん」もコミカルな味わいを見せていたぐらい、コメディは畑違いではない。任侠映画で大ブレイクして以降、真面目で無口。そしてストイックな役が多くなったが、40~50代にかけて、もっとコメディに挑戦していたら、役柄を広げられたんじゃないかと思ってしまう。

3人の美女に挟まれて右往左往する健さんなんて、あまり見る機会が無いので、もし見る機会があればお勧めしたい。

最後はお約束。これが無けりゃ始まらない。いや、終わらないか