タイトル オープン・ウォーター

公開年

2004年

監督

クリス・ケンティス

脚本

クリス・ケンティス

主演

ブランチャード・ライアン

制作国

アメリカ

 

本作は、大海原に取り残された夫婦が直面する恐怖を、特殊効果やCGは一切使用せず、俳優たちが本物の鮫のうごめく海の中で芝居をした異色サスペンス映画。映画には元ネタがあって、1998年にオーストラリアのグレート・バリア・リーフで実際に起こった事件をモチーフにしているが、この事件は色々と妙な噂があり、後に行方不明となった夫婦を目撃したという証言が出た事から保険金詐欺説まで出たが、結局裁判ではこれらの証言は退けられた。

本作は監督のクリス・ケンティスと妻のローラ・ラウの二人で撮影された低予算映画。実質製作費は12万ドルと言われているが、興行収入は5000万ドルを超える大ヒットとなった。

仕事で多忙な日々を送るダニエルとスーザン夫婦は、息抜きの為カリブ海のスキューバダイビングに出かけるが、そこでも仕事をめぐって夫婦喧嘩をしてしまい、翌日はやや気まずい空気でダイビングに行く事になる。本作はまるで80年代に撮られたかのように画質が悪。上記の通り本作は、実質二人で撮影されていて機材も最低限しかないのが原因。ただその結果、まるでドキュメンタリーを見ているような、ある種の緊迫感は感じる。それここのホテルのシーンで、主演ブランチャード・ライアンやや出血気味のサービスシーンがあるのでお見逃し無いように。

露骨なサービスカット。けしからん!もっとやれ!

 

目的地に着いた一行は水中散歩を楽しんだ。ダニエルとスーザンも喧嘩を忘れてエンジョイするが、その中に一人だけ、ダイビングマスクを忘れたおっさんが、「道具が無いともぐれない」と言われ不貞腐れる。やがて早めに切り上げたカップルが船に戻ると、「このマスク、貸してくれへんか?」と切り出すのだった。まあ、気持ちは分かるがあんたの不注意だろう。しかしこのカップルがいい人で、彼女の方がマスクを貸してくれた上に、彼氏がバディを組んでくれた。いやあいい人だ!でもこれがのちにとんでもない事態を招くが…。このマスクの件は、潜った人と帰って来た人の人数確認を狂わせるトリックなのだが、疑問も残る。そんなめんどくさいことやらず、観光客の人数確認した方が手っ取り早い。それに予備のマスクが無いという事だったが、それに客が水中でアクシデントを起こした時、予備の機材が無いのならクルーは助けに行けない。この辺りは事故を起こさせるためのアクシデントだが、元の事件がどうなっているのかは不明。

このおっさんの耳元で「あんたのせいやで」と囁きたい!

 

おっさんとそのバディ彼氏もカウントされ、船は次のポイントへ出かけてしまう。ちなみにこの手のスケジュールは結構きつめに作られているので、観光船は客がそろったらさっさと移動することが多いようだ。その頃仲直りしたダニエルとスーザンはまだ水中散歩の真っただ中。時間ギリギリに浮き上がったら、既にもう誰もいない大海原が広がっている。しかしパニックを起こすでもなくこの時点では冷静な二人。遠くに同じような観光船がいるが、「移動しては助けが来た時に分からなくなる」とその場を動かない事にした。しかし海には海流があって浮かんでいるだけだと流されてしまうのはご存じの通り。この二人もしばらくすると流されている事に気が付き、ここでようやく少々慌てだす。更にサメがちらちらと見えだしたり、クラゲに刺されたりと追い詰められていく。船影がちらちらと見えても、二人に気付くことはなく通り過ぎていくばかり。追いつめられた二人は焦りから次第と対立するようになる。その頃港に戻った観光船は、客の忘れ物をチェックする事もなく二人は忘れられてしまうのだった。というのが大まかな粗筋。

こんな事よりも素直に人数数えろよ

 

終盤まで二人がいなくなったことに気が付かないし、元の事件が結局行方不明のままなので、途中で二人は助からないだろうという事は分かっていたから、どうやって80分余りも尺を繋ぐのかとその事が気になったが、結局何かの事件が起きる事はなく、映画は二人がじわじわと死に向かっていく姿を描くだけ。実際にこうした事件が起きたら、そうなるのだろうが、そこは映画だから何か目を引き事件を期待したくなる。しかし本作はそんな事もなく、後半はどうでもいいような夫婦喧嘩を、60分余りも見せられる羽目になった。それと本作はスーザンが翌日まで生きていたが、水面でじっとしているだけでも人間は体力を使い意識を失う。本作の舞台はカリブ海という事なので比較的水温は高いだろうが、それでも2~7時間で人は意識を失う。とても一晩過ごすことは出来ないはずだが。

正直ここまで何も起きない映画とは思わなかった。緊迫感はそれなりにあるが、余りに何もないので中盤ダレてしまった。確かにアイデアはいいのだが、結局それだけ。映画としてはあまりお勧めできるものではない。ただこの後雨後の筍のように同様の映画が出来たが、それはある程度考えて工夫している映画も多い。本作の場合、続編やパクリ映画の方が面白いという、奇妙な現象となっている。