タイトル エルム街の悪夢

公開年

1984年

監督

ウェス・クレイヴン

脚本

ウェス・クレイヴン

主演

ヘザー・ランゲンカンプ

制作国

アメリカ

 

本作は、夢の中に出現する殺人鬼の恐怖を描き、大ヒットしたホラーシリーズの第1弾。登場するのは主に夢の中だが、被害者が招き入れた場合現実世界にも出現できる。本作は当時作られた低予算ホラーの一つで、製作費は110万ドルに対して全世界で5700万ドルの興行収入を記録しシリーズ化される。そしてフレディ・クルーガーはロバート・イングランドの怪演もあって、今なお根強い人気を誇るスラッシャー・ヒーローとなった。

映画はボイラーの明かりに照らされた地下室で、フレディが自分のシンボルとなる鍵爪を作るところから始まる。舞台は切り替わり、ティナがフレディと思しき殺人鬼に追いかけられる。それは夢なのだが、目を覚ますと自分のネグリジェが切り裂かれている事を発見する。

この時点で観客はティナがヒロインと思うだろうが、実は彼女はホラーにありがちな最初の犠牲者。そしてこれもありがちだが、親の留守中に彼氏を家にくわえ込んでエッチに励むタイプ。

悪夢が気になった彼女は彼氏のロッドと、親友のナンシーとそのBFのグレンに泊まってもらうが、この状態でもロッドとイチャコラして、真っ先にフレディの犠牲者となる。そしてメイクラブ中のロッドに当然ながら殺人容疑がかかる。

冷酷な殺人鬼だが、本作でも時々人間臭さを出す。それが彼の魅力

 

逃げたロッドは翌日ナンシーに接触してくるが、ナンシーの父で警部補のドナルドはお見通しで、あっさり御用となる。ナンシーは「パパ、ひどい」と抗議するが、この時点では仕方ないだろう。だが今度は、ナンシーが悪夢を見るようになり、心配になった彼女はグレンに見張っていてもらうがこいつが役立たずで、ぐっすると眠り込む始末。一度だけならまだ許せるが、終盤でも同じミスをしでかしてその対価を払う羽目になる。

ちなみにグレンを演じているのが、当時はまだ無名だったジョニー・デップなのは有名な話。

一方フレディを演じたロバート・イングランドも本作で大ブレイク。その後「フレディvsジェイソン」まで一貫してフレディを演じ、それ以外もホラー映画を中心に今なお活躍を続けている。普通スラッシャー・ヒーローが人気になっても、中の人は恩恵にあずかることは少ないが、それだけこのフレディ・クルーガーと言うキャラは、彼の演技力に依存している部分が大きかった。

この頃はあんな酷い嫁をもらうとは思わなかったんだろうな

 

夢の中で、フレディがロッドに手を出そうとしている、ところを見たナンシーは留置所に向かうが、その時すでにロッドはフレディにより自殺に見せかけて殺されていた。

異変を感じたナンシーの母マージにより、病院で脳波の検査をすることになるが、ここでも夢の中でフレディが出現する。異変に気が付いた医師たちにより起こされるが、ナンシーの腕には傷があり、さらにフレディの帽子を持ち帰っていた。

ここがフレディも、現実世界に出る事が出来るという事の伏線となっている。

マージはフレディの事を知っていた。彼は大勢の子供を殺害して逮捕されたが、書類の不備により釈放された。そこで、地元の人間は彼がボイラー室に入っているところにガソリンをかけて火をつけて殺害したのだった。

ナンシーは、フレディを現実世界に連れてくる事が出来ると考え、再びグレンに協力を依頼。しかし、ナンシーの身を案じたマージが窓に鉄格子を付けて、彼女が家から出られないようにするのだった。と言うのが大まかな粗筋。

後にコミカルな挙動や、他のスラッシャー・ヒーローにはない人間臭さで人気となるフレディだが、本作の時点ではまだそうした特徴は少なく、あくまでも恐ろしい殺人鬼として描かれている。ただ、表情は豊かで特殊メイクにもかかわらず、彼の感情を読み取る事が出来る事が、他のスラッシャー・ヒーローとの違いと言える。また、さりげない仕草も彼のキャラクターを際立たせている。そして基本的に夢の中にしか出現できず、被害者によって連れ出されないと現実世界には出現できない、と言う設定も極めてユニークだった。目を覚ませば逃げられるわけだから、そこがフレディの弱点となる。ただ本作でその役割を果たすグレンが、役立たずなのはお約束。そして終盤彼女は逃げるだけでなく、この欠点を逆手にとってフレディに反撃を試みるという展開は、かなり盛り上がる。ただ、ラストを見るとフレディはそれすら予期していたと解釈できるので、やはり恐るべき敵だ。ただ、ナンシーは「エルム街の悪夢3 惨劇の館」に登場しているので、あの後生き残ったことになる。

このシリーズの人気は、フレディ・クルーガーと言うキャラに依存している部分が非常に大きく、それは取りも直さずロバート・イングランドにかかっていると言って良い。しかし、2010年のリメイク版ではジャッキー・アール・ヘイリーが演じ、冷徹な殺人鬼にするという原点回帰がなされていて、大ヒットしたが、作品の評価は散々だった。その後続編が作られないところを見ると、フレディと言うスラッシャー・ヒートの特異性が浮かび上がってくる。