タイトル 卒業試験

公開年

1974年

監督

ジキ・ローテムント

脚本

ウオルフガング・バウアー

主演

シルビア・クリステル

制作国

西ドイツ

 

本作は、「青い体験」などと同様に性に目覚めた10代の男女の性体験を描いた映画で。ただ、ソフトポルノ仕様となり、劇中で男女の絡みや無意味に見えるサービスシーンもふんだんに用意されている。主演は「エマニエル夫人」で世界的ブレイクを果たした、シルビア・クリステル。西ドイツでの公開は1974年11月28日と「エマニエル夫人」の前だが、日本では公開後となった。と言うより、「エマニエル夫人」の二番煎じを狙ったのだろう。

調べて見ると、地方では「アラン・ドロンの快傑ゾロ」と同時上映だったところもあったようで、果たしてどうやって客をさばいたのか疑問。

大人の魅力で異彩を放つテリー・トルダイ

 

主人公パウリが祖母の住む別荘に帰省するシーンから始まる。隣のコンパートメントに、色っぽい美女がいる事に気が付き急いで席を移動させる、性に貪欲な青少年あるあるな行動をとるパウリ。と、そこに一人のイケオジがやってくる。化粧室に立った美女の後を追い、そこでインするお二人。ドアの外から様子を伺い悶々とするパウリ。

駅に着くと親父が迎えに来ていたが、これがさっきのイケオジと似た雰囲気の結構なイケオジ。しかもここでさっきの美女が、親父の恋人イボンヌだったと判明。つまりこのイボンヌは、来るもの拒まずの観音菩薩様。

祖母の家で、パウリの叔父のアレックスは湖畔で全裸でピアノを弾き、その傍らでは恋人がトップレスで日光浴。その恋人は別荘のメイドとレズ関係。親父とイボンヌは付くや否や、早速ベッドイン、と言うカオスな様相。こんな家庭パウリはデグレもせず、良くもまともに育ったものだ。

いかにもかわいい田舎娘といった感じのシルビア・クリステル

 

湖で泳いでいると、近所の美少女アンドレアがやって来る。二人は去年知り合って、惹かれあっている様子で、アンドレアは彼の気をひこうとビキニの上を外したりするが、パウリは童貞脱出に情熱を傾けるも、彼女が処女と言うだけで尻込みするほどヘタレ。

余談だが、英語版だと主人公の名前はパトリック。ヒロインはジュリアとなっていて、英語版のタイトルも「Julia」。ちなみに原題の「Es war nicht die Nachtigall(ナイチンゲールは鳴かなかった)」はシェイクスピアの「ロミオとジュリエット」のセリフからの転用で、劇でも「ロミオとジュリエット」の有名なバルコニーの部分を再現するシーンがある。

翌日悪友のエアハルトとアンドレアの3人で、ボートで繰り出すがハッパでハイになった3人は羽目を外し、アンドレアに襲い掛かったエアハルトがボートから転落、溺死する。ただでさえヘタレなパウリは、この一件からさらに輪をかけてヘタレとなる。そればかりか、「メイドならやってもええやろ」と、メイドに襲い掛かりレイプしようとする。この時は、親父が駆けつけて事なきを得たが、更に内に引きこもるパウリ。

見かねた親父は、イボンヌに「俺がアンドレアの処女をいただくから、お前はパウリの童貞を取れ。そうしたら万事うまくいく」と、究極の大人の理論を実践しようとする。と言うのが大まかな粗筋。

一度でいいからこんなブレックファーストを食べてみたい

 

よくある少年の童貞脱出映画で、シルビア・クリステルが出ていなかったら、幾多数多の映画と同様にすっかり忘れ去られていたはずの映画。彼女が主演とクレジットされているが、実質的な主演女優はイボンヌ役のテリー・トルダイ。ハンガリー出身で60年代半ばにドイツ映画に多数出演するようになっていた。本作でも、童貞少年に性の手ほどきをする妖艶な美女を演じている。これが実に艶っぽくていい。同年公開なのに、本作のシルビア・クリステルは、「エマニエル夫人」以降で魅せる、洗練された色っぽさが出せていない。いかにも好奇心旺盛なティーンと言った感じで少々やぼったい。監督の演出力もあるだろうが、シルビアはあの映画で大きく化けたのだろう。

この頃は同様の映画が数多く作られ、さながら童貞・処女脱出映画ラッシュ。一例をあげると

 

「新・個人教授」(73)フランス・主演ナタリー・ドロン

「青い体験」(73)イタリア・ラウラ・アントネッリ

「卒業生」(75)フランス・アニー・ベル

「課外教授」(75)イタリア・キャロル・ベイカー

 

今は全く作られなくなったのは、コンプライアンス上の問題もあるのだろう。実際本作もアンドレアの扱いは、いかにも男尊女卑だし、ラストは「結局それかい」と突っ込みたくなる。恐らく今後も、余程世の中の価値観が変わらないと作られることはないだろうから、ある意味とても貴重な作品群なのかもしれない。